La Parfumerie Tanu

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Tanu’s Dutch Holiday 1 : Tea for two with Lianne

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Rotterdam & Groningen

ロンドンの地下鉄は、オリンピックのあった5年前、2012年と寸分違わなず階段地獄だった…

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2020年オリンピック開催に向け、インバウンド需要を見込み、もといおもてなしの心でいそいそとインフラ整備を進める東京の公共交通網。オリンピック=インフラ整備、それが当たり前だと思っていたら大間違いだった。5年前、2度目のオリンピックがあったロンドンだが、そんなの関係ねえと言わんばかりに地下鉄は相変わらずの階段だけ、エレベーターは上りか下りのどちらかにあればいい方だ。ヒースロー空港からホテルの最寄駅であるユーストン・スクエア駅に着いた時も泣かされたが、問題はロンドンからオランダへ移動する日だ。予行演習として事前にホテルから徒歩圏内でエレベーターのある駅を地図アプリで探し、実際歩いて時間を測ったら徒歩15分程度でユーストン駅に行けて、エレベーターの場所も確認した。ユーストンからロンドンシティ空港までは、バンク駅からドックランド・レイル(DLR)に乗り換えれば直結している。乗換1回なら楽な方だ、バンク駅は大きいし平行移動で楽勝だ、と思ったのが大誤算。

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なんと、乗換のバンク駅にはエレベーターがなく、しかもDLRは地下4階。この「大江戸線乗継全部下り階段荷物30kg状態」で、当日オランダで使うはずの体力を120%消耗してしまった。しかも今回の渡航に合わせて新調したスーツケースは荷物が入るとキャスターが蛇行する不良品だった。不具合は出発当日まで発生せずあとの祭り、おまけに弱り目に祟り目で持病の喘息が悪化しはじめた。命からがらスキポール空港へ着き、陸路でロッテルダム入りしたが、オランダ訪問の第一目標である香水店、リアンヌ・ティオ・パルファムのリアンヌさんと会う前に、ロッテルダムから電車で15分ほど、曽祖父の出身地であるドルトレヒトに行き、曽祖父も訪れたかもしれない鎮守の大教会、フローテケルクを一目見るつもりだった。だが、すでにボロ雑巾寸前の私には荷物を引きずりドルトレヒト観光をする体力など微塵も残っておらず、これではリアンヌさんに会う事すらままならなくなる、それでは何のためにここまで来たのかわからない…と、即断でロッテルダム駅からホテルへ直行、チェックイン時間にはかなり早かったが、フロントの方に「具合が悪い」と具合が悪そうに言ったら、チャージなしですぐに部屋へ案内してくれた。
リアンヌさんのお店に近いというだけで選んだ、旅行サイトではかなり評価の低いホテルだったが、実は今年創業100年の老舗で、エレベーターは手動ドア、そこここ古いが広々と清潔な部屋は地獄に仏、天国だった。2時間ほど横になり、待ち合わせの時間には充電完了、一路1年ぶりのリアンヌ・ティオ・パルファムへと向かったー

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1年ぶりに戻ってきました
ーお久しぶりです。昨年から、だいぶ取扱商品が増えましたね。
リアンヌ「今年新しく香水が2ブランド加わったわ。ひとつはフランスのクチュリエ、マルク・アントワーヌ・バロワのB683よ。試してみて」
ーわわ、これはカッコいいスパイシーレザーですね。メンズですが、女性がつけてもスーパークールですね。
リアンヌ「でしょう〜⁈今年のうちのイチオシなの」
ひとしきりB683およびブランドオーナーを褒めちぎるリアンヌさん。「彼ったらすごくジェントルマンで、カッコいいのに、ゲイなのよぉ〜残念だわぁ!!(店主タヌをバシバシ叩く)」
ー欧米でカッコいい男性はゲイと相場が決まっていますからね。残念でした。それはさておき、結構気合い入れて取扱っているのがビンビン伝わってきます(マルク・アントワーヌ・バロワ及びB683は明日の記事でジェントルマンとクロスレビューにてご紹介します)。
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リアンヌ「そして新たに香水アトマイザーの取り扱いを始めたの」 新しく取扱を始めたマルセル・フランクは1882年パリで創業し、アトマイザー型香水ボトルの発展に大きく寄与した老舗ブランドで、創業2代目のマルセル・フランクが20世紀にはいりバカラやサン・ルイなどの最高級クリスタルメーカーに本体を依頼し、独自の噴霧システムを導入したスプレィヘッドをセットした卓上型ボトルや、携帯用パーススプレィを次々開発。近代香水を裏で支える立役者として一斉を風靡しました。1990年代後半にブランドは一旦消滅したものの、ヴィンテージコレクターも多く、アトマイザー界の至宝と評されたマルセル・フランクの実孫にあたるベルナール・デニー氏が2013年に復刻させました。
 

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レトロクラシックなバルーンボトルや、スタイリッシュなパーススプレィは、実用をためらうほどの美しさ。バルーンボトル(右上)はイタリアのムラノグラス版とフィレンツェグラス版の2種類、パーススプレィ(右下)は伝統的なギロシェ(波縞模様)が施され、カバンに入れても絶対なくすなよ!な、まさに究極の持つ喜びを味わえます。普段ポリプロピレン製アトマイザー一本勝負の質実剛健な方も、生涯1本くらい持っていてもばちは当たらないかも… 
一息ついたところで、手土産のビスケットを開け、店内のテーブルでアフタヌーン・ティーをいただきました。
 
リアンヌ「うちね、来年増床するの。長年の努力がようやく報われるのよ!うちの隣がちょうど空いたので、壁を抜いてつなげることになったのよ。ここのアーケードにお店を出して18年になるけど、大家さんとも懇意だし、二つ返事で話が進んだわ。これからクリスマスシーズンに向けて、うちはコーポレート・ギフトの売上が結構大きいので、年内はこのまま営業して、来年になったら少し店舗の営業をお休みして増床工事に入るわ。お店が倍の広さになるのよ、そしたらさすがに私やインゲ(リアンヌさんの妹さん)だけでは手が足りないから、スタッフを雇って教育するんだけれど、スタッフ募集で来た人に仕事の説明をすると、やる事が多すぎるって断られちゃうのよ。そこのところはちょっと機嫌悪いわね」

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右上からピュアディスタンス、SMN&L・ヴィオレーシ、MDCI&グロスミス、SMN香り小物。みなLPTではお馴染み
ーリアンヌさん、猛烈サービスいいですからね、オンラインストアの発送スピードやサンプルサービスを見ていてもわかる気がします。
リアンヌ「自分が2人欲しいわね…ダブル・リアンヌ!でもそれは不可能ね。自分のこのスピード感と熱意は、他の人には求められないわね」
ーオランダに住んでいたら、絶対お手伝いします。一生懸命働くので雇ってください。少なくとも日本人の対応は任せてください。
リアンヌ「ほんとにリクルートしたい位よ!!(頭から湯気)」

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相変わらず丁々発止、ノンストップで話題の尽きないリアンヌさん、この1年は明るい話題ばかりではなかったそうで、独占販売が条件でスタートしたブランドが、蓋を開けてみたらあっさり首都アムステルダムの別の店でプロモーションを始めていたり、EU圏内なら輸入扱いにならないため、代理店を通さずブランドとの直取引も出来ますが、突如ブランドの代理店を名乗る会社がやってきて、今後のお取引は当社とお願いしますと一方的に言われたり、果てはオランダ国内を中心に急成長したメゾンフレグランスのチェーン店(ニッチ系チェーン店というのも語感からして矛盾していますが)に危うく買収されそうになるなど、オランダにおけるメゾンフレグランス販売のパイオニアであるリアンヌさんですら、個人店の生き残りは茨の道と改めて知りました。とめどなく怒涛の様にこの1年、そして将来を語るリアンヌさん。お店が新しくなったらセルジュ・ルタンスの釣鐘型ボトル(パリ・パレロワイヤル限定)やストールなどのファッション・アイテムも取扱いたいわ、そして私自身のオリジナル香水も出して…自分の名前のついた香りを出すのが夢なのよ、と言いながら、最後はちょっと涙ぐんでたっけ…そこにいるのは、香水店のオーナーと客ではなく、香水が引き合わせた盟友ふたり。そんな1日でした。
 

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リアンヌさん(左)と妹のインゲさん(右) 細腕繁盛記

今月ロッテルダム市内で配布中のYour Rotterdam Guideの堂々第1ルートに紹介されたリアンヌさんのお店、10月からは毎週日曜日も営業でますます便利になりました。来年のグランドオープンに向け、熱意あるスタッフが揃います様に!!

 
Weena-Zuid 144
3012 NC Rotterdam
The Netherlands
+31 (0) 10 4049602
 
 
 
 
 
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