Parfum Sacre, now and then (1990-2013)
パルファム・サクレ(1990)は、キャロンの近作(コンテンポラリー)で最も人気のある香りで、発売20周年を記念して「パルファム・サクレ・アンタンス(Parfum Sacre eau de parfum intense)」が作られたり、2013年に過去のアーカイヴから現代的な解釈でリニューアルしたシリーズ、コレクション・キャロンにもラインナップされています。個性的なスパイシー・オリエンタルの割には一般受けも良いバランス感覚が人気なのでしょうか。特にアメリカでの人気は相当なもので、アンタンス版発売時は各地の香水コミュニティで話題沸騰となりました。現行のオリジナル版EDP、アンタンス版、オリジナル版発売当時のヴィンテージEDT、コレクション版、の比較です。
オリジナルのパルファム・サクレEDPは、構想9年の末、初めて外部調香師に委託して生まれた当時のキャロンとしては鳴り物入りで、ブシュロン(1989)、アンジュ・オゥ・デュモン(2004)などを手がけたジャン・ピエール・ベトゥアールの調香、ローズにミルラやカルダモンなどの神聖な香料が際立ち、東洋の薬品庫のような謎めいた表情を見せ、どこか呪術的な雰囲気すら醸し出す、甘くスパイシーなオリエンタルで、どちらかというとアンタンス版の方がTPOを選ばずつけやすいかもしれません。一方パルファム・サクレ・アンタンスはオリジナル版と比べ、より各々の香りが渾然一体とまろやかになり、香り立ちは若干控えめに、しかし香り持ちは逆に良くなりいつまでも柔らかく肌に溶け込む、キメの細かいスパイシーオリエンタルです。またヴィンテージ版EDTは、現行EDPのライト版ではなく、ローズやジャスミンといったフローラルの方が勝っており、甘さに抑制がかかりフローラルとスパイスのバランスが良い意味で穏やかです。最後にコレクション版は、オリジナル版EDPが時代の変遷を経て、久しぶりに会った女友達が、見た目は相変わらずだけれど、昔はあれだけ尖っていて黒魔術好きでケネス・アンガー最高!とか言ってたのに、やれ「ロハス」だの「絆」だの言い出して、別れ際に「今日は有難う」なんて、何だか丸くなっちゃったうえに流されてるなあ、といった、「成長」とはまた違う変化を感じます。発売から20余年の変遷を香り比べるのも楽しいと思います。
パルファム・サクレ(オリジナル)
パルファム・サクレ・アンタンス