立ち上がり:こ・・・・濃い ある程度想像はしていたので少なめにつけたのですが、それでも噎せかえるような甘い香りに覆われる。
他の2つに比べてモス系の感じはあまり無いような気がします。にしても濃い!電車の中で隣の人に引かれるレベル。
昼:少し落ち着いてきました。濃さはあまり感じられず、これならエレベーター乗って降りた後の残り香気にせずいられるか。でもやはり甘いな。私がつけてるのは違和感の方が大きい。
15時位:朝の強さから考えると意外なほど弱くなってます。(今日は非常に暑くて汗かきまくりだから流れたか?)
夕方:ほとんど消えた。微かにウッディかと。
ポラロイドに映ったのは:新宿二丁目
Tanu's Tip :
2007年より販売開始し、日本でも同年取扱いが始まったシャネルのラグジュアリー・フレグランスライン、レ ゼクスクルジフ。
発売当初はエルネスト・ボーが手掛けたアーカイブ4作と新作6作、計10作のラインナップでスタートしました。現在のラインナップは17作品、発売当時はオードトワレのシリーズだったのを、2016年すべてオードパルファムに再処方しました(オードゥコローニュ以外)。アーカイブ物4作とベージュ、ジャージー、1932の計7作*はパルファム(15ml)もありますが、日本では昨年終売しました。新作の調香は、1932までがジャック・ポルジュ、ミシア以降はジャックの息子で現在のシャネル専属調香師、オリビエ・ポルジュが手掛けています。オードパルファムの国内価格は75ml27,000円、200ml49,680円(いずれも2019年7月現在、税込)、2019年7月現在の取扱店舗は下記10拠点および公式オンラインストアで購入可能です。
・銀座シックス ・表参道ブティック ・ルミネ横浜 ・新宿伊勢丹
・横浜髙島屋 ・大阪阪急 ・大阪髙島屋 ・京都髙島屋
・名古屋松坂屋 ・福岡岩田屋
なお、時々取扱いのない地域のデパート等で巡回販売を行っており、昨年は池袋西武でもゼクスクルジフのポップアップストアが登場しました。
*今月コロマンデルのパルファム15mlが追加されました。発売記念としてバカラボトル50ml豪華ボトルバージョンも数量限定で発売。
【エルネスト・ボー作品アーカイブ:年代は初出年】
№22(1922)
キュイールドルシー(1924)
ガーデニア (1925)
ボワデジル(1926)
【2007年新作】調香:ジャック・ポルジュ
№18 フルーティフローラル
28ラパウザ パウダリーウッディ
31リュカンボン フルーティシプレ
ベルレスピロ グリーンフローラル
コロマンデル ウッディオリエンタル
オードゥコローニュ シトラスアロマティック
【2008年以降新作】調香:ジャック・ポルジュ、オリビエ・ポルジュ(*)
ベージュ(2008) フローラル
シコモア(2008)ウッディアロマティック
ジャージー(2011) アロマティックフローラル
1932 (2013) フローラルアルデヒド(ジャスミン強め)
ミシア(2015)* パウダリーフローラル
ボーイ(2016)* アロマティックフジェール
1957 (2019)* ムスキーフローラル
ジェントルマンには、リニューアル版のEDPではなくオリジナルのEDT版でポラロイドをお願いしました。
31リュカンボンの名前は、ご存知シャネルのパリ本店の所在地に由来します。シャネルの公式サイトは、ブランドとしてこれ以上のキャラ立ちアイテムは他にない、創業者ココ・シャネルの逸話を大変丁寧に綴っていますので、是非お目通しください。シャネルが1910年、カンボン通りに帽子店をオープンし、8年後の1918年にカンボン通り31番地の建物を丸ごと買ってから、破竹の増床劇が綴られています。
今から約10年近く前、横浜高島屋で初めてゼクスクルジフシリーズを試しました。
新作は、ルカ・トゥリンの世界香水ガイド1437(2008年日本語訳版が発刊された第一弾。ちなみに2年後の2010年には第2弾が日本でも翻訳されたが、昨年発刊された第3弾の翻訳版は出なかった)で五つ星を取っていた31リュカンボンだけ名前を憶えていたので、試してみたところ、第一印象は「こんな戦前のフルーティシプレみたいな香り、21世紀に良く出すな」「昔の香りは香料が手に入らなくて作れなくなったというが、ちゃんと作れるじゃないか!」と、軽く吹っ飛びました。当時私は、血道を上げてジャン・パトゥのアーカイブで1984年に発売された復刻シリーズ、マ・コレクシオン作品を集めており、中でも戦前の作品で、その後のシプレ系に色濃く影響を与えたクセジュ(1925)は当時としてもすでに入手困難で、結構なプレミアがついていたため、入手できた時の喜びは相当なもので、現代の作風ではありえない(と思った)個性的な香調にも陶酔したものです。だから31リュカンボンにクセジュの影を色濃く見た時「こういう香りは、作れないのではなく作らなくなっただけだ」と瞬時に理解しました。一方、エドモン・ルドニツカ作の伝説的フルーティシプレ、ファム(1944)は、1989年のリニューアル時、再処方を手掛けたオリヴィエ・クレスプがインタビューで「クセジュにインスパイアされた」と語っていたので、このファムとミツコの親戚みたいなリュカンボンは、確実にクセジュの影響下にある作品だと思います。また戦後の近似値でいうなら、1980年代前半の爆香系が台頭する直前に登場したスタイリッシュでコクのあるシプレ-イザティス(YSL)、ラニュイ(パコラバンヌ)、ディヴィーヌ辺りに同じ気配を感じます。
フルボディのレトロなフルーティシプレである31リュカンボンは「ゼクスクルジフの中でパウダリーなものが欲しいとBAさんに相談すると、ミシアが登場する以前は、28ラパウザかこの31リュカンボンを勧められた(LPT弾丸特派員M談)」という位、世間では粉物に分類されていますが、ジェントルマンや私がつけると粉物感が全く立ち上がって来ずに、むしろ戦前の熟々に熟れた果実とラブダナムとパチュリが織りなす空気の滞りを起こすようなフルーティシプレに感じます。前出のゴールデン・シプレやシプレ21のように、ミドル以降の心休まるパウダリー感はゼロ。その代わり、いつまでも意識を引っ張る存在感。笑い声でいったら低めに「フフ」。以前海外の香水コミュニティサイトで31リュカンボンを「シャネル版ミツコ」と評しているのを見かけましたが、言いえて妙だと思います。しかし伏目がちなミツコ程淫靡ではなく、こちらの眼を真っ正面から見ている視線がシャネルらしい。シャネルの香りは、どの作品でも人の眼をまっすぐ見る自信があります。これで、少しでも他の方が言うようなパウダリー感が上がってくれれば、ずいぶんと印象も柔らかくなっただろうに、なぜ自分がつけると粉物にならないのかは謎です。クラシック香水が苦手な方に、この香りの愉しみはわからないのではないか、アーカイブ物はフルボディですが、新作物は繊細で明るく軽やかな香りが多い(中にはコロマンデルのようなオリエンタルものもありますが、オリエンタルというジャンルの中では軽めです)ゼクスクルジフシリーズの中では、31リュカンボンは狙って時代錯誤テイストを織り込んでいますので、アーカイブ物が大体OK、というのが大前提で使って欲しい気がします。
ジェントルマンも玉砕、しまいには「新宿2丁目」がポラロイドに映ってしまいました。香りの印象も、ただ濃さに圧倒されているだけで、どんな香りかもわかりません。新宿2丁目界隈の店には行った事がありませんが、テレビや雑誌などで見るオネエマンに言い寄られた気分だったのでしょうか。そういう観点でいったら「31リュカンボン+新宿2丁目」で、私も長身で手指の長い和装のオネエマンが目に浮かびました。ちなみにジェントルマンは上半身に実装したため、このような苦しい思いをしたのですが、この香りは確かにウエストより下、肌が露出しない部分につけ、香りが鼻を直撃しないようにチューニングした方が心地よく楽しめると思います。あれえ?今月は金色に輝くシプレ特集だったよね?どうしてラストが窒息上等な濃ゆいオネエマンになっちゃうの?それはひとえに店主タヌの持合せ不足で、同じテーマで3本揃えることができず、シプレコレクションから「しょうがないわねえ」と登場したのがリュカンボン、という次第です。どっとはらい。