Jean Patou Ma Collection (1925-64/1984), chapter 1
フランスのグラン・パルファム、ジャン・パトウは、1925年から64年にかけて発売された香りを1984年、3代目専属調香師ジャン・ケルレオ責任監修のもと、"マ・コレクシオン"として再発する偉業をなしとげました。ケルレオ氏はミル(1972)、スブリーム(1992)の作者でもあり、1997年のパトウ退任後は古い香水の保存と復元を目的とする博物館・ロスモテークを設立、2008年に現会長パトリシア・ド・ニコライが就任するまでの11年間、初代会長を務めました。
発売当時の調香を可能な限り忠実に再現したマ・コレクシオンシリーズは、パルファムはパッケージと同柄のシルクスカーフに包まれた美しいクリスタルボトルに収められ、単品発売及びミニボトルセットに収録された12点の他に、アンヴィタシオン(1932)、デリス(1940)も同時に再発されました。全14種のうち戦前の香りが12種で、歴史的名香・ジョイ(1935)を輩出した初代調香師、アンリ・アルメラスの手による作品(1925年の3部作〜1938年のコロニーまでの11種)に集中しています。
マ・コレクシオンの香りの多くには共通のベースが使用されており、そのベースが全般的にどっしりとした深みを与えています。トワレもパルファムも肌から染み出るように香気が立ち上り、近年の香りでは味わえない奥行きに酔いしれます。レトロ感たっぷり、これぞクラシック。おのおのの時代背景が美しく投影された、香りのタイムトラベルをお楽しみ下さい。その日の天候・体温・つける人によって、かなり香りの表情が変わるのも大きな魅力です。親会社が巨大企業・P&Gからパトウのアーカイヴに並々ならぬ敬意を表しているデザイナーズ・パルファムズに変わり、いよいよマ・コレクシオンからカルデアが、そしてさらに3種類が2度目の復刻を遂げようとしている現在、このケルレオ師の偉業から予習させていただき、30年の時を経てどのように再現されるか、楽しみに待ちましょう。なお、カルデアとオードパトゥは後日当章にて新旧香り比べをご報告いたします。
Jean Patou Ma Collection(*はセットに含まれず単品にて再発されたもの)
・Amour Amour / アムール・アムール(1925)
・Ques Sais-Je? / クセジュ?(1925)
・Adieu Sagesse / アデュー・サジェス(1925)
・Chaldee / シャルデ(1927)
・Moment Supreme / モマン・スプレーム(1929)
・Cocktail / カクテル(1930)
・*Invitation / アンヴィタシオン(1932)
・Divine Folie / ディヴィーヌ・フォリー(1933)
・Normandie / ノルマンディー(1935)
・Vacances / ヴァカンス(1936)
・Colony / コロニー(1938)
・*Delices / デリス(1940)
・L'Heure Attendue / ルール・アタンデュー(1946)
・Caline / キャリーヌ(1964)
次に、香りの紹介に続きます。