La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

無断転載禁止

Lumiere Blanche (2012)

立ち上がり:今まで嗅いだことの無い香り。ケミカルなようなそうでないような・・凄く特徴的だがなんだろこれ?シトラス系でもない。甘い感じは強烈、あとアルコールが強いのか
鼻にツーンと刺激がくる!
昼:重い感じだが甘さが薄まり少し香辛料みたいな香りが出てきた。
15時位:こいつも最初の重さに比べると減衰が早いような。大分落ち着いてきてウッド系の香りが出てきました。
夕方:かなり薄まりましたが全体的には重いな・・・私には荷が重いかも。かなり個性的なんで好印象ではありますが
ポラロイドに映ったのは:Manchester widworth locke横のゲイストリート(誰も知らんたとえですが、たぶん画像での補填があるでしょう)
 

f:id:Tanu_LPT:20200322172434j:plain

ルミエール・ブランシュ EDP50ml 国内販売価格16,500円
Tanu’s Tip :
 
モダンアートと香水の融合として2011年登場したオルファクティヴ・ステュディオは、香水業界に身を置いたディレクターのセリーヌ・ヴェルリュールが、自身のブログで「架空の香り」について自由な意見を交わしながらイメージングを重ねて生まれたブランドです。日本ではフォルテが代理店で、昨夏ノーズショップでもポップアップ販売されました。今回ご紹介するブランド中、唯一現行日本発売のあるもので、店頭でお試しになったり、実際にお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
 
セリーヌ女史が香りのコンセプトとして昇華させたイメージを、①まずタイトルとして言葉にし ②その言葉のイメージを写真家に写し撮らせ ③更にその写真を調香師が香りにする、という三段活用で生まれたオルファクティヴ・ステュディオの作品は、まさに香りのアート。香りから得たイメージをポラロイドで可視化するジェントルマンコーナーとは真逆のプロセスです。さてその香りのアートを、コンセプト上等のシャレオツでアートな世界とは極北にいるLPTがブログで紹介すると、どうなるか?鯉の滝登り、または鮭の遡上?

f:id:Tanu_LPT:20200329193054j:plain

ルミエール・ブランシュの中に入っていた写真。マッシモ・ヴィターリ撮影

今回ご紹介するのは、2012年に発売されたルミエール・ブランシュで、キリアン作品を数多く手掛けるロベルテ所属の女性調香師、シドニー・ランセシュールが、写真家マッシモ・ヴィターリが撮影した風景をイメージングした作品です。ハイキー過多でハレーションを起こした、氷河とも岩場ともつかない海岸に、水着姿の行楽客が山盛り映っている、夢か現か判らない
写真のカードが、香水と一緒に入っていました。この香りのコンセプトは「寒暖差」。だから氷山の上にホットな海水浴客みたいのがうじゃうじゃいるわけです。香りとしては、実装直後は「混ぜるな危険!」な違和感で始まる立ち上がりが、胸にグッときます。サンダルウッド的な何かに、変なものが混じっている。そこによく冷えたアーモンドミルクがオーバーラップしてくる。枕で言ったら、極小ビーズの中に、何かとんでもなく硬いものが混じっていて、イテっ!という感じです。なんだこれ、なんだ…と思っているうちに、半減期の短い放射能のように、あっという間に香りが和らいで、杏仁豆腐感のある肌馴染みのよい甘口のウッディムスクに変化。この「なんだこれ」の正体は、香調を見るとカルダモンとスターアニス。カレーの主役と八角でしたが、それも渾然一体と混じっているから「なんだこれ」以上の体感に繋がりません。これが個性というなら個性です。持続は前回ご紹介したニルヴァーナブラックと似たり寄ったりで、わりとすぐに肌の上でスキンセントになりますが、その時すでに「なんだこれ」感は消え、普通に人肌の柔らかさを感じて「あれは何だったんだ」で終わります。サンダルウッドにカルダモンやスターアニスと杏仁豆腐が加わった、個性的なサンダルウッドをお探しの方にはおすすめです。
 

f:id:Tanu_LPT:20200322172430j:plain

濁ってる
香りはさておき、私が一番気になったのは、このルミエールブランシュの水色。まるで入った後の湯船に間違って石鹸を落とし、残り湯で溶けて濁ったのを「あれ、お父さん昨日濁り湯の入浴剤でも入れたのかしら」と翌日うっかり追い焚きして大惨事になる日本の風呂事情が、私の脳内カメラにははっきりと写りました。この中途半端に濁らせた香水の成分表には可塑剤(プラスチックに添加し柔軟性を増すための物質)の一種であるフタル酸ジエチルと、液体の不透明化剤である(スチレン/アクリレーツ)コポリマーが添加されており、作品イメージのためとはいえ、香りを作り出す為になくても良い可塑剤や不透明化剤を入れてまで、ルミエールでブランシュな世界をボトルに閉じ込めなくてもいいのに、と不思議に思いました。
 

f:id:Tanu_LPT:20200329194032j:plain

マンチェスターのゲイ・ヴィレッジ。ジェントルマン撮影

そんな香りを遡り、ジェントルマンが写しとったポラロイドには、マンチェスターの有名なゲイ・ヴィレッジ、GーAーYの字が眩しいCanal Streetが登場。陽の高い時分には、ただの小汚い飲み屋ストリートですが、一度日が暮れるとギラッギラのゲイストリートに様変わり。一見普通のカフェにはレインボーフラッグが棚引き、そこはゲイのハッテン場であることがわかります。昨秋ジェントルマンとマンチェスターを訪れた際、素足で立っても180cmは絶対ありそうなオネエマンが、KISSもビックリな厚底ブーツを履いて客引きする横には屈強なガードマンが仁王立ちするクラブなど、一般人御無用な空気に満ち溢れていました。でも何故それがルミエールブランシュに繋がるのか?さあ、それは香りから可視化された世界。プロセスを逆回しにしたら似ても似つかない別物になりましたとさ、どっとはらい。
contact to LPT