フランスのグラン・パルファン、キャロンが1911年に発売した、
20世紀の名香を語る上で絶対外せない傑作、ナルシス・ノアールです。
「黒水仙」の名を持つこの香りは、現実には存在しない黒水仙なるものを、
オレンジブロッサム、ローズ、ジャスミン、ウッドムスクの調香で表現し、
幽玄な色香を醸し出しています。よくオリエンタルノートと紹介されて
いますが、キャロンHPでは「フローラル・フルーティ」と紹介されている
ように、語られているほど濃密な香りではなく、むしろ瑞々しさに溢れて
おり、気温の高い季節でも肌が芳香を放つような香り立ちはさすがです。
ナルシスノアールは、現行品ならEDTではなく、是非パルファムを
お試しいただきたいと思いますが、それよりもたった15年程度前の
オードトワレのほうが、動物的なムスクの存在が一層色香を演出して
おり、黒水仙という香りのイメージを強調しています。もし見つかる
なら、カネボウ時代のナルシスノアールのEDTをお試し下さい。
ただし、完全に現代の香調からは外れていますので、つけ方によっては
台湾の路上で焚かれる安いお香みたいに香るので注意。廟でけぶる
安い香に陥るか、禁断の妖婦に転じるかは、あなた次第。