- LPT on tour Groningen -
フローニンゲン第1日目
午前中にはフローニンゲンへ着こうと、普段の出勤時間位の勢いでロッテルダムを後に出た。開店前のリアンヌ・ティオ・パルファムを通りがかり、最敬礼しながらロッテルダム中央駅へと向かい、インターシティに乗ること2時間半。前週までは嵐だったという、この季節の北オランダにしては珍しく天候にも恵まれた。フローニンゲン駅に到着後、ピュアディスタンス社を訪問する前に昼食を済ませ、荷物をホテルにおき、目抜き通りを抜けて歩いていく、つもりだったー
「これから社長が駅までお迎えに上がります」
えっ、迷惑かけないように迎えは要らないよ、ご飯食べてから歩いていくね、ってさっきメールしたよね?想定外の展開で心の準備が間に合う前に、すでに駅舎では車を横づけの社長が待っていました。
- 社長直々にお迎えくださいまして、恐縮です。
社長「これからオフィスへ向かう。ちょうど君に会わせたいゲストも来ているんだ」
- そうですか。どなたか存じませんが、よろしくお願いします。
社長「君が前回来てくれてからの1年は、この業界も見ていて残念なことが本当に多かった。最初は志をもって始めたブランドも、商売あがったりで手放すか、美味しく育って売り放すか…最近のフレデリック・マルのボトルを見たかい?もはや調香師の名前など、入っていないものすらある」
- エスティローダーに買収されてから、リネンスプレーだのハンドクリームだの、高級トイレタリーか?的な新商品がどんどん出てくるので、買収とはこういう事かと考えざるを得ません。
社長「マルちゃんは、魂を売ったな…」
- 車中、会っていきなり手厳しいですね。
程なくオフィスにつくと、チームの皆さんが私へのお土産を用意し、総勢で出迎えてくれました。本年4月に来日し、浅草で買ったはっぴを羽織って出迎えてくれた営業主任のネラさん、同じく来日時そのイケメン女子っぷりで女性ファンのハートをゲットした映像・ソーシャルメディア担当のイリスさん、昨年の訪問時お会いした直販担当のメアリさんと、今回初めてお会いする専属イラストレーターのロビンさん、イリスさんの妹でプロモーション担当のタマラさん、ウクライナ出身の海外担当、アリーナさんの6名で、若くて活気のあるチームです。それもそのはず、オランダの大学都市としては最大規模のフローニンゲン市は人口の平均年齢が35歳と非常に若く、店主タヌの出身地・消滅可能性都市化した東京都豊島区と比べ、眩しい若さで溢れています。オフィスには、社長のお話通り、本来なら一介の極東野良狸が一生会う機会もないであろうアジアの要人・セントデコのチーワイさんもいらっしゃいました。
社長「チーワイ君、この人いちおう日本の香水ブロガーなんだけど、それは仮の姿で、本当は爆音ロックスターなんだよ」
- 社長、初対面の方になんつう紹介ですか。チーワイさん、目を白黒させていますよ。ええと、日本の香水ブロガーは本当ですが、本職は一般の会社員です。
社長は今年もすごかった
訪問前、明日が社長の誕生日と伺っていたので、事前に郵便でバースデープレゼントを送っておきました。勤務先のボーリング大会(2000年1月開催)で撮った私の写真(下の写真上)をイリスさんが来日した時に見せたらバカ受けで、紙焼きを写メして帰るほど気に入っていたので、同じボーリングのピンがたまたまアマゾンで売っていたため、発作的に注文しイリスさん宛に発送、私がオフィスに行くまで開けずに預かってもらいました。サプライズで私が着て、社長に「ハッピーバースディ!」とお祝いするつもりでした。ところが社長が、
「ボーリングのピンじゃないか!!」
と言いながらおくるみを手に取り、あっ、社長自分で着ちゃった!と思った瞬間、レーンを爆走する球を交わしまくるボーリングのピンと化した社長が「ヒャッハー!!」「ヒャーッ!!」と叫びながら、社員の中央で激しくジャンプしたり転がったり、体当たりで喜びを表現してくれました(写真下)。社員は爆笑、チーワイさんはフリーズしていました。まさかの展開に出番を失いましたが、社長の英断に泣き笑いのオフィスは一気に場が和みました。和みすぎですね。
近所のデリからイリスさんが調達してくれたお弁当を皆でいただきながら、社長の進行で新作ヴァルシャーヴァの新旧イメージビデオを鑑賞、その後ビデオの感想など自由にディスカッションしました(ヴァルシャーヴァについては昨年のレビューに合わせ、明日の再考レビューをお読みください)。
ボーリング後、ランチの一コマ。アリーナさん(右手前)が頼んだお弁当を社長が間違えて食べてしまい、途中で気づき謝罪
左からヤン・エワルト・フォス社長、ネラさん、タマラさん、チーワイさん、タヌ、アリーナさん、ロビンさん、メアリさん。今回は殆ど自分で写真を撮っておらず、イリスさんが終始撮影してくれていたものを中心に掲載。ゆえにお目汚しながら当方の顔が散見しますことをお許しください
うちの商品は確かに高い、今でも商品が売れると驚く
社長「スイスに、テオドアという素敵な香水店があるんだ。先日テオドアを訪問し、小一時間ほどいた。その間、お客さんが3人来た。3人とも色々香りを試して、そのうち一人がピュアディスタンスを買っていったんだ。勿論その人は自分(社長)がそこにいるなんて、まったく気づいていない。うちの商品は確かに高い。それでも買ってくれた、しかも目の前で。本当に驚いたし、本当に嬉しかった。この気持ちを生涯忘れずに行こうと思う」
チーワイ「僕が関わっている中国のお店に、あるご婦人が来店して、すごく迷って結局お求めにはならなかった。数か月経って、その方がもう一度いらっしゃって、現金でお買い上げになった。本当に欲しいと思ったから、そのお客さんはお金を貯めて、また来てくれたんだ。ピュアディスタンスは、そういう魅力のある香りを作っている。僕が初めてピュアディスタンスに出会った時、まだコレクションは3つ-1、アントニア、Mだけだった。衝撃だったよー以来、Mは僕のシグニチャー・セントになったんだ」
社長「うちは今年創業10年になるが、いまだにどこからも融資を受けていない。100%無借金経営だ。どこからの横やりも入らない。だから、好きな商品を好きなように展開できる。会社を大きくしようと融資を受けて、どこかに資本提携してもらうと、銀行や融資先の顔色を見ながらモノづくりをしなくちゃならなくなる。それじゃ面白くないだろう?うちは一度に大量生産はできないし、しようとも思わない。それでいいんだ」
- その辺、初めてお会いした時から全然ブレませんね。香りを紹介する側も、自分が神輿に乗りたくて、何が主役なのか勘違いしている残念な人が多いですが、私はこれからも有名になるつもりは毛頭ないし、好きな香りを紹介して、書いた文章を読んだ方から「レビューを読んで試してみたくてたまらなくなった」「実際香ってみて、全くその通りだった」と言われるのを生きがいに、身の丈で続けていきたいと思います。
社長「君の読者も、君が決して自分を売りたいとか、有名になりたいとかそういう事を微塵も思っていないのが、君の文章を読んでわかるから、ファンになるんだろう。我々と同じだ」
- 最高のお褒めを頂き、ありがとうございます。
毎年作成する豪華カタログ。最初のカタログは1とクリスタル・コラムだけで1冊。まだa master perfumeと単数扱い
最新カタログのページと10周年記念ノート(左)、直筆サインを添えるカード(右)看板娘ネラさんのブロマイドも
ディスカッション後、社長がバックヤードを案内してくれました。ピュアディスタンスはこれだけオンラインビジネスが発達していながら、豪華な装丁のカタログや印刷物、何十種類ものポストカードを毎年作成し、社長とチーム直筆のサインを添え、心を込めて世界へ届けています。創業10周年を記念し、これまで公式サイトに登場した世界中の取扱店やブロガーがページごとに登場する保存版ノートブックもあります。超豪華クリスタル・コラムにも再会しました。
ピュアディスタンスのクリスタル・コラムとネラさんはドバイで大人気
そのクリスタル・コラムですが、本年4月来日した営業主任のネラさんは中東担当としても活躍、毎年取扱店をフォローアップする為出張しています。中でもドバイはピュアディスタンスにとって重要な市場。ドバイへ出張する際、ネラさんは手荷物にスワロフスキー社製のクリスタル・コラム(17.5ml用ボトルケース)を入れています。スプレィするたびちょっとした筋トレになりそうな、超ヘビー級のクリスタル・コラムを毎回大事に手荷物で持込むネラさんも大変ですが、面倒なのがこのクリスタルガラスという素材。こんなに透明度が高いのに、X線を通さないって、知ってました?
通常、クリスタルガラス(鉛ガラス)には24%酸化鉛を含有していますが、スワロフスキー製品は酸化鉛の含有量が32%とフルレッド・クリスタルガラス(Full lead glass)の中でも特に含有量の高い最高級品を使用しており、透明度の高さとは真逆にX線を完全に遮蔽します。そのため保安検査場ではクリスタル・コラムがX線検査で真っ黒な金属隗と誤認され、手荷物を検査官の前で開封するはめになるのですが、クリスタル・コラムはドバイで大人気の為、空港でも知っている方が多いそうで、コラムが出てきた瞬間「なんだ、ピュアディスタンスのネラさんじゃないですか、ワッハッハ、ワーッハッハ」と毎年顔パス状態。既に保安検査場の人気者ネラさん、ドバイでは「クリスタル・コラム=ネラ」の紐付け完了。
左から/上段:タマラさん、ヤン・エワルト社長、ロビンさん、チーワイさん。下段:タヌ、ネラさん、メアリさん
記念撮影してくれたイリスさん(中央)、ネラさんと。この二人が4月、東京に来てくれました
昨年同様、本社玄関で記念撮影をしました。今年はチームの皆さんとチーワイさんも一緒です。この翌日、社長とチーワイさんは、ジョヴォワのオープニングパーティに参加すべく、ロンドンへと旅立っていきました。ホテルへは再び社長が車で送って下さいましたが、後部座席にはしっかりボーリングのピンが投げ込まれていました。
フローニンゲン第2日目
チーム全員で猫カフェランチ
猫カフェ店内。しかし何だろね、このイケメン女子っぷり
今回フローニンゲンには2泊し、2日目もオフィスにお邪魔しました。「じゃ、みんなでお昼食べに行こう」と、出勤していたチーム全員で向かったのは、なんと猫カフェ。訪れたのはPoeslief 。去年の10月にオープンした、8匹の猫と猫ママさんがひとりのこじんまりとしたお店です。
フローニンゲンにはもう1件、メアリさんがセカンドハウスと呼ぶほど通い詰めているOp z'n Kop もあり、徒歩圏内に2件も猫カフェがある街ってどんだけ猫好き!去年初めてピュアディスタンス社を訪問した際、全員猫好きで大変盛上り「今度来たら猫カフェ行こうね」とメールで念押しが来たり、来日時も吉祥寺の猫カフェへ一緒に行きましたっけ。血統書猫の品評会みたいだったり、スタッフが常に臨戦態勢で、おいたな猫に対し金切声をあげる日本の猫カフェと違い、そこに居るのは全員駄猫。ダウンライトの広いリビングで沢山猫を飼っているお家に呼ばれた感じのゆるーい感じが心地よく、タマラさんの膝に乗ったまま眠りこけて降りない猫、ネラさんの鞄から落ちた名刺にじゃれまくる猫、猫ママさんに向かって鳴きまくりの猫、常に脱走を試み続ける猫…と、女子6名(うち中年女1名)で楽しいひと時を過ごしました。
マティーニタワー頂上踏破
ランチ後は一旦オフィスに戻った後、ネラさん(写真左)とイリスさん(右)がフローニンゲンの名所、マティーニタワー(Martinitoren )に案内してくれました。タワーといえば頂上踏破。日本でいったら大仏胎内巡りみたいな、タワーのてっぺんまで石造りのらせん階段を登る事260段、階段は何か所か区切り地点があり、思ったほどでもなかったですが、高所恐怖症の私は外が見える要所要所でひぃぃっ!ひぃぃっ!!と縮み上がりました。街が一望できる頂上展望台から「あの建物の後ろが会社よ」
遥かなるニッポンはどっちだろう…思えば遠くへ来たもんだ、よく来たな私、そして今年はよく来たね2人、とちょっと胸が熱くなりました。
ネラとイリスのフローニンゲン大好きめぐり
タワー踏破後、フローニンゲンの中心街をブラ歩き。去年は史跡を中心にネラさんとメアリさんが案内してくれましたが、今年はお土産でもお人形(冒頭の写真)をいただいた、全蘭で大人気の猫キャラ・ディッキーディック( Dikkie Dik 、オランダ語で「デブッチョブー」みたいな意味)のブックストア、9月中旬から年末まで期間限定オープンする、オランダ伝統のクリスマス菓子・ペッパーノーテンのお店ファン・デルフト(Van Delft de Pepernotenfabriek 、写真上)や、一休みに立ち寄ったスムージー店、スムーズ・ブラザーズ(The Smooth Brothers 、下左)、2人が大好きなフローニンゲン名物のソーセージとチーズ店、デ・カースコップ(De Kaaskop 、下右)など「ネラとイリスの大好きめぐり」を満喫しました。オランダ最大の大学都市フローニンゲン、もし何かの機会で足を運ぶ事があったら、今回ご案内したお店はどこもお奨めですので、是非寄ってみて下さいね!
街歩きの後はホテルで休憩後、ネラさんのご自宅にお招きいただき、ご出身のエストニア料理をご馳走になりました。東京、というか日本にはエストニア料理店はないので、ちょっと想像できませんでしたが、一緒にいたアリーナさんが「これ、ウクライナでも食べる」「これうちでも作る」と度々言っていたので、近似値としてはロシア料理に近く、ビーツのサラダ(お皿左上)、ネラさんのお父さんが山から採ってきたキノコとジャガイモのパイ(手前)など、野菜と魚中心でチーズやクリームを多用した、お腹の温まる優しい味のお料理ばかりでした。
最初から最後までお世話になりっぱなしだったフローニンゲン滞在、ああ楽しかった。皆さんありがとうございました!
※明日はダッチホリデー最終回、いよいよ世界発売となったヴァルシャーヴァの追記レビューをお届けします。