2009年に復興、2012年にはブラックレーベルコレクションを世に出したグロスミスが、同社の旗艦店であるフォートナム&メイソンのために作ったシルヴァン・ソングは、現在もロンドンのF&M本店での限定販売*と、発売当初は限定扱いでも徐々に販路を広げていったロイヤルコレクションと違い、入手性に関して格段にハードルの高い作品です。EDP1濃度で、通常の50ml(£195≒29,000円)と100ml(£295≒44,000円)の他に、単品としては値頃な10mlサイズ(£54≒8,000円)があるのも、世界中から観光客の集まるF&Mならではの特徴です。
香りのご紹介の前に、フォートナム&メイソンについて説明します。
1707年創業、ロンドンはピカデリーに本店を構え、本年めでたく創業310周年を迎えた高級デパートであるフォートナム&メイソンですが、創業時は紅茶とキャンドルからスタートした紅茶商だったので、現在でも食料品の品ぞろえが豊富。スコッチエッグを発明したのもフォートナムズと言われています。ヴィクトリア女王の治世から150年以上の長きにわたる王室御用達食料品店で、現在はエリザベス2世より「食料品店」チャールズ皇太子より「紅茶商及び食料品店」のロイヤルワラントを賜っており、紅茶や雑貨の詰め合わせバスケット、ハンパーが有名で、ギフト需要が高い高級店です。フレーバーティと同じテーマのキャンドルやジャムなど、シリーズ展開が多数あり、私の訪問時、本店1階のギフトコーナーは、平日にもかかわらず熟年日本人観光客が精力的に土産物を物色していました。日本では三越がショップ展開しており、高級紅茶ブランドとして名前が浸透しています。親会社はセルフリッジ(英)、ブラウン・トマス(アイルランド)、デ・ビエンコルフ(蘭)など高級デパートを傘下に持つ投資会社、ウィッティントン・インヴェストメンツです。
フォートナム&メイソンのシルヴァン・ソングコーナー。こちらは100mlボトル
「森の詩(うた)」を意味するシルヴァン・ソングは、復興時からグロスミスとは二人三脚の香料会社、ロベルテ所属調香師のセリーヌ・ギヴァーシュが手がけており「セリーヌさんに、フォートナムのフロアをくまなく歩いてもらって、雰囲気をしっかり掴んで香りにしてもらったの」(エレナーさん談)と、シルヴァン・ソングをまとうとフォートナムズの想い出が蘇る、そんなコンセプトで生まれた香りです。ラベルもF&Mのコーポレートカラー、オー・デ・ニール(Eau de Nil, ナイルの水)を用いています。
*一応オンラインストアでの取扱いもあるが、英国内配送のみ