La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Shades Wood / Armaf

立ち上がり:不思議な感じつけた瞬間はアルコール臭と甘さが強く「ぬう・・・・これも先が思いやられる」という感じですが、すぐウッディな香りが前面に出てきて甘さが消えていきます。
ウッディの感じも今まであまり体験したことの無い香り。
 
昼:こいつも持ちが良いな。ちょっと香辛料系の香りが出てきました。モンゴル系顔の前期高齢者爺には合わない感じがする。
 
15時位:大分落ち着いてきましたがまだまだ自己主張強し。密林で現地民に囲まれた東宝特撮映画に出てくる日本探検隊の気分。
 
夕方:もう落ち着いてきたかなと思いきや甘い香りが出てきた!どこまでも予想を裏切るが良い意味じゃないよ。
 
ポラロイドに映ったのは:怪獣の出てこない東宝特撮映画 マタンゴみたいなの。薄暗い画面の中、登場人物が全員顔に汗かいて慄いてる。
 
Tanu's Tip :
 
トム・フォードが2002年、欧米ブランド初のウード系香水であるM7(YSL)を輩出してから早くも18年が過ぎようとしています。この18年間、それまで大きな隔たりがあった西洋香と中東香の垣根が瓦解し、欧米ブランドはこぞって中東市場向けにウードを用いた香りを作り、中東ブランドはその香りをインスパイアした商品を連打し、最初はニッチ系やハイエンドレンジで登場していたウード香も、すっかりドラッグストアやオンラインストアにあるようなブランドでも普通に香調のひとつとして当たり前のように見かけるようになりました。日本でも、柔軟剤でウードの香り、なんてのが登場した位ですから、中東以外の諸外国でも、これから大人になる世代にとって、原風景として記憶に刻まれていくのでしょう。実際、先月訪ねたイギリスでは、地下鉄構内やデパートなど、往来の多い場所では、結構ウードな香りが漂っていました。それも、結構ケミカルに。
 

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シェーズ・ウッド EDP 100ml
沢山の兄弟ブランドを抱えるUAEの新興化粧品メーカー、スターリング・パルファムズが2015年に立ち上げたアルマフは、完全な量産型消費剤系フレグランスブランドで、創業から3年で112作も発売する(つまり毎月3本は新作が出ている計算)凄い増殖スピードでラインナップが増えていますが、昨年からぱったり新作の声がなく、親会社のウェブサイトも昨年から更新していないので、既に存在が傾いている可能性がありますが、このシェーズ・ウッドはブランドの中でも売れ筋で、しかも香水コミュニティではローズウード(キリアン、2010年、カリス・ベッカー調香、廃番。発売当時価格:US$395/EDP50ml)のインスパイア系として高評価というのも話題性があったので、御用納めに連れてまいりました。
 

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引率料はEDP100mlでUS$24、ミリ換算でキリアンのローズウードの3%に満たない単価差に、どちらの価格もリアリティがなく、こういう両極端なものを見た時、口が勝手に叫ぶ決め台詞は「間はないのか」。残念ながらキリアンのローズウードは試香の機会がないので比較のしようがないですが、シェーズ・ウッドは私にとって、まさにロンドンの地下鉄を思い出す、あの香り。30年前、学生時代に行った時には決してしなかった、あのウード交じりの甘くて重い、ケミカルなウッディローズの香りです。30年前のイギリスは、硬くて泡のたたない石鹸素地とムスクとフローラルとおやじの頭がないまぜになったような、日本では決して嗅がない外国の香りがしましたが、今じゃそこにウードが取って代わっているわけで、白人、黒人、東洋人、アラブ系、さまざまな人種が暮らすロンドンの空気は、それこそ嗜好のるつぼになっているのでしょうが、香りの嗜好が人種の垣根を多少なりとも越え、割と誰でもこういう香りを大衆的に使うようになった、と解釈してもよいのかな、と感じました。地下鉄を普通に使う市井の民草が、キリアンみたいなバカ高香水を普段使いにしているわけがないし、外資系の航空会社を利用して、CAさんから香って来る素敵な香りを尋ねても、アフォーダブル系以外聞いたことがありませんので、シェーズ・ウッド位のものを、日常的に惜しみなく使っているんだと思います。連れてきた自分が言うのもなんですが、個人的には、ここまで安くなくていいから、もう少しナチュラルな方がそばで嗅ぐのには有難いなあ、と猛省しました。
マタンゴ Blu-ray
 お~いし~いわぁ… 食べるとマタンゴになってしまう、妖気な南洋のキノコは、小道具さんが和菓子の「すあま」で作ってくれたそうで、水野久美(この女優さん)いわく本当に美味しかったんだそうです
 
ジェントルマンのポラロイドにも、何やら不穏なものが映ってしまいましたが、馴染みのない西洋の公共交通機関の匂いは、マタンゴ級に戦慄を呼ぶ。そんな残念な結果となりました。ちなみに、渡英中は主にアエノータスゴールド(共にピュアディスタンス)を使っていたジェントルマン曰く「イギリスでは日本で嗅ぐより弱いというか、軽く感じる」といいながら、毎朝6プッシュ。日本での使用量と同じでしたが、ジェントルマンに反し私にはしっかり香っていましたので、周りの方も普通に香水を使っているから、鼻が慣れてしまったんでは?と思いましたが、確かに日本で使うより甘さが出てこない一方で、スパイスが一歩前に出て香る、女性らしい香りも一馬身程中性的に感じる、という違いは感じました。年末年始、海外、特に欧州へお出かけになる方は、普段使いの香りをお持ちになって、香り方の違いを楽しむのも面白いと思います。って、あれえ、何の話だったっけ?
 
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