La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Vanille d’Iris (2015)

オーモンド・ジェインはLPT開始当初からフォローしている質実剛健なブリテッシュブランドでしたが、ここ数年ベーシックなラインからフォーコーナーズ、フォーコーナーズ・インテンシヴォ、ブラックゴールドシリーズ、店舗限定品…と、適正価格が売りだったにもかかわらず有象無象のニッチトレンドに迎合して、どんどん価格帯が上がってしまいました。そんな昔からのファンから嘆きの声が上がったのか、このヴァニーユ・ディリスはOJとしては久々にベーシックラインからの新作となりました。他のベーシックライン同様EDP、メイドトゥメジャー(賦香率を50%まで選べるパルファム濃度)の2濃度、EDPは50ml(110ポンド≒16,500円) 120ml(160ポンド≒24,000円)と、メゾンブランドとしてはもはや良心的な価格帯で、10mlサイズのアトマイザーが4本入ったトラベルスプレィなら90ポンドで手が届きます(注:ただしこのトラベルスプレィは中身が変質しやすいので、早めの使い切りをお勧めします。以前サンパキータのトラベルスプレィを購入し、使用途中のアトマイザーの中身が1年ほどで傷んでしまった苦い経験があります)。

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ヴァニーユ・ディリス EDP 120ml
ヴァニーユ・ディリスは、一連のOJ製品を担当したゲザ・ショーンが調香していますが、この調香師さん、ご自分の看板ブランドでは合成香料を1種類薄めて香水にして一躍有名になった方ですが、アンチパフュームの人ではあっても他所での仕事の方が作品数が多く、一見アンチパフュームとは縁のなさそうなオーモンドジェインとクライヴ・クリスチャンのお抱え調香師でもあります。要は「どんな要望にも答えられる、バランス感覚にたけた腕の確かな調香師」なんだと思います。

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もともとオーモンドジェインには、アイリスを主題にしたオリスノワール(2006)がありますが、わざわざ主題がかぶるものを、同じベーシックラインで出してくるとは、頭がヴァニーユなだけにさぞヴァニーユディリスはバニラが効いて、粉甘いんだろうな…と期待度満々で、昨年リアンヌさんのお店で初めて試香させてもらった時「あ、あれ?」と思い、そのままスルーして帰ってしまったのですが、そんな私の後ろ姿を見逃さなかったリアンヌさんから今回じっくり試す機会をいただいてわかったのは「運転手はイリス、バニラの車掌は後ろにいる
けどワンマン運転」という名は体を表さない配合バランスで、バニラ度は堂々ゼロ。どうも高価な天然バニラオイルを使用しているのが自慢のようですが、高い原料だけに気持ちだけなのか、非常に存在感が薄いです。それよりもアイリスがモリモリに入っていてシダーウッドと共に炸裂、オリスバターだって高いだろうに、運転手の超ワンマン運転に驚きます。さらにはおなじみの“OJトーン”、フルーティなジャスミンに最近流行りのオスマンサスが加わりフルーティ度アップ、このキンモクセイが結構主張するので、自分の国でキンモクセイが咲かないヨーロッパの流行りモノ好きは大喜びではないでしょうか。名前はヴァニーユ・ディリスですが、香りのイメージとしては「オスマンシリス(Osmanthiris)」と呼びたい位です。
 
かなりローファットな香り立ちで、非常に拡散の穏やかな岩清水系なので、男性でも心地よくお使いいただけます。気持ちを立ち上げるというよりは鎮静効果の方が高く、神経を刺激せず心身を緩ませる香りですので、かなり良質の普段使いとしてお勧めです。やはり、オーモンドジェインのベーシックラインは、いずれも良い意味で「無理がない」「飽きがこない」「使いやすい」のが信条で、このヴァニーユディリスも解せないのはその名前だけです。そしてヴァニーユディリスの控えめな魅力として、香りの中に甘さはなくても、自分の体温を美しい温かみに変えてくれる力があり、朝つけて夕刻に感じる体温であたためられた空気の澄んだ温もりが心地良く、そこにバニラの存在を見ると言えば車掌の顔もたつと思います。エルメスのイリスのような最後まで甘さが主張しない「材木系イリス」が好きで、もう少し複雑な香りをお探しの方にはピッタリです。個人的にはもうあと少しのボリュームがあってもいいかなと思いますので、機会があれば賦香率マックスましましのパルファム濃度を試してみたいところです。

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お求めの際は、この秀逸なスプレイヘッドを堪能できるフルボトルをお勧めします

余談ですが、実はオーモンドジェインはこれまでほとんど肌で試香する機会があり、気に入ったものは購入もしてきましたが、2、3年前にボトルデザインが変わってからのEDPフルボトルは初めてで、このボトルのスプレィヘッドが秀逸で、一般的なアトマイザー式のボトルでスプレィヘッドを押すと「シュッ、シュッ」とミストになると思いますが、オーモンドジェインのEDPボトルのヘッドは押すと「シュウゥ、シュウゥ」と、非常にミストが細かく、エアゾールのようなミストで香りを纏えるので、このスプレィヘッドのおかげで香りがより細かい粒子となり、香りだちが柔らかいのかもしれません。トラベルスプレィのヘッドは所詮詰め替え用の安価なスプレィですので、もしご予算が許すようでしたら、フルボトルでのお求めをお勧めします。

 
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