La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Ma Liberte (1986)

マ・リベルテEDT 50ml スプラッシュボトル

3代目調香師ジャン・ケルレオ総指揮によるパトゥ一世一代の大復刻作業、マ・コレクシオン・シリーズ(1984)の発売から2年、オードパトゥから実に10年の歳月が流れた1986年、寡作の巨人・ケルレオ師のオリジナル新作として世に出たのがマ・リベルテです。こちらもまたP&G買収時にはすでに廃番で、日本では次に続くスブリーム(1992)の方が扱いも大きく、女性誌で次々取り上げられていたのを記憶しています。現在のジャン・パトゥは古典的名香の復刻に血道をあげているので、この辺りの中途半端な時代の作品が戻ってくる可能性はあまりないと思いますし、何よりカムバックを見込めない原因がこのマ・リベルテ自身にあるように思えてなりません。

マ・リベルテはレディスの作品ですが、ブラインドテストをしてこれをレディスと言い切れる人がどれだけいるか、ドライでハードなアロマティックウッディノートのユニセックス系、むしろメンズ寄りと言えそうです。非常にドライでハーバルなラベンダーとレモンで始まるところは、往年のモマン・スプレームのオマージュともとれますが、そこから決して甘だるくはならず、ヘリオトローブやジャスミン、ローズなどのフローラルな部分は今回ばかりは脇に徹すと言わんばかりに引きぎみで、一貫してドライなベチバーやパチュリ、粉質のシダーやサンダルウッドが層になり、全体としては「昔嗅いだ、おやじの頭」みたいな印象を受けます。ラストに近くなると一気にオリエンタルな表情が増しますが、それもいたってメンズのフゼア調に見られるベースノートとしてのオリエンタルでバニラが弱くナツメグクローブ、シナモンなど健胃生薬系スパイスに押されぎみなので、マ・リベルテをつけて女っぽい、となる人は、香水なんかに頼らなくても十分色っぽいか、何かの化学反応で一発逆転大勝利に導かれる奇特な魅力の持ち主ではないかと思います。強いて言えば同軸線上に位置するゲランのジッキーが、ラベンダーを越すとちょっと汚れた甘いバニラに変わる所が女性らしいのですが、マ・リベルテは、最後まで片意地はって可愛いげのないおやじ臭いあたりがケルレオ師が描く女性のチャーミングポイントだとしたら、師は相当の上級者と察します。

こういう、媚を売らないのがハンサム・ビューティなのよ、みたいなうたい文句で紹介されていたのを昔見たことがありますが、実際に試香してみて、当時の一大勢力だった爆香系のアンチテーゼのような、代理店の宣伝文句だけで書いていないかと素直に疑ってみたくなりました。現代なら、どこかメゾンフレグランス系のメンズかユニセックス系として、深淵なるコンセプトもりもりで出せば、コンセプト酔いしたフォロワーがつかないでもなさそうな、師がご健在のうちに真の製作コンセプトを聞いておきたい、そんな香りです。

師匠、マ・リベルテ的女性ってどんな人ですか、教えてください