La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

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Cabaret LPT vol.11 Jean Patou | Voice of nothing / introduction

今回のキャバレーは、皆様ご承知の通り、近代香水史を代表するブランド、ジャン・パトゥの弔合戦です。本来は前回のアラブキャバレー以降、本年中の開催はしない予定でしたが、偉大なるブランドの消滅を目の当たりにして、いてもたってもいられず、開催を決意しました。これから、香水ブランドとしての創業から消滅までの約90年間を総括させていただきます。その前に、ジャン・パトゥに哀悼の意を表し、1分間の黙祷を捧げたいと思います。ハン1さん、お願いいたします。(1分間黙祷)黙祷終わります。
 
それでは、本題に入る前に、ジャン・パトゥの創業から消滅までと、専属調香師の変遷を、ざっくりご紹介します。
 

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ジャン・パトゥ簡介


1887   ジャン・パトゥ、ブルジョワ革職人シャルル・パトゥと妻ジャンヌの長男として

   9月27日ノルマンディに生まれる

1893 妹マドレーヌが生まれる

1914   パリでアトリエをオープン、その後第一次世界大戦に従軍 

1919   退役後、1919年にアトリエを再開

   ココ・シャネルと同世代の売れっ子クチュリエとして時代の寵児になる

1925   香水部門設立、ブランド初の香水を発売(愛のトリロジー:3部作)

1927   世界初の日焼けオイル、ユイル・ド・シャルデ発売。避暑地バカンス客向けの

           水着やテニスウェアを発売、世界初のカーディガンなど最先端ファッション多数

1930   1929年に勃発した世界恐慌を逆手に取り、富裕層向けに「最も高価な香水」

   ジョイを発売、大ヒット。同年米国支社を設立、アメリカでも大成功を収める

1936   3月8日、パリのジョージ5世ホテルで突然死 享年48歳

   パトゥ死後は、香水部門がブランドの屋台骨となる

1936-1979 実妹マドレーヌ、義弟レーモン・バルバス(1900-1983)が業務継承

1980〜2001 甥(バルバス夫妻の息子)のジャン・ド・モーイ・バルバスが継承

1987 ファッション部門が休眠会社となり、香水部門に特化する 

2001 P&Gがバルバスよりジャン・パトゥ買収

2011   SAデザイナーズ・フレグランスがP&Gよりジャン・パトゥ買収

2018 LVMHグループがSAデザイナーズ・フレグランスよりジャン・パトゥ買収、

   LVMH傘下のクリスチャン・ディオールがパトゥ作品の商標使用権を獲得

   同年夏に女性向けフレグランス、ジョイを発売。ジャン・パトゥ全作品廃番

2019   9月、ジャン・パトゥのファッション部門が休眠状態から復活

   ブランド名をパトゥと改名、若手デザイナー、ギョーム・アンリをプロデューサ

   ーに迎え、女性向けプレタポルテとしてリブランディング

 
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写真左上より時計回りに、アンリ・アルメラス、ジャン=ミシェル・ドゥリエ、アンリ・ジボレ(写真がなかったのでキャリーヌの広告より)、ジャン・ケルレオ、トマス・フォンテーヌ
 
専属調香師の変遷

初代     アンリ・アルメラス(1892-1965、73歳没)任期:1925~1948

※パトゥ作品の大半を手掛ける。代表作:ジョイ

1933年からは専属を離れるも制作継続、フラゴナールなど他社の調香も掛持ち

 

2代目  アンリ・ジボレ(1911-1966、55歳没)任期:1948~1966

※リュバンのジンフィズで有名 パトゥではオードジョイとキャリーヌのみ

【オードジョイ(1955)の翌年ギィ・ロベールがLasso(1956)を手掛ける】

 

3代目  ジャン・ケルレオ(1932~)任期:1967~1999ごろ

※ジボレ逝去により後任。代表作:1000、スブリーム

1984年、1925-1964年にわたるアーカイヴを「マ・コレクシオン」として復刻

1990年4月ロスモテーク設立、初代館長に就任。1999年の引退後ロスモテークに専念

 

4代目  ジャン=ミシェル・ドゥリエ(1961~) 任期:1999ごろ~2011

※専属就任の数年前からジャン・ケルレオと共作、代表作:シラデザンド

ロシャス専属調香師も兼任後、現在自身のブランドのオーナー調香師になる

 

5代目  トマス・フォンテーヌ(1966~) 任期:2011~2018

※P&G所属調香師を経て2009年独立。リュバン、ル ガリオンなど復刻系ブランド

の再処方を多数手がける。ジャン・パトゥでの新作はジョイ・フォーエバーのみ、

2013~2014年にコレクシオン・エリタージュとして9点復刻。

現ロスモテーク副館長(館長はパトリシア・ド・ニコライ)


◎明日より、 戦前に登場した作品を時系列で3回に分けてご紹介いたします。
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