かなり絵的に見苦しい後ろ姿のサムネイルでお許しください。戦後編の前半部分を、
インスタグラムでライブ配信しました。内容はほぼpostwar 1、postwar 2の部分です。
はい、それではここから1990年代、ケルレオ師が引退し、P&Gに買収されるまでの作品をご紹介します。スブリーム、ヴォヤジール、パトゥ・フォーエバーです。スブリーム以外はP&G買収で廃番になりました。
戦後4【ジャン・ケルレオ:90年代】
12 Sublime (1992) EDP Jean Kerleo, SA Designer Fragrance version, after 2011
13 Voyageur (1994) EDT Jean Kerleo, original circa 1990s
14 Patou For Ever (1998) P Jean Kerleo, limited version in 1998 *この頃からジャン=ミシェル・ドゥリエと共作
12 Sublime (1992) EDP Jean Kerleo, SA Designer Fragrance version, after 2011
スブリームは、1992年の発売から、2度にわたる買収、そして2018年のパトゥ消滅まで、すべての親会社を渡り歩いた最後の香りです。お試しいただいているのも、2011年以降のデザイナーズ・パルファムズ版です。スブリームが生まれた1992年という年は、時代が80年代の香害系の反動で、シアーなナチュラル系が市場を塗り替える手前で出てきた、フロリエンタル系が全盛で、大体どこのブランドも大なり小なりフロリエンタル系の新作で勝負をかけましたが、今、一番時代遅れに感じるのが、この90年代の香りかもしれないですね。日本だとフロリエンタルはバブル臭の代名詞みたいに思われている感もあるので、記憶は時に純粋な評価の妨げになりますね。ただ、単なる当時流行の香りかというとそうではなく、ミルと同じくスブリームも、バックボーンにはしっかりと、ケルレオ師の作品に特徴的な、近代香水史の一大絵巻をしっかり感じる壮大な時の流れを従えています。数あるフロリエンタル系の中では抑制のきいた深く上品な香り方が、すべての親会社で生き残った、今でも使いたいと思わせる普遍性につながる答えだと思います。色でいったら、心をほぐすあったかい陽の光のような濃い黄色。外箱の色そのものですね。個人的には、超然とした香りの多いケルレオ師の作品ではこのスブリームが一番好きです。
スブリームは、1992年の発売から、2度にわたる買収、そして2018年のパトゥ消滅まで、すべての親会社を渡り歩いた最後の香りです。お試しいただいているのも、2011年以降のデザイナーズ・パルファムズ版です。スブリームが生まれた1992年という年は、時代が80年代の香害系の反動で、シアーなナチュラル系が市場を塗り替える手前で出てきた、フロリエンタル系が全盛で、大体どこのブランドも大なり小なりフロリエンタル系の新作で勝負をかけましたが、今、一番時代遅れに感じるのが、この90年代の香りかもしれないですね。日本だとフロリエンタルはバブル臭の代名詞みたいに思われている感もあるので、記憶は時に純粋な評価の妨げになりますね。ただ、単なる当時流行の香りかというとそうではなく、ミルと同じくスブリームも、バックボーンにはしっかりと、ケルレオ師の作品に特徴的な、近代香水史の一大絵巻をしっかり感じる壮大な時の流れを従えています。数あるフロリエンタル系の中では抑制のきいた深く上品な香り方が、すべての親会社で生き残った、今でも使いたいと思わせる普遍性につながる答えだと思います。色でいったら、心をほぐすあったかい陽の光のような濃い黄色。外箱の色そのものですね。個人的には、超然とした香りの多いケルレオ師の作品ではこのスブリームが一番好きです。
13 Voyageur (1994) EDT Jean Kerleo, original circa 1990s
はい、次はヴォヤジールです。発売当時の限定ボトルが手に入りましたので持ってきました。この船形の台座、ヴォヤジールのどのサイズのボトルにもフィットするのが売りでした。今見ると、だっさ!これね、ノルマンディのオマージュなのはわかるんだけど、ノルマンディは手のひらサイズでしょ?こういうのは、小さいからいいんですよ。こんな大きいの、場所とるし、イラネー感満載のこのデザイン、香りも結構「俺が俺が」系のアロマティックフレッシュで、やっぱり今一番ダサく感じます。
14 Patou For Ever (1998) P Jean Kerleo, limited version in 1998 *この頃からジャン=ミシェル・ドゥリエと共作
はい、1990年代最後の作品、パトゥ・フォーエバーです。あのね、香水に、フォーエバーって名前つけちゃダメなんですよ。香水にとって、フォーエバーという単語は、死亡フラグと同じです。ケルレオ師は、パトゥ・フォーエバーを最後に専属調香師を引退し、オスモテークに専念するんですが、だからって新作にフォーエバーつけちゃダメでしょう、いなくなるのは自分で、お世話になった会社じゃないんだから。案の定、パトゥ・フォーエバーから3年後、ジャン・パトゥはP&Gに買収されてしまいます。香りとしては、なんだか中途半端なフルーティフローラルで、メインはラズベリー、パイナップル、メロン。果物同士も食い合わせ悪そう!当時流行の瓜系ですよ。そしてその瓜がもやっとしている、このもやっと感がケルレオ節なんだと思いますが、パルファムの限定ボトルなんか出しちゃって、盛大に登場しました。日本語の解説付きです。ですが、3年後の買収と共に廃番です。
さて、ジャン・ケルレオから専属調香師の座を継承したのは、ジャンミシェル・デュリエで、いくつかの作品をケルレオ師と共作した後、専属になって、そのすぐ後にP&Gに買収されたので、P&G時代を通して活躍することになります。P&Gはトイレタリーの世界企業ですから、当然新作香水は事前のマーケティングとリサーチをもとに製品化され、ブランドと調香師のタッグによる芸術性の高い香水を作る、という信念はそもそも持ち合わせていないので、P&G時代は、ターゲットを若年層に定め、流行に則った香りを出していきます。
それでは、最後の作品を2点ご紹介します。シラデザンドと、ジョイ・フォーエバーです。
戦後5【買収から終焉へ】1998年、4代目調香師ジャン=ミシェル・ドゥリエ→2001年、5代目トマス・フォンテーヌ、LVMH買収、消滅
15 Siras des Indes (2006) EDP Jean-Michel Duriez
16 Joy Forever (2013) EDP Thomas Fontaine *
15 Siras des Indes (2006) EDP Jean-Michel Duriez
シラデザンドは、ジャンミシェル・デュリエが手掛けたパトゥ作品としては最後の香りですが、これが結構よくて、きちんと作られた丁寧な香りです。2000年代はグルマン系が台頭して、その頂点がミュグレーのエンジェルですけど、シラデザンドも一応パトゥ流オリエンタル・グルマンとして出てきましたが、体感的にはフルボディのフルーティ・フローラルですね。しっかりと肌になじみ、動きに合わせて湧くように香ります。シラデザンドの主軸はバナナとチャンパカフラワー、そこにバニラやサンダルウッドが重なって、発売当時は南国イメージで押していましたが、この当時流行のパチュリとピーチを重ねたピーチュリ系の流れで、甘さで言うと「人工甘味料無添加、素材の甘さ。ジャージー乳使用」って感じです。シラデザンドは、とにかく10年前、勤務先の男性に大変好評で、わっと声を上げられたこともあります。嘘じゃないですよ!当時も変に南国ムードで売らないで、開き直ってモテ香水とか言っちゃえばよかったのに。もったいないなあ、売り方ひとつですよね!シラデザンドは、今でもまだ現役の香りだと思いますし、そんなに若い子限定でもないので、今デッドストックが二束三文で手に入りますから、1本持ってても損はないと思います。
※ジョイ・フォーエヴァーは最終日の明日ご紹介します。
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