La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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London Calling 2019-1 : Magical Mystery Afternoon Tea with The Brookes

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現在、LPT annexで絶賛連載中のマンプク宮殿英国スペシャル「Let England Shake」。単身では何度か足を運んだイギリスですが、昨秋初めてジェントルマンとイングランド各地を訪ねました。先月末でEU離脱となったイギリスが、クリスマス前の国民投票を目前に沸いていた2019年11月後半、旅の締めくくりに歩いたロンドンで、約2年ぶりにグロスミスの現オーナー、ブルックご一家(写真左)と再会する機会に恵まれました。再会場所は、勿論ブランドの旗艦店、フォートナムズ&メイソン。ジェントルマンは皆さんにご挨拶をした後、フォートナムズを飛び出てロンドンの中古レコード店へと猪突猛進。私はご家族お気に入りのカフェで、香水売場のすぐ下のフロアにあるザ・パーラーにお招きいただきました。
 
-お久しぶりです。皆さん、2年前と全然変わりませんね。
 
サイモン:君たちが英国音楽聖地巡礼オタクツアー(Music Anorak Tour)をするというので、敬意を表してアノラックを着てきたんだ。
 
-それはご丁寧にありがとうございます。ジェントルマンはマンチェスターとロンドンの中古レコード店でアナログ盤を買いまくったり、ジョイ・ディヴィジョンゆかりの橋(エッピング・ウォーク・ブリッジ)を渡ったり、充実した旅になりました。他にもノーサンプトンやボーヴィントン戦車博物館にも行きました。
 
サイモン:鉄道で各地を回ったそうだが、快適だったかね?
 
-はい、奮発して1等車に乗れるフリーパス(ブリットレイル・イングランドパス)を購入したおかげで、非常に快適な列車の旅が出来ました。中には1等と2等の差が全くなく、私鉄沿線って感じのボロい車両もありましたけど、路線によっては朝食や昼食が出て、結構いいお食事をタダでいただきました。
 
サイモン:私はマンチェスター生まれなんだが、母はノーザンプトン出身で、母方の親戚の多くはノーザンプトンの主要産業である製靴業に携わっていたんだ。しかしよくノーザンプトンなんかに行ったねえ。観光のカの字もないところだったろう?
 
-まあその、愛想も小磯もなくて、すすけた感じがいい意味で本物のイギリスを見たって感じでした。電子とばく場とか電子タバコ屋がひしめいていて、トルコ人専用床屋とかあって驚きましたが。目的はドクターマーチンのファクトリーショップだったんですが、あいにく日曜日でノーザンプトン駅からの公共交通手段がなくて、仕方なくタクシーで工場横づけしましたが、タクシー代を考えても、非常に安くマーチンシューズが入手できました。
 
復興して10年経った今でも新発見のグロスミス
 
サイモン:ところで今昼時だが、ジェントルマンは一人で大丈夫かね?
 
-問題ないです、ホテルのフルイングリッシュブレックファストを2周り完食してましたから。
 
サイモン:なら大丈夫だ!朝食ビュッフェ2周りは、ケイトも必ずやってるよ。ところで最近、ロンドン図書館で20世紀前半に発行されたグロスミス総合カタログを発見したんだ。とても状態のよいカタログで、今まで自分たちも見た事のないデザインのボトルが沢山載っているんだよ(iPadで見せながら)。
 
-確かに、今までグロスミスの公式サイトや海外の記事では見た事のない、瀟洒なカットガラスのボトルや装飾の華やかな作品が、相当数載っていますね。

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ガラス工場、ヴァレリー・ブランシュ・ダノール。アノール郷土史のサイトより
サイモン:カタログにはフランスのガラス工場、ヴァレリー・ブランシュ・ダノール(Verrerie Blanche d’Anor)の名前が載っていた。しかも子孫が現存しているのがわかったんだ。ヴァレリー・ブランシュ・ダノール社は、1900年代前半にグロスミスのボトルを製造していたそうで、連絡を取ってみたら、現在のオーナーは7代目の方で、グロスミスはVIP待遇で工場へ招かれる事になったんだよ!
 
アマンダ:そのご縁かしら、1か月ほど前、リール市近郊にあるアノール町から連絡があったの。その町はかつてガラス産業で栄えたところだったんだけれど、衰退してしまって荒れ地同然になってしまったのを、環境負荷を低減したエコ都市として再生して、その象徴として再建したヴァレリー・ブランシュ・ダノール工場の落成式にご招待します、というお申し出だったのよ。12月4日の式典に合わせ、フランスへ行くんだけれど、ヴァレリーブランシュ館の活動を描いた壁面には、グロスミスのヘリテージ・ボトルが紹介される事になったのよ、町長さんから直々にご招待を受けて、こんなことが起きるなんて、夢にも思わなかったわ!イギリスからはリールへ行った後、アノール町にはいるんだけれど、その途中にはガラスミュージアム(Mus Verre de Sars-Poteries)があって、落成式の翌日にはミュージアムのガラス製造ワークショップにも来賓としてご招待されているのよ。
 
サイモン:倉庫には、さすがに当時の金型は残っていなかったが、確かにグロスミス向けに製造されたと思われるボトルが、工場の記録に多数残っていた。今まで、ボトルは英国製だとばかり思っていたが、ここでグロスミスはフランスにもボトリングの生産拠点を持っていたという事が新たにわかった。グロスミスの歴史は、まだまだ発掘途中にあるんだ。
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再生ヴァレリー・ブランシュ・ダノールの落成式。この中にVIP招待のブルック夫妻がいるはず
-2009年に復興して早くも10年が経ちますが、まだまだ現在進行形とは。これから何が起こるか楽しみですね。

 

インドへの道

エレナー:今年の3月に、建築士の試験があり、試験が終わったら自分へのご褒美旅行でインドに行く予定なの。
 
-エレナーさんは、グロスミスと建築デザイン会社の二足の草鞋を続投中なんですね。
 
エレナー:イギリスでは、家を建てる時、無資格な建築士に頼むと、後で違法建築とか出てきた時が大変なの。試験に合格すると、建築士名鑑に載せてもらえるんだけど、プロとして信頼の証になる大切な資格なのよ。
 
-たしか前回ロンドンでお会いした時も、何かの試験が控えているって言ってましたよね。勉強家だなぁ、エレナーさん。頑張ってくださいね!ところで、なぜインドなんですか?
 
エレナー:母(アマンダさん)のおばあさんが、第一次世界大戦中の1917年ごろ、インドに住んでいたの。曾祖母ゆかりの地を訪ねて、家族の歴史に触れる旅がしたいな。
 
-楽しい旅になりますように。あっ、でも水には気を付けてくださいね。
 
ケイト:あと氷もね!
 
イギリスは美味しい。特に中食が
 
サイモン:明日帰国するそうだが、イギリス滞在中は、何を食べていたんだね?
 
-はい、朝はホテルの朝ごはんが、どこもしっかりフルイングリッシュブレックファストで、ソーセージにベーコンに焼きトマト、ベイクドビーンズにマッシュルームと、朝から夜ごはんみたいな盛りっぷりでした。何回食べてもおいしかったです。昼は、滞在中の街で中国人がやってる回転すし屋でとんこつラーメンと寿司と枝豆のセットを食べたり、まずいものチャレンジもしました。
 
全員:
 
-それで、この時期のイギリスは陽が短いでしょ?なんか4時すぎには暗くなっちゃって「おうちに帰ろう」モードになってしまい、夜の外食はあまりしませんでした。外で食べたのはマンチェスターで中華と、ロンドンのトルコ料理店に行ったくらいで、あとはフィッシュ&チップスをテイクアウトしたり、疲れと時差ボケでちゃんとした時間に食べられず、夜中にコンビニでまずいサンドイッチとカップラーメンを買って食べたり、ジェントルマンはもっぱらスーパーで缶ビールの4本パックを買って毎日ホテルで宅飲みでした。
 
全員:
 
-ただ、マンチェスターの宿泊先がアパートメントスタイルで、LDKがあってキッチンもフル装備だったので、スーパーの中食ディナーセットみたいのを買って来て、オーブンレンジで熱々をいただきました。M&S simply food*の、£10 for twoっての?10ポンドでメインとサイド2人前選べるっていう中食セットにはお世話になりました。
 
ケイト:(話に割って入って)£10 for two、知ってる!旅行中、宿でテレビを見ながらのんびり夕ご飯食べるのって、最高だよね!(必死にフォロー)
 
グロスミスを引出物にする超絶リッチな結婚式
 
アマンダ:グロスミスは、フォートナムズ&メイソンを旗艦店にしているんだけれど、M・ミカレフとパートナーシップを締結し、販売員を共有しているの。2019年7月より、それまでクライヴ・クリスチャンの担当をしていたタマラと新しく契約して、同じくミカレフの販売員も兼ねて、フォートナムズの店頭販売をお願いしているのよ。タマラは香水業界の経験が長く、リン・ハリスのもとで働いていたこともあり、経験と知識が豊富な方に販売を任せることが出来て、グロスミスはラッキーだと思うわ。タマラが来てくれたので、現在私もケイトも店頭に立たなくてもよくなったしね。
 
-接客をアマンダさんとケイトさんで行っていた時代が懐かしいですね。タマラさん、前回フォートナムズを訪問した際、香り酔いしてへたり込んでいた時に、椅子まで案内してお水を飲ませてくれました。どうぞよろしくお伝えください。
 
アマンダ:また、2017年半ばから7月まで働いてくれていた前任のサム君は、フォートナムズを離れ、現在はEU外のブランドを英国に紹介するポジションに就いているわ。
 
-サム君は、一昨年日本に遊びに来た時メッセージが来て「東京で、どこかおすすめの場所を教えてくれる?」というので、どんなところに行きたいのか伺ったら「ヤバいところがいい」っていうんで、ちょっとツボがわかりかねたんですが、目黒寄生虫館花園神社を教えてあげました。後日、風の噂で東京楽しかった、と聞き、お役に立てて光栄です。
 
ケイト:今、グロスミスはオーダーボトルの注文に対応しているの。現在、とある結婚式の引出物用に、グロスミスのクラシックコレクションから、EDP10mlサイズのボトル**に、香水名と新郎新婦の名前が入ったラベルを貼って、ブラックのポーチにいれた特製品を、アソートで400個注文したいという引き合いが来たの。明日お客様と具体的な商談をするんだけれど、まず「400人もの人を招待する結婚式」という時点で、相当大掛かりな式だし、ましてやグロスミスの香水を引出物としてプレゼントにするなんて、何てゴージャスなウェディングなんだろうって、ブランド側の私たちが言うのもなんだけど、凄い驚きよね!
 
-いちじゅうひゃくせんまん…どんな長者か、是非次回お会いした時教えてくださいね。
 
日本とイギリス、香り方が違うグロスミス 
 
-ところで、今回の渡英には、ゴールデン・シプレを持参して、今日もつけてきました。
 
ケイト:私も今日つけてる!
 
-お、かなり控えめにつけているのかな?隣にいてもわかりません。もう香りが飛んじゃったかな?そういえば、ゴールデンシプレも、また2012年の渡英時に購入したシェメルネッシムにも感じましたが、日本で体感するより、どちらも男らしく香るんですよね。特にスパイスとウッディが立ち上ってきて、胸板が厚く感じるんです。日本で自分がつけると、どちらもとても女性らしい柔らかさがあって、もっと濃厚に感じるんですが、イギリスで嗅ぐと、フラワリーな部分が一歩下がるというか、ドライで甘さが控えめに香るんです。シェメルネッシムをイギリスで初めて試したのが5月、今が11月ですから、あながち季節要因というわけでもなさそうなんですけど。
 
アマンダ:日英で、香り方の違いを聞いたのは今日が初めてよ!今まで、国によるグロスミスの香り方の違いを聞いたことがなかったので、とても新鮮だし、勉強になるわ。きっと天気、湿度、そして食べ物も影響してくるんでしょうけど、これからは私達も海外出張した際には、注意深く観察してみようと思うわ。
 
-それでは、そろそろ失礼して、ジェントルマンをジョヴォワで回収してきます。本日はありがとうございました。

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すっかりご馳走になりました 左からサイモンさん、タヌ、ケイトさん、アマンダさん。エレナーさん撮影
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 3年前ロンドンでお話を伺った時「公式サイトがリニューアルする」とエレナーさんから伺っていましたが、幾度かのマイナーチェンジを経て、元々眼福だった公式サイトが、更に見やすく美しくアップデートしました!更に、イギリス国内のみではありますが、ブランドの悲願であったオンラインストアも開設。旗艦店であるフォートナムズ&メイソンでも、予め在庫を伺っておかないと手に入りづらい、クラシック・コレクションのパフューム50ml・100mlサイズを始め、取扱店でもなかなか在庫していないロイヤルコレクションのパルファム、3本セット各種(クラシック・コレクションのパフューム10ml、同EDP50ml、ブラックレーベル・コレクションの10ml)など、眩しい限りのラインナップです。たとえ日本に発送してくれなくても、例えばご自身やお友達が渡英する機会があれば、グロスミスに問合せの上在庫を確保してもらい、フォートナムズで受け取れなくても、イギリス国内なら全国どこへでも配送無料なので、宿泊先に届けてもらい、持ち帰るという技もありですよ!まずは上のブランドロゴをクリックして至福の公式サイトに飛び、目の保養を存分にお楽しみください。
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リニューアルオープンした公式サイトにはブランド念願のオンラインストアも併設(写真は公式サイトより)
 
*国民的デパート、マークス&スペンサーの系列で、食品に特化した準高級コンビニ。日本でいったら成城石井クラス。イギリスでは鉄道主要駅のコンビニとしても全国展開している。コンビニの方はメインとサイドディッシュ各2人前で£10だが、本丸のマークス&スペンサーでは現在メインとサイドの他にデザートとワイン迄ついて更にお得なDINE IN FOR TWOを展開中。もう外食は要らんですな
**クラシックコレクションEDPに一般規格品として10mlボトルはない。クラシック・コレクションのパフューム3本セットや、ブラック・レーベルEDP3本セット、フォートナムズ&メイソン限定EDP、シルヴァン・ソングに採用。
 
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