La Parfumerie Tanu

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Le Rivage des Syrtes (2009)

MDCIの香りをレディスについては全紹介すると決めて始めた投稿ですが、
こんな事を申し上げてよいのか、迷いの上紹介します。

ゲラン家の血筋である女性調香師でパルファン・ド・ニコライの主宰、
パトリシア・ド・ニコライがMDCIの依頼にて制作した二つの香りのうち
フランスの小説家、ジュリアン・クラックの小説「シルトの岸辺」から
名づけられたル・リヴァージュ・デ・シルトは、公式ウェブサイトでは
最高級の天然原料を使用したフローラル・オリエンタルとありますが、
申し訳ないのですが正直なところ香水に期待する1.つけ心地のよさ2.立ち上る
香気3.髣髴するイメージの世界、このどれもが満ち足りない、何とも所在の
ない居心地悪さを感じるフルーティ・フローラルのようで、これまで幾種類
もの香りを試してきましたが、ここまで表現のしがたい香りはなかったように
思います。己の表現力のなさ、香りに対する理解のなさに落胆します。

パイナップルとオレンジのフルーツバスケットのようなフルーツ様の
香りで始まるのですが、何故かそれが美味しそうというよりは、果物の
様に感じるが実際は別の未確認物体から発せられる「匂い」のようで、
これが徐々に言わんともしがたい所在なさに変わっていき、弱弱しく
展開していくうちに「何の匂いかわからないけど、落ち着かない」要素が
くるくると幾つも顔を出すので、常に意識が「知らない匂い」に引き込ま
れていく感覚が、所在なさの原因なんだと思います。何だかわからない所は
しかたないとしても全体としての雰囲気は浮足立つところがなく上品で、
ベースにはマダガスカルバニラ、希少なアンプレットシード、最高級の
ムスクを使用しているとの事ですが、そんな良いものを使わなくてもよいから、
もっとわかりやすい香りの方がいい、と、「香水は、いい香りでなくては
ならない」とこれ以上の遺言はないと思うギィ・ロベールの名言を噛みしめます。

正直申し上げて、2回試して2回とも同じ印象でした。また、残念ながら
肌につけるとタッチアップした形に蕁麻疹が出ましたので、本当に自分には
合わない香水なのだと思います。申し訳ありません。降参です。
 参りました!!

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