La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

無断転載禁止

Jean Patou Ma Collection (1925-64/1984), chapter 2

 

 

Jean Patou Ma Collection (1925-64/1984), chapter 2

【まえがき】

香りのピラミッドは諸説ある中、アメリカの香水評論家Jan Moran著'Fabulous Fragrances(1994)/Fabulous Fragrance II(2000)'を参考にしました。また、現品を入手できなかったアムール・アムール、ヴァカンス、キャリーヌについても、同じく上記資料より香りのタイプとピラミッドを引用させて頂きました。

マ・コレクシオンはフランスでは勿論、アメリカでもジャン・パトウUSAより国内流通品として発売されており、上記著書で調香・仕様が詳細に紹介されています。「1984年当時はミニボトルのコレクションだけの発売で、現在デッドストックとして流通しているのは2001年にパトウがP&Gに買収された後の再々発品であり、よって香りも痩せているため、ヴィンテージとしては認められない」との誤認も見受けられますが、フルボトルのEDT及びパルファムが1984年の発売後、長らく一般流通品として存在している事が、上記著書の出版年からもわかります。

Amour Amour (1925)

ジャン・パトウが1925年に発売した初の香水、Amour Amour, Ques Sais-Je? Adieu Sagesseは愛のトリロジー(三部作)と呼ばれ、それぞれ「愛よ、愛」「何も知らないくせに」「さよなら純潔」という、恋愛の三段論法を現す名がついています。マ・コレクシオン中でもヴァカンス(1936)、キャリーヌ(1964)に並び、最も人気に高かったひとつです。

香調:フローラル・フレッシュ

トップ:ベルガモット、ストロベリー、レモン、ネロリ

ミドル:ジャスミン、ナルシス、ローズ、イランイラン、カーネーション、オレガノ、ユリ

ベース:ベチバー、ハニー、ムスク、シベット、ヘリオトロープ

Ques Sais-Je? (1925)

トリロジーの中核、クセジュは、16世紀の仏思想家、モンテーニュの著作「エセー」より有名な一句「私は何を知っているだろう?」に由来します。本来は常々、己の無知を常に振り返り、向学の念を奮わす決め文句ですが、こと恋愛に当てはめたら「私、何も知らないくせに」位の方がフィットすると思います。

「麗しき躁鬱患者」との異名を取るクセジュは、ピーチやアプリコットなど、プラム系フルーツが熟れる前の刺すような酸味に相当量のオークモスとパチュリが絡み合う中、同じく酸味のあるローズに冷たいアイリスなどが重なる乾いたフルーティ・シプレで、ムスクやアンバーなどのオリエンタルな要素がないため、重さはありません。恋に落ち、これから如何するべきか、自分は如何あるべきか、愛ゆえに理性を見失っていくさまが香りとして見事に表現されています。時に心弾み、時に引き込まれ、表情を豊かに変える一筋縄ではいかないクセジュは、この後続くフルーティ・シプレの構成に多大な影響を与えており、例えば1989年にリニューアルされたファムは、担当した調香師・オリヴィエ・クレスプがファムをオリジナルと忠実に再現する一方で、クセジュも重点的に参照した、と公言しています。コロニー(1938)とも類似点が見られますが、クセジュのほうが確実に情緒不安定です。割と持続が良く、ラストはクリーミィにまとまります。決して手放しに心地よい香りではありませんが、不思議と習慣性があります。

コレクシオンの中では突出した個性を誇る香りで、ゆえにヴィンテージ市場でも相当な人気で、デッドストックも殆ど出回らず、あってもアムール・アムール他ほどではありませんが、結構なプレミアがついています。

トップ:ピーチ、アプリコット、オレンジブロッサム

ミドル:ジャスミン、ローズ、カーネーション、アイリス

ベース:オークモス、パチュリ

麗しき躁鬱患者の異名を持つクセジュ

 

Adieu Sagesse (1925)

トリロジーの最後、アデュー・サジェスは、トップに少々かび臭い、それでいて青々とも感じるさまざまな生花の香りが入れ替わり立ち代り立ち上った後は、カーネーションを軸として甘くパウダリーに落着き、あまり展開せずにうっすらとムスクが温かく長持ちするパウダリー・フローラルです。クセジュに比べると、体を許してしまうという事は、こんなにも心穏やかなものなのか、と不思議に思える位です。30年代以降のコレクシオン品と比べると、共通のベースノートは軽めにあしらわれている感じがします。

トップ:ネロリ、ジョンキル、スズラン

ミドル:カーネーション、チュベローズ、オポポナックス

ベース:ムスク、シベット

Chaldee (1927)

トリロジーに続きジャン・パトウが発売したのは、香水ではなく世界初のサンオイル、ユイル・ド・シャルデでした。まだ日焼けが富裕層のトレンドだった時代、蒼白な肌の欧米人が憧れた、燦燦と降り注ぐ太陽に愛されて黄金に輝く美しい肌を彷彿とする、古代バビロニアに興ったシュメール地域に栄えたカルデア人の名を与えられたユイル・ド・シャルデのヒット後、1927年に香りを特化したものがカルデアです(ユイル・ド・シャルデ自体も長らく生産されていたようです)。

さらっとフルーティなトップに始まり、程なくジョイ(1930)に共通する、若干の生臭さをはらむジャスミンが、同じく強い香りをはなつヒヤシンスやナルシスなどの生々しい甘さにまじりあい、調香にはありませんが動物的なムスクにしっかりと支えられた香気が立ち上る、フローラルの外郭をしっかり持った軽やかなオリエンタルです。現代で言うところの甘くて重いフロリエンタルではありません。ベースは動物性香料特有の軽やかさが主体で、調香にあるオポポナックスやアンバーはあまり感じられません。EDTはそれほど香り持ちしませんが、パルファムではより動物的で濃厚になり、それこそ溢れるように香ります。現代では中々体感する機会がない古きよき香りなので、つける場所や季節は考えた方がよいかもしれません。

なお、デザイナー・パルファムズからの復刻第1弾として、マ・コレクシオンから最初に復刻したのがこのシャルデです。

トップ:オレンジブロッサム、ヒヤシンス

ミドル:ジャスミン、ナルシス、オポポナックス

ベース:アンバー、スパイス

Moment Supreme (1929)

カルデアに続き発売された「至福の瞬間」の意であるモマン・スプレームは、コレクシオン中最も特異な展開をする「一応」フローラルノートです。まず、つけた瞬間はさわやかさが爆発するようなしゃきっとしたシトラスのアクセントがきいたラベンダーとゼラニウムのスパークに驚きますが、本当に驚くのはここではありません。このマニッシュなトップノートは5分もしないうちにどこかへ消えてしまい、代わりに顔を出すのが何ともやるせないアンニュイなパウダリー・フローラルへと豹変してしまいます。

調香にはありませんがヘリオトロープやオリスが日陰の薄ら寒さを感じさせます。まるではつらつとした青年の皮を剥いだら蒼白でけだるい女性だった、みたいな妙な二面性が人気を呼んだのか、コレクシオンの中でも相当の入手困難品です。香り持ちは弱く、朝つけても昼まで持ちません。すべての勢いをトップのラベンダーとゼラニウムが奪っています。「至福の瞬間」とはパリが最も絢爛であった当時の様子を指すといわれますが、まさしくトップノートを謳歌できる5分間こそが至福の瞬間なのかもしれません。

モマン・スプレームの発売後、世界は未曾有の大恐慌へと突入します。しかしパトウはどん底の景気を逆手にとるかのように「世界で最も高い香水」として次なる至福の瞬間を待ちわびる富裕層めがけ、ジョイを発売するのです。やりますね。

トップ:ラベンダー、ゼラニウム、クローヴ、ベルガモット

ミドル:ジャスミン、ローズ

ベース:アンバー、スパイス

《補足》香水ブログ、Perfume shrineによる調香:

bergamot, lemon, neroli, mandarin, lavender,

May rose, clove, ylang, lilac, jonquil, orris, vanilla,

sandal, musk, honey,heliotrope, civet, moss, and benzoin.

コレクシオンきっての珍香?モマン・スプレーム

Cocktail (1930)

世界大恐慌が起こった翌年の1930年、ジャン・パトウが不況を嘲うかのように輩出したのが、後世に残る名香、ジョイとこのカクテルです。サンフロランタン通りに面するパトウのメゾンには、ドレスを注文する女性に付き合いでやってきた手持無沙汰の男性が、待つのも苦にならないよう採寸をしている間カクテルやちょっとした会話が楽しめるバーが併設されていました。カクテルはそのバーで振舞われるカクテルをイメージし、コレクシオンで再発されたオリジナルのカクテルだけでなく、カクテル・ドライ、カクテル・スウィート、カクテル・ビタースウィートの計4種類も作られました。

カクテルはコティのシプレを始祖とするシプレノートに忠実な、シトラス-ジャスミン/ローズ-オークモスのシンプルなコンビで、さわやかなグリーンシトラスから始まり、すぐにオークモスやフローラルが顔を出して肌に馴染みます。甘さはさほどないのですがとてもクリーミィで、どういうわけか昔のニベアが物凄くいい香りになったような、女性らしい柔和なまろやかさに肩の力が抜けてしまいます。個人的に、オリジナルのニベアやオロナインの香りが好きなので、妙な安心感がくせになります。肩肘張らない香りが人気を博したのか、コレクシオンでもフルボトルは遂にお目にかかれずかろうじてミニチュアボトルを数本入手できたに留まりました。

余談ですが、ニベアやオロナインの香りは結構クラシック香水に通じるものがあると思います。嫌いな方も多いみたいですし、真っ先に「おばあちゃんの匂い」「古臭い」といわれるのはニベアもクラシック香水も同じ憂き目ですが、そもそもニベアやオロナインは市場の最大公約数をターゲットに置いた大衆向け商品ですので、発売時誰からも嫌われない香調を採用したはずです。ニベアの発売は1911年、オロナインは1953年の発売で、昔からあまり香りが変わっていない所を見ると、この二つの香りにクラシック香水好きが惹かれるのも道理であると思います。ちなみに自分で使用していて「物凄くいい香りになった」オロナインと感じたのはキャロンのアンフィニ(パルファム)、ニベアと感じたのは上記の通りカクテルで、その中間地点にランコムのクリマ(EDP)があります。

私のノスタルジーはこの辺にあるのだと、この3点をつける度に思い知ります。

トップ:グリーンノート、ベルガモット、シトラス

ミドル:ジャスミン、ローズ

ベース:オークモス

Invitation (1932)

1930年、のちにブランドの看板となるジョイと並行してカクテルを上市した2年後に発売されたアンヴィタシオンは、マ・コレクシオンと同時期に再発されたものの、12本入のミニチュアセットには入りませんでした(ちなみに同じ再発で選外だったものにDelices(1940)があります)。所有しているのはパルファムですが、再発時オードトワレとあわせての発売だったのか、パルファムだけだったのかは分かりません。殆ど参考になる文献がないので、購入先にて記載されていた香調を下記に記します。ピラミッドは不明です。

埃っぽいトップノートと共に薬っぽいハーブとクローヴなどのスパイスが香り、メンズライクな立ち上がりの後は割合に底力が弱く、ふんわりとラブダナムやシダーウッドの清涼感と温かみを併せ持った香気が身動きに応じ立ち上り、ラストは柔らかいアンバー系ムスクに落ち着くオリエンタル・ウッディです。総じて良く言えば深淵、悪く言えば決め手となるイメージ像がないので、同じコレクシオンの同軸線上にはど迫力のディヴィーヌ・フォリー(1933)が控えているとなると選外になるのも致し方ない、といったところでしょうか。オードトワレ程度の濃度に感じますので、パルファムといえど臆せず少し多めにつけたほうがより楽しめるかもしれません。ミドルからラストにかけての消えるか消えないかのほのかな香りが一番雑味がなく心地よいです。

香調:シダーウッド、ホスタ、サンダルウッド、ムスク、タンジェリン、タイム、ミント、ラブダナム、ベルガモット

アンヴィタシオン

 

シャルデ 外箱と共柄のスカーフに包まれるボトル

Divine Folie (1933)

1933年に発売されたディヴィーヌ・フォリーは、前年発売のアンヴィタシオンと多少類似点はあるものの、こちらの方がより女性らしく華やかで、立ち上がりにどっとクローヴ香を感じ、程なくふくよかなバニラムスクにスティラックスが交わるアンバーノートに深いローズや瑞々しい花々の煌きがあふれ出します。宝石箱や化粧品がずらりと並んだ薄暗い鏡台の前でスリップドレスを着た女性が、たっぷりの粉白粉にくっきりとした口紅をひき、仕上にこの香りをつけて毛皮をまとい我侭に笑う、そんな銀幕の時代にタイムスリップさせてくれる表情豊かなオリエンタルよりのフローラル・アンバーです。

瑞々しさもひと段落すると、その後は柔らかくパウダリックにまとまりますが、相応の緊張感を要する外向性の高い香りなので、ゆめゆめ休日のリラックスタイムにはお奨めしません。特にクラシック香水に慣れていない方・気温の高い時期には体調を選ぶ香りだと思います。

コレクシオンの中でもとりわけ香り立ちが強く、EDTでも充分な濃度がありますが、パルファムにいたってはクラシック香水の真骨頂、それはもうふんふんと湧き出るように香り、ウエストにたった2ポイントでもコートを貫通して染み出し全身を包み込んでくれます。残り香もたっぷりと残りますので、すぐ洗う予定のない服を次に着まわす時にはご用心。クラシック香水はある種のタイムマシンであると実感できる、個人的には入手できたコレクシオンの中で一番好きな香りです。

トップ:ネロリ、イランイラン

ミドル:オレンジブロッサム、スティラックス、アイリス、ローズ、ジャスミン、ベチバー

ベース:ムスク、バニラ

Normandie (1935)

大西洋岸に面する港湾都市であるル・アーブルとニューヨークを結ぶ新しいオーシャン・ライナー、ノルマンディー号が1935年処女航海を行った際、大西洋横断速度の新記録達成時、ファーストクラスの乗客へ進呈されたのが当時の最新作、ノルマンディーです。ボトルは船のレプリカをかたどっていたそうで、採算度外視の宣伝活動に、貰った方々は大変な喜びだったそうです。香りとしては、オリエンタル・アンバーと紹介されている事が多いのですが、アデュー・サジェスがより深くなったような、カーネーション様のスイートなウッディ・フローラルで、こちらの方がよりメリハリ(骨格)があり、かつ肌馴染みがよく明るい意思のようなものを感じるのは、表層のフルーツとベースのオークモスでフルーティ・シプレ系の清涼感も持ち合わせているからだと思います。オリエンタル感は弱め。やはり、処女航海だの記録達成だのという時に、あんまりアンニュイな香りをお土産に渡されても、お客さんも何だかな、という気分になるでしょうから、その辺はパトウもわきまえて新作をぶつけて来たのかもしれません。

ノルマンディー発売の翌年、ジャン・パトウは55歳の若さでこの世を去ります。ノルマンディー以降の香りは、パトウの死後ブランドが専属調香師と共に発売していく事になります。

トップ:フルーツ

ミドル:カーネーション、ジャスミン、ローズ

ベース:バニラ、ベンゾイン、オークモス、シダーウッド、ウッド

Vacances (1936)

香調:フローラル・オリエンタル

トップ:ヒヤシンス、ホーソーン、ガルバナム

ミドル:ライラック・ミモザ

ベース:ムスク、ウッド

Colony (1938)

パトウの没年である1936年にヴァカンスが発売されてから2年後、フランスから遠い南方の植民地に思いを馳せ、トロピカル感満載のコロニーが発売されます。

パイナップルをキーワードとしたクラシック香水としてはキャロンのアカシオサ(1929)が最も有名ですが、それから遅れること9年後、アカシオサのパイナップルはあくまでキャロンノートに則ったスイートフローラルの一端に香るかけらのようなもので、それほど主張しないのに対し、コロニーはパスッと切ったパイナップルの香気から、どっしりしたオークモスと時折煌く甘いフルーツとスパイスが絶妙なフルーティ・シプレで、酸味の強いパイナップルやトロピカルフルーツが全面に押し寄せてくる点ではコロニーに座布団を一枚やって欲しいところです。クセジュ(1925)にも若干通じるものがありますが、情緒不安定感はありません。ラストでようやくオポポナックスやムスクのまろやかな甘さに落ち着きます。

ちなみにコロニーはコレクシオンの中でもあまり人気がなかったらしく、数年前までかなり廉価でディスカウンターに出回っていましたが、それももう今では見かけません。個性が強い分長きに渡り愛される香りというよりは、若干のネタ的要素も感じられるので、その辺が理由かもしれません。他にディヴィーヌ・フォリー、ルール・アタンデュー、カルデアはマ・コレクシオンの中では最後までデッドストックが流通していましたが、ディヴィーヌ・フォリーのような個人的に気に入っている香りがいつまでも売れ残っているのは嬉しい反面、ちょっぴり納得がいかなかったりもします。勝手なものです。

トップ:パイナップル、ベルガモット

ミドル:イランイラン、イリス、カーネーション、オポポナックス

ベース:オークモス、レザー、ムスク、ベチバー

Delices (1940) 香調、ピラミッド不明。

L'Heure Attendue(1946)

コロニーの2年後、1940年にデリスが発売されましたが、戦況厳しくなる中パトウも新作の発売は終戦まで待たざるを得ませんでした。フランスはドイツからの解放後終戦を迎え、1946年に戦後初の作品として発売した香りには「待ちわびた時」という、重みのある名がつけられました。

香りとしては、甘くじんわりと香るいたって穏やかなオリエンタルよりのスイート・フローラルで、ライラックの青さとイランイランの甘さにコレクシオンのフローラル系全般に通じるオポポナックスのベースが支えとなって肌に馴染みます。開放された自由とは、馬鹿騒ぎのような高揚感ではなく、じんわりと温かみを感じる花々の香り、という解釈が「待ちわびた時」の真意を物語っています。アデュー・サジェスやノルマンディーにも雰囲気が似ていますが、ルール・アタンデューが一番甘く、深く穏やかで年齢層が高い気がします。

ルール・アタンデューは、パトウのマ・コレクシオンを収集するきっかけとなった香りで、知人よりオリジナル版のパルファムを頂いた事に端を発します。下さった方は80前の英国人女性で、若かりし頃国際線の客室乗務員をしていて、結構もてたので(本人談)それは色々な殿方から香水をプレゼントされたそうですが、ご本人は使いつけの香りがあって、50年以上使わず放置していたとの事。イギリスの方なので、放置コレクションの大半は当時イギリスで人気のあったランテリックのツイードやその一連、最近のものではディオールのドルチェ・ヴィータもありましたが、その中にぽろっとランコムのフレシェ・ドール(1957)やこのルール・アタンデューのオリジナル版パルファムもあり(なんと勿体無い・・・プレゼントした方も浮ばれませんね)、おばあちゃんとしては古いし使わないしわかんないし、もうどうでもいい訳で、どれでも好きなのをくれるというので、すかさずルール・アタンデューを頂戴したという次第です。

オリジナル版は、コレクシオン版よりも若干フルーティで、ジャスミンの生臭さやローズのほのかな酸味もきちんと感じ取る事ができます。オリジナル版、コレクシオン版ともに香り立ちは穏やかで、オリエンタル感も控えめ、どちらもそれほど持続はしませんので、通年使える香りだと思います。

トップ:スズラン、ゼラニウム、ライラック

ミドル:イランイラン、ジャスミン、ローズ、オポポナックス

ベース:マイソールサンダルウッド、バニラ、パチュリ

Caline (1964)

ルール・アタンデューの後、戦後パトウの大ヒットとなったキャリーヌ(1964)が続きます。キャリーヌは「ティーンエイジャーが初めて選ぶ本格的な香り(ジャン・モラン)」の通り、パトウとしては若年層をもターゲットにすえた若々しい香りで、コレクシオン加入後も単発で生産が続いていた香りです。キャリーヌ登場で、12種のコレクシオン(+番外編2種)の役者が揃います。改めて専属調香師、ジャン・ケルレオ氏の、自らもミルやスブリームなど現在も現行発売されている名香を生み出しながら、自社の過去の香りに敬意を表する姿勢には、ただただ感服の一言しかありません。ケルレオ氏が創立した香水保存館、ロスモテークも一生に一度は訪れてみたいと夢を馳せ、これにてパトウのマ・コレクシオンのレビューは幕引きといたします。

香調:フローラル・フレッシュ

トップ:グリーン、アルデヒド、ミモザ、マンダリン、ベルガモット、バジル

ミドル:イリス、オレンジブロッサム、パチュリ、モス、コリアンダー

ベース:ムスク、アンバー

contact to LPT