La Parfumerie Tanu

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Black Gold (2014) 

A Gentleman Takes Polaroids Chapter Thirty Eight : Golden Ball Gentleman/Gold Trilogy by Ormonde Jayne
 
Black Gold (2014) 
 
立ち上がり:かなり刺激的。突き刺すような鮮烈な香りです、すぐ落ち着きますが。柑橘系とジェニパーか?
ただ最初嗅いだ時頭浮かんだのは、子供頃飲まされたシロップ系の甘味ついた風邪薬とかコデイン
 
昼:割と重いなあ…この季節は良いが夏はこの重さと汗が混ざると危険そう。ローズ系の香りが少し出てきた
 
15時位:ウード系の香りになってきました。まだ重い。持ちが良いな。
 
夕方:ウッド系になってきたような。ここらへんで丁度良く落ち着いてきた。最初の香りが強すぎで残香の方が良いです。
 
ポラロイドに映ったのは:サンフランシスコのケミカルサイケバンドCHROMEの「ALIEN SOUNDTRACKS」というアルバムのジャケ写。理由は判らない…聞かないでくれ
 
Tanu's Tip :
 
約半年ぶりのジェントルマンコーナー。前回のお題は「憂国のジェントルマン」でした。相変わらず国の憂いは続くものの、オンでもオフでも朝シャワーを浴びて香りをつける、その芳しきルーティーンを忘れなかったジェントルマンの、2021年出番の多かった香りベスト3(本人確認)は
 
①グリーンウォーター(ジャック・ファット、リニューアル前版)
②ゴールデン・シプレ(グロスミス)
③アエノータス(ピュアディスタンス)
次点:④ゴールド(ピュアディスタンス)、⑤グリーンウォーター(ジャック・ファット、リニューアル後(セシル・ザロキアン再処方)版)、⑥アンクルノワール(ラリック)、⑦ベチバー(ゲラン)(④~⑦は順不同)
※タヌ鼻識別ランキングとしては、①②⑤⑥は春夏に多く、③④⑦は秋冬に出番が多かった気がします。
 
2019年7月の「ゴールデン・ジェントルマン」でご紹介した、2019年上半期ベスト3と殆ど変わりません。大きく変わったと言えば、2位にグロスミスのゴールデン・シプレがランクインしていますが、これは、2019年11月に渡英した際、勿体なくもジェントルマンがグロスミスのアマンダ・ブルックさんから記念にいただいたもので、大切に、かつ盛大に使用した結果となりました。LPTがブログ開設時から応援しているグロスミスは、他がどれだけ蘇ろうとも玉座を他に譲ることを許さない、復刻系ブランドの頂点に現在も君臨していますが、同じイギリスのブランドとして今年創業20周年を迎えるオーモンド・ジェインも、現在のシグニチャーシリーズ(レギュラーライン)しかなかったころからLPTの常連ブランドです。
 
最近は過去作のドジョウ商売にシフトし「〇〇エリクシール」だの「◇◇インテンシボ」だの増殖が止まらず追いつけない上、近作は①高濃度または②ウードブレンドの③高額ラインが増え、せっかく「中身上々、お値段中の上」が身上だったオーモンド・ジェインは、フルーティなジャスミンをベースにした軽やかなOJトーンが魅力だったのに、第二のロジャ・ダヴを目指しているのか、何となく私が期待していたのとは少しずつ違う路線に向かっているのが残念です(そのロジャ・ダヴも相当の失速感ではありますが…)。唯一のお楽しみは、一部商品が狂ったように安くなる、年に一度のOJ名物・ブラックフライデーセール。昨年は、狙っていたゴールド・トリロジー・コレクションがギリギリ、本当にギリギリ手の届く価格で出ていたので、清水ダイビングで3種手に入れました。これで、オーモンド・ジェインは(多分)打ち止めです。
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ゴールド・トリロジー・コレクション。左からブラック・ゴールド(2014)、ローズ・ゴールド(2016)、ホワイト・ゴールド(2017)いずれもパルファム
トリロジー・コレクションは、2014年から2017年にかけて発売され人生の大切な節目に、そしてシンプルにあなたの愛を伝えたい時、トリロジーを贈ってくださいそんなコンセプトで作られた、黒金・薔薇金・白金-3つの金の玉の如くに輝く、オーモンド・ジェイン最高級ライン(2022年現在)です。全品パルファム濃度(OJ作品は、最低賦香率30%保証なので、濃度表記は香りの強度目安程度にお考え下さい)で、数あるOJ作品の中でもかなりパンチの効いた香りで、実際公式サイトでも「ワンプッシュで充分」位に使用上の注意が記載されています。

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大サイズ120ml、小サイズ50ml。ホワイト・ゴールドは限定ボトルのホワイトオペーク
「ワンプッシュで充分」この一言がすべてを物語る、ゴールド・トリロジー・コレクション。迫力があり、確かに荘厳ではありますが、荒木飛呂彦の画風を彷彿とさせる、別の意味で迫力があります。調香は一連のOJ作品を手掛けるゲザ・ショーン。往年のクラシック香水のパルファムとは違い、ふんふんと沁みだすように香るのではなく今様のパルファムですので、リニアに、ガツンと、胃に沁みるように香ります。くれぐれもつけすぎにはご用心。一方で、拡散性はやや控えめで、つけた本人だけが高濃度の液体に翻弄されることになります。3作とも、確かにきょうだい、確かに親族だとわかる、共通の「沁みる」ウッディノートがアンダートーンにあり、ウードの多さでブラックゴールド>ローズゴールド>ホワイトゴールド、と発売年ごとにウー度が下がっていきます。

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ブラック・ゴールド パルファム 50ml

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シリーズ初出のブラック・ゴールドは、果実の酸味、花々の華、ウードの奥行がバランスよく香るフローラルウードブレンドで、アラブ5大香料からサフランを除くローズ、ムスク、アンバー、ウードが主軸になっています。ジェントルマンがしっかりつかんだ立ち上がりのシトラスとジュニパーがガツンと香った後、その刺さった感があまり潮を引くことなく、ホワイトフローラルとベースのウッディトーン、ピシッとしたコショウボク(当世誰でも多用する流行のスパイス系香料、ピンクペッパーの事ですが、昔からOJはピンクペッパーの事をわざわざ学名のSchinus Molle=コショウボクと表記します)がじわじわ出てきて「全部いる」状態で何時間も香ります。光で言ったら確実にサングラスがないと目がやられる光量で、ブラック・ゴールドの名に反して目の前が真っ白。大変流麗で華のある香りではありますが、時に派手過ぎて少しだけオラオラ感すら感じてしまうのは、諸々の世情が重なり、自分の生活に「華」がないからでしょうか。あとせっかくの高濃度ですが、この濃度を1滴だけ、というより、実は半分位に薄めてもらって、ふんわりつけたら、もっとこちらも心の扉をバカーッと開けそうな気がするんですけど…あと、とにかくウードを中心とした味のインフレみたいな香りは、ここ数年来のイギリスのトレンドでもあって、2年半前に行ったロンドンの地下鉄構内や車中でも、しょっちゅう(ここまで上質ではないが)この系統の香りに通りすがりましたので、8年前に登場したブラック・ゴールドは、時代の先をいっていたのがわかります。 

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ポラロイドに映ったのは、ロンドンの手作りキャンドル&香水店から、英国を代表するコンテンポラリーメゾンに成長したブランドが誇る最高級ラインのイメージとは程遠い、このジャケット。ひと吹きのバーストで目の前がこの合成写真でいっぱいになったそうです。どの辺が…?というのは「このギャグの面白さを説明してくれ」というくらい意味のない事なので、Don’t Think, Feel ! でお願いします。
 
ウー度★★★☆☆
 
次回は、トリロジーコレクションよりRose Gold 、White Goldをご紹介します。
 
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