La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Or Noir (1980) original version EDT

 

フランスの宝飾デザイナー、パスカル・モラビト(1945〜)が初めて発売したフレグランス、オル・ノアールです。オル・ノアールは翌年メンズのオア・ブラック(1981)が発売され、ペア・フレグランスとなっています。ちなみに、パスカル・モラビトの親族が経営する最高級皮革鞄の老舗、モラビト(1905創業)とは全くの別物で、何故かロゴマークのタイポグラフィが同じだったり、パスカル・モラビトの商品で時折「パスカル」が抜けていたりする事があり、日本でも紛らわしい為訴訟に至ったケースもありました。その日本では、車の輸入会社、ヤナセが1978年にモラビトの輸入販売権を獲得したため、パスカル・モラビトも便乗して日本に入ってきましたが、オル・ノアールも「パスカル・モラビト」名義ではなく「モラビト」名義でのボトルで発売されたり、中々紛らわしいのです。現在、老舗のモラビトは路面店やオンラインブティックを日本でも展開していますが、パスカル・モラビトの日本出店はありません(そのかわり、公式サイトのオンラインショップは日本発送対応してくれます)。取扱商品はまあまあ手の届く価格帯の未来的な宝飾品、香水、お酒、そしてホテルのアメニティも手掛けています。

オル・ノアールは、現在パスカル・モラビトのパリにあるブティックとオンライン限定で初出より30年たった今でも発売されており、メンズのオア・ブラックと共に知られざる名香として発売当時のヴィンテージはアメリカなどで結構なプレミアがついています。ご多分に漏れず、現行の香りは香調が若干変わってしまっている話も聞きますが、オリジナル版のオル・ノアールは、一言で言えば「ロージーなオロナイン」。少々花粉のような脂っぽいアルデヒドに乗ったローズで始まり、徐々にまろやかな舶来化粧品のようなクリーム香に変わっていきます。まるで、香水をつけているというよりは一昔前の高級舶来エステサロンでフルコースを楽しんだ後(←想像)のようです。1980年当時としても結構クラシックな香調だったと思いますが、現代においては絶滅系の香りですので、懐かしさ満載、とても公式ウェブサイトで紹介されているような「洗練された都市に生きる女性のためのフローラル・オリエンタル」という風情ではなく、どちらかというとクリマ(1967)やカランドル(1969)、遡ってマ・グリフ(1946)あたりを鼻祖とするグリーンフローラルアルデヒドで、母性たっぷりで結構寛げる、レトロクラシックなオロナインフローラルです。

ちなみに今回ご紹介しているのはEDTですが、アルコール等級(%vol)が90゜もあるため(通常EDTのアルコール等級は80゜〜85゜、EDPでも85゜〜90゜)、EDPからパルファム濃度を意識した等級で、等級が高いという事は、それだけ含まれている水分が少ないため、劣化しにくいのですが、確かに今回手にしたボトルは結構な年期ものにも関わらず大変フレッシュで、香り立ちもふくよかだったので、こと香水に関しては今や全く宣伝もしないブランドなのに、随分きっちりした仕事をするな、と感心しました。

現在、パスカル・モラビトのオンラインショップで入手可能なのは、金のプレートを施された限定版シリアルナンバー入りEDP60ml(500ユーロ)とプレーンなリフィルボトルのEDT60ml(45ユーロ)・’金と黒’のトラベルボトルEDT50ml(45ユーロ)の3種のみ、間はないのかという価格差なのと、パリ本店で購入可能なEDPリフィルやペンダント型香水がないのは残念ですが、もし往年のオロナイン系フローラル(そんなジャンルあるのか)がお好きなら、ボトル買いしても損はしない、お奨めの逸品です。

first post : 26 Oct 2011

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左から オリジナルEDT、現行EDP100ml、数年前のトラベルサイズEDT45ml

追記 Mar. 2016

この投稿の後、パスカル・モラビトのオンラインサイトとコンタクトを取り、上記のトラベルボトルを入手したところ、結構香りが硬質に変わっており、その旨広報に確認したところ「現在の香料規制に準じた原料を使用していますが、調香は変更していません」と回答してくれたのが、パスカル・モラビト氏の次男で写真家・ウェブデザイナーのテオ・モラビト氏でした。現在モラビトのウェブサイトやオンラインショップ運営、オンラインショップでの商品撮影はこのご子息が一手に引き受けているそうです。現在23歳のテオ氏、問合せした頃ってせいぜい17,8だったのか…結構メールのやり取りが丁々発止だったので「やり手な子供だなあ」とそっちの方に感心してしまいました。

処方は変えてないとはいえ、5年前に購入したトラベルボトルEDTのアルコール等級は87°、現行のEDPは80°と、少しずつ原料も普通になっており、まあ別に香水がメインの会社でもないし、最初は頑張ったけどそれほど原料にこだわりないのかな、でもまあちょっと前のトラベルサイズでは間引いていた天然トリーモスを現行EDPで入れ直したり、そのおかげで少し香りがオリジナルの雰囲気に戻ったし、やっぱり多少はこだわってるのかな…と、相変わらずスタンスの良く分からないブランドです。

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