La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Chypre21 (2015)

立ち上がり:植物(モス系?)の香りが強めですね。最初からかなり落ち着いた香りです。

昼:薔薇っぽい香りも出てきました。これも良い感じです

15:00位:
ムスクの香りも出てきます。どの時点でも上品です。

夕方:
15:00に加えウッド系も交じってきてるかな?どの時点でも破綻した感じがなくまとまってます。良いですね。上品過ぎて少し物足りない感もありますが。

ポラロイドに映ったのは:
好きな音楽はTEARS FOR FEARSとかSIMPLE MINDS、U2とかで、話が合いそうでいて微妙に常にすれ違ってる感じが抜けない友人とまでは言えない知人

Tanu's Tip :

LPT初登場ブランド、ヒーリーはイギリス人、ジェームズ・ヒーリーが、名門ロンドン大学キングスカレッジで哲学や美学を学び、卒業後パリに渡って調香やデザインを学び直し、2006年に創業したフランスの香水ブランドで、花瓶や家具などインテリアデザイン出身だからか、インテリア性の高いお洒落なモード感に溢れています。
日本では、香水にモードが結び付き「おしゃれアイテム」に認定されると、ファッション誌で取り上げられたりセレクトショップで展開しやすいので、ヒーリーは2014年に日本上陸する以前から話題性が高く、新作が登場するごとにちゃんと話題になるブランドです。最近ではメゾン・キツネ(ダフトパンクのマネージャーと日本人建築家が立ち上げたファッション集団。日本にも法人があり、南青山やお代官山にショップ展開中)とのコラボレーション香水、ノート・ド・ユズを発売、お代官山のブティックで大々的なお披露目パーティをそれは華々しく開催していました。公式サイトのニュースレター登録者は無差別に招待したようで、何を間違ったか私宛にもローンチパーティの招待メールが届き、心当たりがないので放置していたら、後日インフルエンサーや香水がらみのイベントなら必ず見かける業界人などパリピがワンサカ集合したショットをファッションサイトで見かけ、間違って参加していたらさぞ居場所がなかったろうと、己の危機管理能力の高さに驚きました。

またヒーリーは、近年欧米で始まり、日本でも追随者が後を絶たない香水サブスクリプションサービスの常連ブランドで、サブスクでぐいぐい認知度を上げており、次世代型のプロモーションをいち早く取り入れる先見性と、欧米ではデパートや香水専門店など数多くの販売拠点を獲得する一方で、直接実店舗に行けない顧客向けに、オンラインストア併設の公式サイトは日本語を含む6か国語展開、充実したサンプル販売、日本へも発送してくれる上、定期的に送料無料キャンペーンも行うなど「世界を視野に置いた腕利きの広告代理店と、いいタッグを組んでいる」のがビンビン伝わってきます。

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そういうわけで「なんでLPTがヒーリーを?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。実はLPT、男性読者が案外多く、関西の熱心な男性読者からある日、ジェントルマンに向けて「ヒーリーのシプレ21のポラロイドをお願いします」という、一本の矢が飛んできました。矢は居合わせた私のハートにズボッ。伊勢丹メンズ館に試香しに行ったら、これがまさしくジェントルマン御好間違いなしの、軽やかなシトラスシプレ。しかもEDP100ml21,600円と結構いいお値段。気に入ると惜しみなく使うジェントルマンなら半年持たないな…それじゃ財布も持たないや…気にいられたら困るなあ…そんな時、来ました!ヒーリーのニュースレターが。バレンタインデー送料無料キャンペーン、来た!公式サイトでシプレ21は€130、送料無料なら国内価格の25%off!これまでジェントルマンにバレンタインのチョコレートなど金輪際あげた事などなかったのに、つい出来心で初のバレンタインプレゼントをあげてしまいました。買う前に、読者の方がご丁寧にサンプルまで送ってくれたのに、更に財布の紐を緩ませる素敵な公式サイト、やっぱり腕利きの広告代理店がついているに決まっています。

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シプレ21 EDP100ml

香りとしては、きりっとしながら落ち着きと余裕のあるシトラスシプレで、基本的にはシプレの王道、ベルガモット-花香料-パチュリ-オークモスのブレンドですが、ローズマリーやプチグレンでダンディなフジェール系の表情をわずかながら持ち合わせているため、体感的にはメンズ寄りのユニセックスに感じます。透明感の高いローズとネロリに、少しだけサフランで香り付けしたスウェードのような滑らかさは、女性がつけても違和感はありませんが、人によっては少々「彼氏の借り物」になるかもしれません。そうであっても知的で穏やか、肌の匂いと相まっても清潔で身ぎれいなシプレ21は、考え方を変えて「素敵な男性がそばにいる高揚感」に置き換えて楽しんでいただきたいと思います。オールシーズン使える、上品にまとまった難しくない良い香りなので、それこそ大事な男性へのプレゼントにしたら、香り初心者から腕に覚えのある殿方まで、喜んでくれるのではないでしょうか。シプレ21もゴールデン・シプレと同じく、香り持ちは短め&タッチアップ必須系なので、こういう香りは詰め替え可能なボトルで販売して、200とか400mlのリフィル瓶を展開して欲しいです。

閑話休題、香りのコンセプトにある「フレンチシプレの伝統を継承しつつコンテンポラリーに」「グレース・ケリーやジャッキー・オナシス、そしてウィンザー公爵夫妻の時代のほのかなノスタルジー」と「パリの粋で洗練された空気感」はあまり感じず、透度の高い現代的な作風ですが、だいたい、上記コンセプトに登場する人物の黄金期は、グレース・ケリーは1950年代、ジャッキー・オナシスはケネディ大統領夫人名義でなくギリシャの大富豪、アリストテレス・オナシス夫人名義なので、1960年代後半から70年代、そして「王冠をかけた恋」のウィンザー公爵夫妻が王冠をかけて英国からトンズラし、挙式したのは1937年。しかも全員フランス人ではありません。素人目にもこのコンセプトはちょっと微妙、照準が甘いかなぁ?コンセプトに登場する人物や時代設定は、もう少し絞った方がイメージングがしやすいですね。

ただ、今回のポラロイドは作品コンセプト同様、少々微妙な「知人以上、友達未満」が映りました。
自分と同じバンドが好きなのが縁で仲良くなった人にどの曲が好きか聞くと、ことごとく好きな曲が違う。そうか、好きな時代が違うんだ。ジェントルマンが例に挙げたのは、いずれも売れる前と売れた後ではファン層が違うスタジアム級バンドです。

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ブレイク前

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ブレイク後

私なら、U2はWARまで。ティアーズ・フォー・フィアーズはハーティングまで。シンプルマインズは3枚目まで、百歩譲ってスパークル・イン・ザ・レインまで。でも世間一般的にはU2はヨシュア・ツリーから、TFFはシャウトから、シンプルマインズはワンス・アポン・ア・タイムからブレイクし、世界で評価されました。私の好きだった時代は世間的にもバンド達にとっても「なかった事」に近く、確かにその音のままでいたら世界でブレイクすることはできなかった。でも自分はブレイクする前の音が好き、世間の人はブレイクした後の音が好き。いつまでたっても平行線。それでも同じバンドのファンだから話は合うが、最後の一線でお互いの腹が割れない。この美しいシプレ21で、そんな平行線を感じたのだとしたら、それは「作品の良さはわかるが、後一歩のところで気持ちが入れ込めない」頑なものが、ジェントルマンの魂に居座っているからでしょう。理屈ではない、魂がそう言っている。でも悪い香りじゃない、むしろ良い出来だと思う。悪いのは自分の嗜好の歪み、相手では無い。そう割り切ってこれからも行きていく。妻もそうだ、義理の姉も。…えっ、チーム全員同じ穴の狢?

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