La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Happy Holidays 2024 !

La Parfumerie Tanu,

The Pinnacle of Amateurism

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現在2度目のコロナ感染により御用納にすら出勤できず、高熱や咳症状に呻吟しながら年末を迎えている私が言うのもなんですが、コロナ禍がひと段落した2023年、世の中、特に国内の香水界隈は堰を切ったように人流が活発化し、来日イベントや催事もコロナ前のV字回復どころではない数が開催されました。小さい単位では、LPTも会議室型としては過去回「Cabaret LPT vol.4 | 戦後昭和の国産香水(2017/2)」の再演となるリハビリマッチ、Cabaret LPT revisitedを4月に、新規テーマでは11月にCabaret LPT vol.14:Parfums MDCI 20年祭を開催しました。コロナ禍で、キャバレーに丁度良い中小規模の貸会議室が個室のコワーキングブースへと業態替えが進み、日本では香水を使用できる「LPTの活動規模相応な」レンタルスペースがなかなか見つからない中、外資系ホテルのミーティングルームという、香水に寛大な環境に出会えたのも、再始動への追い風となりました。

2023年は、LPTの新たなチャレンジとして、2月に主に国内流通しているニッチフレグランス18作を800字前後で紹介する「The Unconventional」を連載しました。普段平均1作につき3000字でご紹介しているLPTですが、長くて読みづらい、もっと軽い内容の記事が良いというお叱りを散見するようになり、簡潔に、しかも要点は外さず通常の4分の1程度の文字量で、作品の良さを伝えるという新基軸でしたが、1曲が長いプログレバンドに「皆が楽しめる3分で収まるシングルヒットを出せ」「いや無理」みたいなもので、書き手としては通常の記事と同じだけの下準備は必要なのと、実際やってて楽しくなかったので、今後は通常通りの文字量で、内容によっては目次をつけて書いていこうと思いますので、長くて読みづらい記事は読み飛ばし、内容が重ければ話半分にお読みいただければ幸いです。

新ブランド紹介は、ディファレント・カンパニーが運営するアールデコ特化型の復興系ブランド、シェリガンを全点踏破(2023年3月時点)した上、オーナーのルック・ガブリエル氏にインタビューが叶いました。また久しぶりに「世界の香水店紹介」として台湾最大手のニッチ香水チェーン、NoseWayの台北市内にある3店舗一挙取材を行いました。4年ぶりに台湾へ行き、前回とは比べ物にならない勢いで香水店が充実していた台湾。そのセレクションも深く「(台湾、韓国に)『先を越された』とは大きな思い上がりである」と衝撃を受けて帰国したのを鮮明に覚えています。

9月にはオランダへ行き、故リアンヌ・ティオさんの墓参に行って参りました。1999年から19年間、手塩にかけたロッテルダムの香水店、リアンヌ・ティオ・パルファムをアメリカ人投資家に乗っ取られ、再起をかけて新店・La Cour Des Parfumsをオープンした話は、2021年2月の追悼配信でお伝えした通りですが、墓参前日にロッテルダムは今どうなっているのかを見てきました。

①Love the Look(旧リアンヌ・ティオ・パルファム) : 2023年6月2日閉店。什器などはそのままに、商品を撤収した状態で残っていました。閉店後すぐに貸し物件となり、店舗面積283㎡+バックヤードスペースで、5年定期契約(延長5年オプションあり)にて月額賃料€4,171(約66万円、税抜)だが、2023年12月28日現在もテナント募集中のまま。

②La Cour Des Parfums : リアンヌさん逝去後、そのまま閉店。その後居抜きでマッサージ店AcuFysioになるも、閉店。現在はテナント募集中で、外からはリアンヌさんがデザインしたアーチ型シェルフが見える。

③Houthoff:生前リアンヌさんが住んでいたマンション。ロッテルダム中心街が一望できる素敵な上階にお住まいで、アールデコのヴィンテージ家具に囲まれていた。

①今年6/2に閉店したLove The Look。かつては2店舗だったのを増床したため238㎡とこのアーケードの中では大型店となり、逆に借り手がないのかも。什器やドアの看板がそのままで諸行無常。なおピュアディスタンスはLTL閉店後数か月でアムステルダムに取引店ができた
②La Cour des Parfum跡。ダークネイビーのフレームと、店内のアーチ型シェルフがリアンヌさんの面影を残す。遠景には、閉店後一時入店したマッサージ店の看板がそのまま残っていて、これもリアルに諸行無常
左) ③リアンヌさんが住んでいたマンション 中央)リアンヌさんの眠る共同公演墓地、Indisch Monument 右)モニュメントの裏側が散骨場となっていて、ここから亡き方は大地に還る

すべては去り、翌日は楽しい思い出と育てていただいた感謝で、デン・ハーグとスヘフェニンへン(スケベニンゲンと言っても通じます)の間にある共同墓地へ、最後までお店を手伝っていた妹のインゲさんと一緒に墓参しました。

今年は、冒頭にご紹介した香水イベントが規模の大小を問わず全国で数多く開催されましたが「販路限定、少数生産の良質で芸術的な作品」に位置付けられるニッチフレグランスを紹介するはずのイベントが、俯瞰して見て、未開の地に移動動物園がやってきて、日本初公開の珍獣を吾先に見て自慢する(&明日には忘れる)場のようで、人気の動物は沢山宣伝して人目の良い場所に、地味な鳥類は奥の方で全部同じ檻、みたいな姿に見えたのが残念でした。また珍獣も動物園にあまり大事にされていなかったり(=販売側のブランドに対するリスペクトの欠如)で、来年はもうちょっとゆったりと楽しめる環境が整えば、今活況と言われている国内香水業界の潮流と、ほんとうの日本がマージするのではないかと思います。

私たちは、アマチュアのブログチームです。この活動を生業としておりません。どこまで行っても素人です。LPTは、これからも「アマチュアの最高峰(The Pinnacle of Amateurism)」でありたいと思います。今年一年、LPTの応援をありがとうございました。

 

2023.12.28 Team LPT : Tanu, Han1, Gentleman

 

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