La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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R.I.P. : Lianne Tio, The Great Haute Parfumerie (10.10.1951 - 4.2.2021)

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オランダ・ロッテルダムの高級香水店、La Cour des Parfums 2021年店主、リアンヌ・ティオさんが、2021年2月4日肺がんのため亡くなりました。享年69歳。

 

18歳でご家族と共に出生地であるインドネシアよりオランダへ移住したリアンヌさんは、その後渡仏し長らく化粧品業界に身を置く中、当時まだパリに小さな実店舗を構えるだけだったアニック・グタールとの出会いで人生が変わり、ロッテルダムへ戻った後、1999年9月アニック・グタール初の海外店舗となるオランダ旗艦店をオープン。前月に惜しくも53歳で逝去したアニックがブティックとして蘇ったような佇まいの香水店は、後にリアンヌ・ティオ・パルファムとして当時としてはまだ珍しかったオート・パルフュムリとして、アニック・グタールの他に、その卓越した審美眼で後に世界的評価を得て行く事になるメゾンブランド製品の取扱いを始める一方で、イタリア最古の薬局、サンタマリアノヴェッラもオランダ総代理店としても厚い信頼を寄せました。

2010年にはオンラインストアを併設、世界中の香水ファンへお勧めショップサンプルを沢山詰め込んで発送、そのサンプルから運命的な出会いを果たした顧客も多く、LPTもリアンヌさんのおすすめからピュアディスタンス、MDCI、オーモンド・ジェインなど、現在の自分を構成している多くのブランドに繋いでいただきました。

2013年には「世界の香水店特集」の一つとして取材させていただき、あたかも対面でお話くださっているかのような熱量のメールインタビューとなりました。 2016年9月、念願かない初めてお店に訪問する機会を得て、それまでのメールでのやり取り以上にアットホームでパワフルなお人柄と、写真通りのあたたかな雰囲気の店内に、時を忘れる思いでした。 

 2016年の初訪問から、オランダへ毎年足を運ぶ縁がつき、2017年前半にはパルファム・ドゥシタを、後半には当時まだ殆ど知る人のいなかったマルク=アントワーヌ・バロワの処女作、B683をご紹介いただきました。特にマルク=アントワーヌ・バロワについては、当時この若きクチュリエが、3年後には次作ガニメデであっという間に世界を掌握するとは夢にも思いませんでした。ここにもリアンヌさんの先見性と鋭い審美眼を垣間見ました。

イギリスのブランドにも注力していたリアンヌさんが最も貢献したのはクライヴ・クリスチャンでしょう。一時は欧州で最もクライヴ・クリスチャンの販売実績をあげた香水店として、ブランドより表彰された事もあるほどでした。店舗では積極的にブランドオーナーを招いて発表会を行い、今では転々と買収されプレステージが失速してしまったクライヴ・クリスチャンや「ニッチストリーム」とでも呼称すべき立ち位置に膨張したオーモンド・ジェインが、最も上り調子だった時代の貴重な映像をYouTubeで見つけることが出来ます。また世紀の復興とうたわれたグロスミスが、何故かLPTを日本の香水店と勘違いした時も、リアンヌさんの口利きでブランドオーナーのブルック家と個人的に結びつけてくださり、世界的に見ても珍しいグロスミスの歴史と現在をブログで大型連載し、グロスミス・ロンドンゆかりの地をご家族の案内で取材させていただきました。

移民出身のリアンヌさんがひとりで香水店を営んでいくには、見えない努力と厳しい資金繰りの苦労がありましたが、2017年のある時、長らく付き合いのあったアメリカ人投資家の顧客より資本提携の話があり、増床の提案もあり快諾するも、交渉が進むうち、一販売員としての契約だった事が判明、時すでに遅く実質的にリアンヌ・ティオ・パルファムは閉店、ブランドの販売権及び過去の顧客データはSNSを含めすべて提携先に移譲、自身の名前にすら商標権をつけられ身動きが取れない時期が続きましたが、一からやり直すべくロッテルダム中央駅至近の一等地を選び、一念発起2019年9月に開店したのが、現在のラ・コール・ド・パルファムでした。

リアンヌ・ティオ・パルファム時代の看板ブランドは、自主的に提携先と取引終了しリアンヌさんに続いたMDCI、SMN、フォート&マンレ、1年遅れてオーモンド・ジェインとマルク=アントワーヌ・バロワを除いて取り戻す事ができませんでしたが、フレグランス・デュボワやフラッサイなど勢いと伸び代のある個性的なブランド、ニコライ等既にステイタスを確立しているメゾン系の老舗を揃え、これからという時に新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる休業、夏を迎えオンライン販売を強化する基盤づくりに奔走する中、過大なる心身への負荷がいつしかお身体を蝕み、季節が春に変わるのを見届けるように2月4日、天へ召されました。

 

ここに、最後の10年間はLPTと共にあったと言っても過言ではない、稀有の香水店主、リアンヌ・ティオさんへ、心より哀悼の意を捧げたいと思います。

 

リアンヌさんが逝去した直後より、オランダ全土は1週間豪雪に見舞われ、交通網が機能停止したそうです。また葬儀の際、お棺にはお好きだった香水を参列者が振りかけ、芳しく送ったと伺っております。リアンヌさん、こんな私を育ててくださってありがとうございました。


[Meet LPTV vol.4 | in memory of Lianne Tio]

去る2月27日、Instagramにて追悼ライブを配信させていただきました。当日の録画及び紹介した香りは、上記noteにてご覧いただけます。

【La Cour des Parfums取扱ブランド購入先一覧|2021年3月現在】

リアンヌ・ティオさんご逝去をもって、La Cour des Parfum実店舗及びオンラインストアは閉店いたしました。昨春のロックダウン中には、リアンヌエイドとして読者の皆様にLPTコンフィデンシャルセールにて多数購入支援を頂戴し、改めて御礼申し上げます。

同店の取扱の国内未発売ブランドについては、今後の主な購入先をまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。公式サイトが日本発送未対応、または公式オンラインストアのないブランドについては、過去LPTが実際に購入経験のあるおすすめのストアを選ぶようにしています。

Parfums MDCI公式サイト、またはSens Unique(日本への送料|€30、€350以上送料無料、私用郵便物としてフランス郵便にて発送してくれるので、関税が発生しづらい)

※MDCIのオンラインサイトは、カートをクリック方式ではなく、オーナーのクロード・マーシャルさんに希望の商品をメールをして、送料込の金額(公式サイトには送料の記載がありますが、あくまで目安で毎回変動する)を連絡してもらった後、インボイスを受け取るのではなく自分でPaypalへ送金、注文分受取後も要到着連絡という、若干(相当)ハードルの高い購入方法ですが、①フルボトル1個につき選べる5種類の11mlサンプルセット(販売価格€150、約19,500円)がついてくる②クロードさんとメールでお話ができるお楽しみ付です。

Maison Violet公式サイト(日本への送料|サンプル€2〜、フルボトルは€12、€200以上送料無料)

Fragrance du Bois公式サイト(日本への送料|£30、£200以上送料無料)

Frassai公式サイト(日本への送料|50US$以下:US$9、フルボトルは送料無料)

Memoize London公式サイト(日本への送料|トラベルサイズ1本まで£10、フルボトル£50と高額だが、ニュースレターに登録すると、送料分相殺も期待できるお得なクーポンがバンバン来るので要チェック)

Ormonde Jayne : 公式サイト(日本への送料|〜£149:£25(手配料£15含)、以降金額により加算、£400以上:手配料£15のみ。毎年恒例のブラックフライデーセールは送料無料&最大半額になる商品もあり、こちらもニュースレターは要チェック)

Fort & Manle : 公式サイト(日本への送料|サンプルセット:AU$25、フルボトルAU$60)

※フォート&マンレの公式サイトは欠品が多いので注意。オンラインストアならLuckyscentでの取扱があります。

Thomas Kosmala、Marc-Antoine BarroisLuckyscent(日本への送料及び配送方法については、同ストアのヘルプページにてご確認ください。なおマルク=アントワーヌ・バロワ品については、ブランドの意向により現在LPT directにて取扱のある商品があります)

Nicolai、Bogue Profumo、Zoologist、Santa Maria Novella:国内販売あり

LengLing公式サイトはドイツ国内のみ発送対応。国内にはミュンヘンを中心に販売店が多数あるものの、ドイツ以外での販売拠点がLa Cour des Parfums閉店により失われ、日本発送対応可能のストアも見つかりませんでした。

 

 

 

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