La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Ambre Narguire (2004)

立ち上がり:あまーーーーーい!子供の頃飲まされた咽喉シロップ系の飲み薬を思わせる甘さだ…キツイなあこういうの。
昼:甘いままですが付けはじめの頃のような嫌な感じは消えた。まあ私には似合わんけど。
15時位:甘い印象から後、背景のアンバーの香りが押しのけてきたかな?
夕方:でもやはり甘い香りだ 似合う奴はいるんだろうが自分のそばには居てほしくないな。
ポラロイドに映ったのは:場違いなパーティーに乞食のような恰好で混ざりこみイケメンに蹴りだされる自分
 
Tanu's tip :
 
アンブル・ナルギレは、マスター・パフューマー、ジャン=クロード・エレナ師がエルメス専属調香師に就任後、2004年からスタートした販路限定高級ライン、エルメッセンス・コレクションより、コレクション第一弾としてローズ・イケバナ、ポワヴル・サマルカンド、ベチバー・トンカと共に発売された香りです。エレナ師はこのシリーズで、それまで調香に用いられてきた、数多ある香料を極限まで削ぎ落とし、数種~数十種で構成するという、とかく処方した香料の数を競い合う、それまでの香水の価値観を根幹から覆した事でも知られています。エルメッセンスのコンセプトを50文字以内にまとめると、①男女問わず②単品でもレイヤリングでも使えて③希少な香料を使い、シンプルに仕立てた極上の香り、みたいなところですが、個人的な感想は「どれも薄い」で、何も試しても①男女問わずというよりは性を感じず、どこかあと一つ物足りず②単品でもレイヤリングでも、と気軽に提案されてもおいそれと受け入れがたい価格帯(国内価格:EDT 100mlで33,480円、2018年1月現在)ですが③香料をあれこれ使わずに素材の良さを極限まで引きだすという、ミニマリズム的な匠の技が今一つよくわからないという、まさに狸に小判状態なのに、この場で取り上げても良いものかと逡巡しましたが、たまたま大きめのメーカーサンプルを入手したのと、今月のお題が「アンバー・ジェントルマン」だったので、ジェントルマンにお願いする事にしました。 

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アンブル・ナルギレ サンプル 背景は「フォーブルのグランプリ」柄のカレ(正方形スカーフ)を模したエルメスの2018年ニューイヤーカード、ツイリー発表会に代理参加したご縁でLPTにまで送ってくれました

「水タバコのアンバー」の名を持つアンブル・ナルギレの「ナルギレ」とは、シーシャとも呼ばれ、香りづけして蜂蜜で練り固めたタバコの葉を墨などで熱し、あがった煙を水を通して吸込む中東の水タバコ、ナルギレに由来します。ナルギレのフレーバーは多種多様で、フルーツからスパイス、ハーブ、お菓子のような甘いものまであります。専用の水パイプを使うのと、1回吸うのに1時間くらいかかる為、自宅でたしなむというよりは「シーシャ屋」と呼ばれる専門店で吸うのが普通です。東京にも数件シーシャ屋がありますので、見かけたら是非お試しください(一応煙草なので成人指定)、数年前に自由が丘で一軒開店前のシーシャ屋を見かけた事がありますが、背の長い1人がけソファの横に中東然とした水パイプが並んでいて、異国情緒たっぷりでした。

 
【ケース入り】シーシャ・水タバコパイプ お洒落なパンプキン型ミニサイズシーシャ【ブルー】
ナルギレ アマゾンで売ってます
 

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香りとしては、確かに甘い。紅茶でいったら、元々甘い香りのフレーバーティに蜂蜜ガンガン入れて飲んでる甘さの寄り切りを感じます。レジンの甘さ、蜂蜜の甘さにアンバー本来の持ち味が押され気味で、このグルマンな甘さは男性には辛かろうと思いますし、シブいアンバーの風情というよりは、ナルギレの雰囲気を前面に出したかったのかな、と思います。
そして何よりこのアンバーが水っぽい。この「水っぽさ」は、ある意味エルメッセンスに共通する薄口ミニマリズムの本懐なんだと思いますが、持続は持って3,4時間といったところで、気づいたらオリエンタル系の香りにも拘らず、肌の上にはもういない。消え入り方の潔さに匠の技を感じます。確かに、本当に名前の通り「水タバコのアンバー」なんですが、甘くて上品なだけの水っぽいアンバーは鈍感な私の鼻には少々物足りない。少し毛が生えていたり、よだれを垂らしている位がちょうどいいと思うのは、漬物に醤油をかけて食べないと気が済まない、体が欲しがる寒冷地の味覚障害に近いのかもしれませんが、寒冷地出身のジェントルマンが「アンバーは、シャレオツよりも満足度!」といいかけて、イケメンにけり出される瞬間が私の脳裏にもよぎります。逆に言えば、アンバーの重たさが苦手で、透明感のある軽やかなグルマン寄りのオリエンタルアンバーをお探しの方にはお奨めです。

 

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