La Parfumerie Tanu

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White Gold (2017) / Rose Gold (2016)

White Gold (2017)
立ち上がり:BLACK GOLDのマイルド版という感じですか・刺激的な感じは少ないですが、つけて数分経つと立ち上がってくる香りはBLACKより濃密な感じがします。
昼:ジャスミン系で濃いなあ。ジャスミン茶の葉っぱが鼻っ面にぶら下がってるような。
15時位:これも濃い香りなまま続いております。今更ですがこれ男がつけるタイプではないですよね。
夕方:ムスク&ベチバーの残香ですがまだ強い。似合う人はいるんでしょうが私には難しい…
ポラロイドに映ったのは:ニナ・ハーゲン(この前メルケルの退任式でちょっと話題になりましたね)
 
Tanu's Tip :
オーモンド・ジェイン最高級ライン、トリロジー・コレクションより、前回のBlack Goldに続く2作を、発売年順ではなく、ジェントルマンがポラロイドを映した順番でご紹介します。
コレクションとしては最終作の「白金」ホワイト・ゴールドは、日本語で白金を意味するプラチナではなく、ブラック・ゴールドの沁みるウッディレジンベースはそのままに、より強香なホワイトフローラルをチューンナップし、ウー度を最小限に抑えたブレンドで、トリロジーコレクション共通の花香料はローズ、ジャスミン、カーネーション、ロータス、オーキッドですが、ホワイト・ゴールドではジャスミンましまし、フリージア別盛りとなっています。特に球根系のフリージアが、目の前に広がる世界を更に白くしており、お化粧で言ったらかなり白塗り感のあるマットな白さで、ラストのベチバーとアイリス、シダーウッドあたりが材木系粉物感を押し出します。同窓会の集合写真で首と顔の色が完全に違う女性を彷彿とします。しかも、目元も口元もかなり強く、腹から聞こえるロングブレスの通る声まで聞こえてきそう…トリロジーシリーズの中では最もロングラスティングで、下着への移り香が洗濯しても残ります。

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ホワイト・ゴールド パルファム 50ml 限定ボトル

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そんな、目を閉じても光が沁みてくるようなホワイト・ゴールドを何度も実装し、その都度ポラロイドに映ったのは、ドイツの大御所歌手、ニナ・ハーゲン(67)。東ベルリン出身で、国立音楽養成所で歌唱を学んだ後にポップ歌手デビュー。1974年には東独で「Du hast den Farbfilm vergessen(邦訳:カラーフィルムを忘れたのね)」が大ヒットするも、政治批判により西側に亡命すると、それまでのアイドル路線が一気に恐怖パンクへと路線変更。ドイツらしい字余りのもたついた演奏に、オペラ仕込みの超絶な歌唱力と鬼の形相で歌いまくるようになりました。その後の活動は、下記動画で1年ごとの変遷をご覧いただければと思いますが、アイドル歌手だった20才前の可愛い女の子(でも時々目つきが危なく、その後の成長が垣間見られる)が、突如パンクに転向し、宇宙の真理にまで到達した後下界へ降り、未だ現役で幅広い活動をしています。80年代初頭、独ナショナルチャート2位までいった代表作「ウンバハーゲン」(右下)のジャケットやシングルカットの「アフリカンレゲエ」、江口寿史の漫画でご記憶の方も多いでしょう。
最近の話題としては、ドイツでは首相の退任式に好きな曲を楽団が演奏してくれるしきたりがあり、ニナ・ハーゲンと同じ東独出身のメルケル首相が昨年退任する際「青春時代のハイライトだった」と選んだ曲が、前出の「カラーフィルムを忘れたのね」だったので、リアルタイムで恐ろしい形相のニナ・ハーゲンを見てきたTeam LPTとしては、日本で話題になったのは70年代後半から80年代前半位までだったニナ・ハーゲンの名を、まさかメルケル首相の退任式で聞くとは思いもよりませんでした。

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実はこのニナ・ハーゲン、ジェントルマンと私にとっては切っても切れない縁があり、1981年春、今は亡き音楽雑誌ミュージック・ライフの読者モデル変身企画に参加し、昭和の良き時代らしく実名フルネーム出しでニナ・ハーゲンをイメージした変身ショットが掲載されたのですが、その号はジェントルマンが初めて買ったミュージックライフで、それから8年後の1989年、ジェントルマンに初めて会った時「君、1981年春頃のミュージックライフにニナ・ハーゲンのコスプレで出てたよね。まだその号持ってるよ」と言われ、違う意味で全身に電流が走った記憶があります。

 

ニナ・ハーゲンの歴史(1974-2017)19歳から62歳までのカットを1年刻みにまとめた貴重なビデオ集


このコスプレ企画、本当は読モ企画でもなんでもなく、応募読者からの選抜は行わず、当時ミュージックライフの発行元であるシンコーミュージックの芸能事務所に所属し、デビューを控えていた本田恭章の売出しプレビューが目的で、当て馬として編集部の若手や関係者家族が集められたもので、70年代後半から80年代前半にかけて、シンコーミュージックでイラストの仕事をしていたハン1と、ミュージックライフの若手編集者が高校時代の同級生だったため、妹の私に白羽の矢が立ったのですが、後年こんな形で話が蒸し返されるとは思いもよりませんでした。50を過ぎた今でも、バンドなどでカバーを演奏する際「ニナ・ハーゲンやれ」というのは仲間内の定番ネタとなっており、ジェントルマンと私は40年以上ニナ・ハーゲンをかすがいにして生きているというのも奇特なご縁です。…って、ホワイト・ゴールドは遥か彼方の成層圏に飛んでいってしまいました。

 

ウー度 ☆☆☆☆☆

 
Rose Gold (2016)
 
立ち上がり:これが3種の中で一番しっくりきますね。以前もこれを書いた事ありますが、濃さが違う。確かに香りは濃い。
昼:これもやはり濃いな。今の季節だと良いけど夏とかで汗と混じるとやや不安。これもジャスミン系の香り出てきました。
15時位:濃いなりに大分落ち着いた香りに。ウード系になってきたか。今回の3種でどれか使えと言われたらやはりこれかと。変な癖や尖りは少ない。
夕方:15時位と同じ感じで薄くなってきました。減衰感も好ましい方です。
ポラロイドに映ったのは:トーヤ(まあ…ニナ・ハーゲンよりは常識ありそうだし…今やセレブみたいなものですわ)
 
Tanu's tip :
 
トリロジーコレクションのラストは、ホワイト・ゴールドの前に発売されたローズ・ゴールドをご紹介します。ローズ・ゴールドは、6年前の2016年、リオオリンピックでイギリス選手団の金メダル獲得を祝し、ゴールドに引っ掛けて1日だけ販売されたプロモーション用EDP8mlを「オリエンタル・ジェントルマン」で紹介しています。

 

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ローズ・ゴールド パルファム 120ml
EDPは非常に高評価でしたが、パルファムでもトリロジーコレクション中最も高評価だったのがこちら。すでにEDPは使い切ってしまい、再度実装しての比較ができませんが、一番の違いは、ジューシィでフルーティなジャスミンのOJトーンではなく、トリロジーコレクション共通花香料(ローズ、ジャスミン、カーネーション、ロータスフラワー、オーキッド)がメインなところでしょうか。

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3作共通のトップノートに登場する、立ち上がりのセージとベルガモットの美しさは最もナチュラルで、すぐに主役のタイーフローズにバトンタッチ。同じオーモンド・ジェインのベストセラー、タイーフと比較して、明らかにローズゴールドにはウードが鎮座している分胸板が厚く感じますが、さすがブランドが看板に据えるタイーフローズをメインキャストに登用しているだけあって、時折体から立ち昇る香気から、ベルベット様の花びらが目に浮かぶようで、全体のトーンもバランスが良く、荘厳ながらつける側の体力を奪わないローズウードに仕上がっています。他2作との違いは、ウード以外のベースがアンブレットシード中心で、シンプルでローファットだから、怒涛のメイン花香料と重なっても胃もたれしないせいだと思います。ベースの甘さが控えめなので、性別問わずお楽しみいただけますし、いいジオッサンのジェントルマンにもしっくり来ていました。個人的にも、トリロジーコレクションからどれか一つ選ぶとしたら、ローズ・ゴールドをお勧めします。
ポラロイドに映ったのは、ドイツでニナ・ハーゲンがパンクの女王に豹変した同じ年の1977年にバンドデビューしたイギリスの女優兼シンガーのトーヤ・ウィルコックス(64)。日本ではバンド時代に少々話題になった程度、出演映画も「さらば青春の光(1979)」位しか記憶にありませんが、イギリスではその後の舞台やTV出演のキャリアですっかりお茶の間の人気者になっています。また、日本のプログレファンの間では「キング・クリムゾンのロバート・フリップ夫人」として、昔パンクポップ歌手で今はロバート・フリップの奥さんやってる、みたいに認識されていますが、実情は全く逆で、All Star Mr & Mrsという英国版「おもろい夫婦」みたいな英国の民放番組にフリップ夫妻が登場した際、主役はあくまでトーヤでロバート・フリップは「トーヤのご主人」として紹介され、後から登場してトーヤに関するクイズに〇×ボードで挑戦する、みたいな展開が衝撃でした。

毎週日曜朝(日本時間の夕方)欠かさず配信されている。昨年後半からトーヤの露出度が目に余るようになってきた。ちなみに「ご主人の」ロバート・フリップ率いるキング・クリムゾンは、昨年来日ツアー公演が出来た唯一の海外ロックアーティストで、厳しい入国審査と待機期間を経て行ったツアーは全公演ソールドアウト、年齢的にも今回が最後の来日になると公言していた。来日中もサンデーランチは毎週録りだめ配信し、
帰国後の日曜にもすぐに登場する念の入れようだった

この力関係(?)が最も明らかになったのは、2020年春、英国でコロナによる初めてのロックダウンが始まり、厳しい行動制限がかけられてから、トーヤが毎週日曜日に欠かさずYouTubeで配信している「トーヤとロバートのサンデーランチ」(上記動画)で、クリムゾンでは超然としたギターヒーローとして君臨し、既に後期高齢者であるロバート・フリップ(75)が、ミツバチの格好で踊ったり、昨年は途中からカラーモヒカンになり、ほぼ毎週乳放り出して踊りまくるトーヤのバックでギターの伴奏をつけたり、トーヤの所作にヒイヒイ笑う、単なるいじられ爺さんへとキャラ崩壊している所が大変好印象です。一方で、この日曜配信では、定期的にシリアスな質問コーナーもあり、トーヤやフリップ翁が質問者への将来について真摯に答え、常識人としての姿も垣間見せるなど、全体を通してバランスが良い人物像に、トリロジーコレクションのローズ・ゴールドが重なったのだと思います。まあ、そんなバックグラウンドを私が何も説明せずに、ニナ・ハーゲンとトーヤの写真をただ載せたら、二人とも「まずいおばさん」にしか見えませんが、一応英独ではお二人とも相応の位置にある、とお伝えしておきます。

ウー度 ★★☆☆☆
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ニナ・ハーゲン(左)、トーヤ(右) 20代
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ニナ・ハーゲン(左)、トーヤ(右) 60代

 

今回ジェントルマンコーナーにてご紹介したGold Trilogy Collectionを含むオーモンド・ジェイン作品のサンプルは、LPT読者向け会員制コミュニティストア、agent LPTでお試しいただけます。

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