A Gentleman takes Polaroids chapter ten : Black Gentleman
立ち上がり:ベチバー&微妙に柑橘系の香りですが甘さが無くていい感じ。これはいい気分になります。
昼:印象変わらず いい感じで落ち着いてきてます
15時位:最初の印象とほとんど変わらない香りなのも珍しい 消えてはいませんが大分微かになってきました
夕方:微光ですが最初の良い印象のままです。これは常用できますね。
ポラロイドに映ったのは:スーツを着る仕事をしていてたらこうなっていたであろう自分(50近くでもジーンズにTシャツで仕事いってるんで・・・)
Tanu's Tip :
春爛漫、百花繚乱の4月は、陽射しの強さが増してくる一方で、光に晒された物体が落とすその影も濃く、深くなる時期でもあります。輝く光が眩しければ眩しいほど影は黒く、黒く…。世の中、眩しい光を浴びて輝いている人ばかりではありません。輝く人が落とす真っ暗な影にすっぽり包まれて、その姿すら見えない人が大勢いて、残念ながらこの世界は均衡が取れているのだ…。今月は、そんな斜めな事ばかり考えているかもしれない我らがジェントルマンが選ぶ、名前に「黒」を冠した逸品3点を「黒いジェントルマン」としてご紹介します。
ラリックは、その後の限定ボトルの中身として延々と売り繋がれていますが、果たしてそれは中身欲しさではなく、香水瓶が欲しくて買うお客がほとんどと言っても過言ではないと思いますし、創業より25年間に発売された香りも、大概は「瓶は一流、中身は二流」的扱いで、私自身、ずっしり重く美しいフォルムの瓶からスプレィして「う、…」と消沈し、右から左に手放した事が幾度もありましたが、そんなラリックのフレグランス中、最も異彩を放ち、かつ評価が高かったのがこのメンズ・フレグランス、アンクル・ノワールではないでしょうか。上記の通り、ジェントルマンも大絶賛で、昨年ご紹介したアンテウスに続き、レビュー終了後めでたく彼の私物に昇格しました。そして、ポラロイドには「別の人生を歩んでいたら、この香りをつけた自分がそこに居た」転職のコマーシャルみたいなカットが写りました。まあ、いつもヨレヨレのロックTシャツにジーンズで毎日頑張る働き盛り後半のジェントルマンにだって、とてもお似合いですけどね。
資生堂のZEN(第2世代)やディータ・フォン・ティースなどアフォーダブル系の秀作も多い、メジャー系の大御所ナタリー・ローソンが手がけた「黒インク」の名を持つこの極めて淡麗辛口な香りは、発売から10余年経った今でも全く古さを感じさせず、むしろ「この香りが古臭く感じるのは、いつだろう」と思うほど時間に支配されていません。基本的にはビターなベルガモット系のバーストに始まる、ベチバーとサイプレス過積載&日本人には懐かしい「硯ですった墨の香り」のシンプルな構成で、お情け程度にベースのムスクがありますが、周りの人には肌の上の甘さまで届かないと思います。
メンズフレグランスって、案外ベースが甘重いから苦手でつけられない、という日本人男性が多く、そこを巧く回避した香りで経験値を上げ、じわじわと守備範囲を拡げているジェントルマンのようなポテンシャルの高い男性は少なからずここ日本にも居ると思うので、フレグランス初心者の男性がそばにいたら、ここはひとつシトラス系なら安心、柑橘系なら嫌いな人いないと無難にアドバイスせず、こういうドライで脇の下に涼風の吹くような、それでいて樹木の静謐な雄々しさもある、アンクル・ノワールのような香りを「これ、いいね」と言えるくらいには、周りの方が責任を持って育ててあげて欲しいです。
ちなみに、日本ではこちらが公式オンラインストアのようですが、本業は食器やクリスタルガラスの輸入代理店なので、フレグランスの総代理店も同じ会社かどうかは勉強不足でわかりません。ラリックのフレグランスは並行輸入品でアフォーダブルにガンガン入ってきています。