La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Vetyver Nicolaï Parfumeur-Créateur (2004)

朝:つけた段階で以前付けた他メーカーのベチバより複雑で芳醇な香りがする。かなり強く香る

 
昼:昼でも香りはかなり強い、植物ぽい香りは抜けてアラミス系の香りの感じが出てくる
 
15時位:昼と同じ
 
夕方:かなり薄まる、最後のほうは甘い感じが強く出てくる
 
見えたもの:春の遊歩道を歩いている白髪、定年退職数か月前の初老漢。
 

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ベチバー EDT 30ml ※他に100ml、250ml(詰替え用15mlボトル付)もあり。30mlで€42と良心価格、愛用者向け250mlサイズも嬉しいけど案外改廃多いのでご注意

 
Tanu's Tip :
世界三大ベチバーを紹介し終えたものの、後1枠ある上に、今やベチバーはパチュリと並んでメンズフレグランスのコンパルソリーとも言え、ラインナップが幾つか増えるとやりたくなる、特にメゾン系にその傾向が顕著で、マルちゃんもラルチもルたんすもアニック・グタールも、なんだりかんだり作っています。ゲランの縁戚にあたるパトリシア・ド・ニコライがオーナー調香師であるモダン・クラシック路線のメゾンブランド、パルファム・ニコライも御多分に洩れずベチバーのシングルノートを輩出しています。
 
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ニコライ親子。ニコライの香りを物凄くよく表している1枚。息子さん、顔でかっ!
あれ、そういや父ちゃん(ジャンールイ・ミショー氏)最近全然出てこないけど

「親戚にこんな腕のいい調香師がいるのに、どうしてわざわざ外様の人を養子に迎えるのかねえ」と熱心なゲランファンなら一度は疑問に思うパトリシアさんは、最近息子さんと頻繁にツーショットで登場していますので、ゲラン家への輸血参加などこれっぽっちも興味がなさそうで、熱狂的なファンを黙らせるために分子レベルでアレルギー物質を抜いた原料で名香を再処方して売りつないだり(しかもその努力も虚しくやっぱりその原料が引っかかり、3年も経たないうちに処方変更)、昨今の金満路線に納得の行かないクラシック香水おたくブロガーを集め、ちやほや昔の香りを再現して嗅がせては急場をしのいだり、そのくせ新作はボロクソに言われるだけというワッサー氏の苦行を見れば、商売は程々でも好きな事が出来る方がどれだけ幸せか、素人目にもわかります。そのニコライ版ベチバーは、パトリシアさんの(いつも、ちょーっとだけ野暮ったいんだけど)確かな技が光る、ジェントルマンのポラロイドにも1発で映る、煌めきと影を合わせ持った、ベチバーを支えるイランイランやジャスミンが良い仕事をしているドラマティックな印象の逸品で、ジェントルマンも今回のベチバー3連発ではこれが一番良かった、と申しており、私も同感です。でもそれで「初老漢」が映ってしまうのはジェントルマン将来の憧れか、うららかな温かみ、それは現在のジェントルマンにも充分漂っております。

 
LPTでは度々コメントしていた日本正規代理店だった会社は、ニコライのフレグランスをヤフオクで二束三文で売り切った後、影も形もなくなってしまいました。よって現在ニコライ製品を購入するのは、公式オンラインショップかドイツやアメリカのハイエンド系通販か、というところですが、メゾンブランドの中でも原料から自社製造、かつ価格設定が良心的なブランドですので、これからも地味に応援したいと思います。ちなみに、適度にどフランスな世界を追求していたパトリシアさんも、ついに中東へ色気を出し始め、他の質実剛健な香りとは価格帯の違うウードシリーズを発売、息子さんが精力的に中東でプロモーションをしている姿を良くFacebookやニュースレターで見かけます。21世紀のニナ・リッチ親子みたいですね。
 
パトリシア&アクセル・ニコライ親子写真:ニコライFacebookページより引用
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