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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Reckless (2011)

2007年初出のトリロジー・シリーズの成功から5年、ロジャ・パルファンのラインナップも徐々に増え、現在ではレディスとしては8種類(フローラル系4種、シプレ系・オリエンタル系各2種)に増えた中で、個人的に最も気に入っているのが2011年に発売されたレックレスです。

「向こう見ず、身の程知らず」という意味のレックレスは、超ストライクゾーンど真ん中のフローラル・アルデヒド系で、デッチマ(1953)を皮切りに、マダム・ロシャス、クリマ、カランドル、リヴ・ゴーシュ、ファースト、そしてゴールがアムアージュ・ゴールドといった、戦後高度成長前期のグリーンが合流してくる快活なフローラル・アルデヒド系名香へ、全身全霊を捧げたオマージュとなっており、この1本さえあれば、ヴィンテージボトルとの闘争(出物の争奪、劣化との闘い)も、痩せた現行品への欲求不満も一挙に解決してくれる、まさに「タイムレスマシン」とでもいうべき逸品で、アルデヒド好きにはたまらない1本となっています。特にデッチマ、マダムロシャス、ゴールド辺りが好きな方には動いた食指が止まらないでしょう。シトラスノートがアルデヒドに乗ってスパークし、王道フローラルであるローズドメ、グラース産ジャスミン(ロジャ作の場合、何故かジャスミンだけは「グラース産ジャスミン」と産地から書くのが仁義)、イランイランの甘い体幹にアマリリスとゼラニウムが加わるため、グリーン寄りのさわやかさが持続し、ベースノートとして挙げられているアニマルノートやレザーノート等は殆ど感じず、背筋が伸び開放的で爽快なミドルノートが延々と続く感覚です。「向こう見ず、だけど決して馬鹿じゃない」('reckless maybe - foolish never') とは、よくこの香りを現したキャッチコピーだと思います。

EDPとパルファムは、香りにほぼ違いはありませんが、香り方が全く違います。EDPはたいへん柔らかくライト、パルファムはしっかり腰の据わった湧き立ち方をするので、どちらか1本となれば是非パルファムをお奨めします。またはぜいたくですがEDPをアンダーに、パルファムをポイント付けすると一層美しく、一日中香り持ちを楽しめます。

ハロッズのロジャ・ダヴ・オートパフューマリーでは、ロジャ作香水のテスターは店頭にパルファムしか出していないのと、基本的にこの店は対話式サロンなので、モノトーンでキメた熱烈な男性店員が入店と同時につきっきりで次々とムエットを出しながら「ふだんどんなお香りがお好きかしら」「お奨めはこれよ」「これが新作。ロジャはどれも素晴らしいわ」「奥様にはこれが一番お似合いだと思うわ」とパルファムの試香だけで話を進めるので、予算の都合でEDPを購入しても(勿論在庫もあるし売ってはくれますが「え?いいの?」という顔をされました)後でどうしても、あのめくるめくアドバイスが残香となってフラッシュバックし、パルファムも欲しくなるという蟻地獄に陥ります(陥りました。後日通販にてパルファムを買い直しました)。香りの作り方が古き良き時代のパルファムがそうであったように、まずパルファムありきで、EDPはパルファムの下地にしか考えていないのか(著作でもEDPやEDTは、本来はそれ単体で使うものではない旨書いています)「軽くて一番つけやすいですよ」と一番薄い濃度から奨める日本のBAさんとは違い、パルファムだけで試香させ「EDPもあるわよ」とは一言も言わない売り方は、経済的にはたまらない話ですがクラシック香水好きには別の意味でたまらないひと時となりました。お陰様で高額な商品を立て続けに購入してしまい、その後の経済に大きく影を落としております(笑)まさに身の程知らずの向こう見ずです。

「あら、レックレスになさったのね、私も奥様に一番お似合いになると思ったのよ」そういって、最初に試香させてくれた男性店員に見送られながら、サロンを後にしました。

 

2012年春、お店で頂いたボトルは、まだダイヤモンドボカンではありませんでした。本体は同じですが、頭はただのガラスキャップです。奥様ぁ〜。

first post : 13 Nov. 2012

公式ウェブサイト

パルファム購入先:First in Fragrance(独)