La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Sandalo (1995)

A Gentleman Takes Polaroids Chapter thirty two : Sandalwood Gentleman
 
立ち上がり:噎せかえるような木の香り。というか鉛筆の削りカスに匂いだ。いや・・嫌いじゃない。好きな香りだ。
昼:木の香りの中から微かに甘い香りが出てきた。少し重い感じだがまあこれもよし
15時位:最初の香りの強さからは意外なほど減衰が早い。もう微かにしか香らない。
夕方:消滅。むー もう少し持ちがよければなあ・・・・
ポラロイドに映ったのは:見た目頑強そうだが、木を一本倒すまでに何回も休憩をとる木こり。モンティパイソンに出てきたゲイの木こりの感もある。
 
Tanu’s Tip :
 
今週で年度末を迎える企業も多い3月末、前回は年末で懐寒い皆様を励まそうと奮い立ったジェントルマン、諸々忙殺の中3ヶ月ぶりのジェントルマンコーナーとなった今回までのたった数ヶ月の間、世界は見えない敵との全面戦争に突入してしまいました。この原稿を書いている時点での現況は、タヌ)勤務先がテレワーク対応に間に合わず、とりあえず有休消化で年度末まで自宅待機奨励のため、いきなり週明けからやる事がなく自宅でタヌワーク ジェントルマン)勤務先の指示で時差通勤、時々テレワーク。結構早い段階から取り組んでいたが、息切れしたのか今週以降の指示なし、よって明日から通常勤務という、有事に真っ向反発状態 ハン1)元々在宅ワーカーのため、特段の影響なし。通常運行でだいたい家で映画を見ている…ざっとこんな状況です。
 
12月は懐寒かったけれど、3月は先が見えず心が寒い…そんな方も多いでしょう。そんな時には香木の力を借りて、心安らかに嵐が過ぎるのを待とうと思います。香木といえば、沈香と白檀。中でも白檀はお線香から中華扇子まで、結構身近な香りです。お線香のランクでも、白檀の最高級品は沈香よりまだ値頃。香料の世界でも、マイソール産だのオーストラリア産だの産地指定をしなければ、希少性が上がっているとはいえ、ウード香料よりは高値を張らないところを見ると、素人考えですが、サンダルウッドの方がまだ身近な存在に思えます。サンダルウッド精油の主な効能はズバリ「鎮静」。神経系の興奮状態、呼吸器や感染症など、身体の炎症を鎮める力のある香りです。たとえ今月のラインナップがたまたまタヌ家にあったものを3本かき集めてツモっただけではない、運命の必然を感じます(嘘)。

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サンダーロ EDT100ml 現在はヴィンテージ・コレクションにラインナップ
まず最初にご紹介するのは日本撤退して久しいイタリアはフィレンツェの巨匠、タンドネージュでお馴染みの「らりるれおじさん」ことロレンツォ・ヴィロレーシの初期作品で、現在はヴィンテージ・コレクションに収録されているサンダーロです。少し前までは日本語サイトもあったロレンツォ・ヴィロレーシですが、最近公式サイトが刷新され、ウェブ版では伊・英・仏・独の4カ国後に集約、スマホ版では日本語はおろか多言語対応もなくなり、イタリア語のみになってしまい、ここにもナショナリズムの影が…という割には、あっさり送料27€から日本配送対応と、その辺りはおじさんの良心を感じます。そもそもロレンツォ・ヴィロレーシはイタリアでは全国のデパートで購入可能な有名ブランド。そしてEDT 50mlで80€台という適正価格で、広くヨーロッパで定番人気を獲得しています。そしておじさんのもう一つの強みは、世界のラグジュアリーホテルがアメニティに採用している事。ドバイ旅行の際、アメニティがロレンツォ品だった、なんて方もいらっしゃるのでは。
 
前置きが長くなりましたが、このサンダーロも巨匠の腕が光る、シンプルで奥行きのある材木感がたまらないサンダルウッドソリフロール(シングルノート)で、生木たっぷりのサンダルウッドで出来た花器に、心安らぐラベンダーやローズ、ネロリのブーケを投げ込んだ、生木たっぷりのサンダルウッドでできた花器が、1日中リビングで薫るような寛ぎ感。ミドル以降は、控え目にブレンドされた温かみのあるアンバーやオポポナックス、ラブダナムとオークモスがクリーミーに肌へと溶け込んでいきます。難解な高尚さも、突出した華やかさもないけれど、人工的な軋みは一切なく、男女を問わずシンプルに美しく香る白檀香として今回1番のおすすめです。子供の頃、台湾の親戚からお土産でいただいた白檀扇子であおいだ夏の思い出など、朗らかな気持ちになるのも大きな理由の一つでしょう。
しかしながら、ジェントルマンのポラロイドに映ったのは「木を1本倒すのに何度も休む木こり」。サンダーロはEDTですが、拡散性が控え目なのと、10プッシュくらい全身満遍なくつけると、朝から寝るまでふわふわと香りが長持ちするのですが、数プッシュだと本量を発揮しないため、その辺の匙加減は「前情報なし、全身6プッシュ」が基本ルールのジェントルマンコーナーなので、弱腰な木こりが映ってしまいました。ちなみにモンティパイソンの木こりネタ、Lumberjack Songでは、木こりの女装癖を合唱団に暴露されて終わるのですが、ゲイと女装は違う次元の話ですよね。
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