フランスのグラン・パルファン、ジャン・パトウは、1925年から64年にかけて
発売された香りを1984年、3代目専属調香師ジャン・ケルレオ責任監修のもと、
"マ・コレクシオン"として再発する偉業をなしとげました。ケルレオ氏はミル
(1972)、スブリーム(1992)の作者でもあり、1997年のパトウ退任後は古い香水の
保存と復元を目的とする博物館・ロスモテックを設立、78歳の現在も会長を務め
ています。
発売当時の調香を可能な限り忠実に再現したマ・コレクシオンシリーズは、
パルファムはパッケージと同柄のシルクスカーフに包まれた美しいクリスタル
ボトルに収められ、単品発売及びミニボトルセットに収録された12点の他に、
アンヴィタシオン(1932)、デリス(1940)も同時に再発されました。その中から
歴史的名香・ジョイ(1935)を輩出した初代調香師、アンリ・アルメラスの調香
によるパルファム2点、オードトワレ6点です。
【発売年代とパッケージ表記について】
写真にはありませんが、すべてのボトルの外箱には販売元としてジャン・パトウ・
アメリカの記載があり、バーコード及びリサイクルマークがなく、フランスの
香粧品にバーコードが普及したのが1990年代初頭であることを考えると、出品の
ボトルは全て1984年の初出から80年代末までに流通した商品であるとわかります。
また、1994年に出版されたJan Moran/'Fabulous fragrances'においても、詳細に
コレクシオンの香りが紹介されており、当時の現行発売品がEDTとパルファムと
なっていることから、1984年のミニコレクションボックス限定発売ではなかった
こともうかがえます。なお、ジャン・パトウは2001年P&Gに買収され、2001年以降
販売されている商品にはすべてP&Gの記載があります。
マ・コレクシオンの香りの多くには共通のベースが使用されており、そのベースが
全般的にどっしりとした深みを与えています。トワレもパルファムも肌から染み出る
ように香気が立ち上り、近年の香りでは味わえない奥行きに酔いしれます。
レトロ感たっぷり、これぞクラシック。おのおのの時代背景が美しく投影された、
香りのタイムトラベルをお楽しみ下さい。その日の天候・体温・つける人によって、
かなり香りの表情が変わるのも大きな魅力です。
《パルファム》
・アンヴィタシオン(1932) 香調:オリエンタル・ウッディ
シダーウッド、ホスタ、サンダルウッド、ムスク、タンジェリン、タイム、
ミント、ラブダナム、 ベルガモット
◎基本12本セットとは別途再発された希少品。 かなりディープな花々と
スパイスが織りなす深淵なオリエンタル。ラストのウッディーノートが美しい。
・ディヴィーヌ・フォリー(1933) 香調:オリエンタル・アンバー
ネロリ、イランイラン、イリス、ローズ、ジャスミン、ムスク、バニラ
◎ふくよかなバニラムスクに深いローズや瑞々しい花々の煌きが散りばめられた、
表情豊かなオリエンタルよりのフローラル・アンバー。
《オードトワレ》
・アデュー・サジェス(1925) 香調:パウダリー・フローラル
ベルガモット、ブラックカラント、スイセン、ネロリ、ユリ、ジョンキル、
スズラン、カーネーション、ローズ、ジャスミン、ベチバー、ムスク、シベット
◎カーネーションのクローブ香から次第にパウダリックに展開する、穏やかな
フローラル。
・カルデア(1927) 香調:パウダリー・オリエンタル
ネロリ、ヒヤシンス、ジャスミン、スイセン、スズラン、バニラ、オポポナックス、 アンバー
◎ニトロムスクが甘くパウダリックに香ります。カルデアの前身は世界初の日焼
オイル、ユイル・ド・カルデア。日焼けが富裕層のトレンドだった時代の象徴的な
香り。
・ディヴィーヌ・フォリー(1933)※香調はパルファム参照
・ノルマンディー(1935) 香調:ウッディ・フローラル
カーネーション、ジャスミン、ローズ、オポポナックス、トリーモス、バニラ、
ベンゾイン
◎出品中では一番香り立ちが柔らかな、品の良い甘口ウッディフローラル。
・コロニー(1938) 香調:フルーティ・シプレ
トロピカルフルーツ、パイナップル、イランイラン、イリス、カーネーション、
オークモス、ベチバー、レザー、ムスク、スパイス
◎パスッと切ったパイナップルの香気から、どっしりしたオークモスと時折煌く
甘いフルーツとスパイスが絶妙なシプレ。
・ルール・アタンドゥ(1946) 香調:パウダリー・ウッディ
スズラン、ゼラニウム、ライラック、イランイラン、ジャスミン、ローズ、
オポポナックス、マイソールサンダルウッド、バニラ、パチュリ
◎甘くパウダリーに香る、身持ちの良さそうなウッディ・フローラル。
Jean Patou Ma Collection(*はセットに含まれず単品にて再発されたもの)
Amour Amour(1925) / Ques Sais-Je?(1925) / Adieu Sagesse(1925) / Chaldee(1927) / Moment Supreme(1929) / Cocktail(1930) / *Invitation(1932) / Divine Folie(1933) / Normandie(1935) / Vacences(1936) / Colony(1938) / *Delices(1940) / L'Heure Attendue(1946) / Caline(1964)