La Parfumerie Tanu

- We are a non-stop Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

無断転載禁止

I'm a Stranger in Arab introduction : Why LPT has been into Arabian Fragrances

<なぜアラビアン・フレグランスの紹介を行うのか>

私がアラビアン・フレグランスに興味を持った最初のきっかけは、2009年、私がまだLPTブログを始める前の話ですね。ウードイコール中東専売、という認識で、欧米ではまだ話題の辺境にも上らなかったその当時、キャロンが、長い歴史で初めて中東向けにひっそりと「ウード」「シークレット・ウード」という2種の新作を発売したんですよ。香水コミュニティでちらっと話題にのぼっただけで公式ウェブサイトですら紹介されないので、もう気になってモンテーニュの本店まで問合せたんですよ。当時のキャロンはなんでも電話注文ができて、サンプルもメールすれば送ってくれるという神対応っぷりだったんですが「こちら2種はキャロン・ブティック専売で、購入されるのは中東のお客様に限られております。我々西洋人はこういう香りは好みませんので。サンプルは送らせていただきますが、お客様のお好みに合うかどうかはわかりません」という、自社品に対する問合せに対し愛着のかけらもない回答とサンプルがやってきて、わざわざモンテーニュ本店から気前よくサンプルをくれたのはいいけれど、自分たちがいいともなんとも思っていないのに、なんでそんなの売るんだよ…と首をひねったんですが、盛大に首をひねったおかげでいつまでも違和感が残ったわけですよ。その違和感が原動力となって、果たして欧米のブランドの中東向けに出しているウード物は、実際に中東で生産されているフレグランスと比べ、何がどう違うのか、実際に中東ブランドの香りを試してみようと思い、構想4年、調査期間に1年をかけ、2014年にやっと形になったのが、5年前の大連載、I'm a Stranger in Arabだったというわけで、連載5周年を記念して開催するのが今回のキャバレーです。

f:id:Tanu_LPT:20190224214436j:plain

追加席も出るほどの盛況でした 感謝感謝

私は中東に全く縁がないので、まるで昔の画家が、見たことのない南方のトラやゾウを絵に描くのと同じ勢いで誤解に満ちていると思いますが、難しいことは抜きで、少しでもアラビアン・フレグランスを身近に感じていただきたいと思い「ここ日本にいても入手可能なもの」を大前提に、欧米のアラブ好きではなく、中東の人々が本当に愛用しているアラビアン・フレグランス界のメインストリーム5社を中心に、各社のベストセラーや代表作を現実的な中庸価格帯を中心に選んで参りました。5年前の特集で中東のオンラインストアに何軒もおすすめを伺ったんですが、その中で「ウードやムスク、アンバーなどの伝統的なアラブ香料やブレンドは、高ければ高いほどいい香りというわけではなくて、逆に高ければ高いほど香りとしてもつける側の経験値を要するので、はっきり言って趣味の世界です。良い香りは価格で選ぶのではなく、あなたが心地よいと思える香りが一番良い香りです」と言ってくれたお店があって、その言葉がこの特集の羅針盤になっています。何もわかってない外国人に法外な商品を売りつけるのではなく、こういうことをさらっと言って止めてくれるお店は本物です。

<アラビアン・フレグランスの基礎知識>

それでは、各ブランドの代表作を紹介する前に、アラビアンフレグランスの基礎知識をご紹介します。時間の都合で要点だけにいたしますが、詳しくは5年前の連載にすべて書いていますので、お帰りになってからお目通しください。

 

〇中東香はオイルベース

まず、アラビアン・フレグランスは基本的にオイルベースです。英語でPerfumeまたはFragranceと書くと、西欧では基本的にアルコールベースの香水のことですが、アラブではオイルベースの「香油」を指します。香油はそれだけでエキゾチックな存在ですが、香油は今から4000年前から存在した一方で、アルコールベースの香水が登場したのはたった5-600年前、15~6世紀の話です。世界最古の薬局、サンタマリアノヴェッラだって創業400年ちょっとでしょ?アラブの人たちはなんと3500年も前からヨーロッパの先を行っていたんですよ!オイルベースの香油の方が、伝統と歴史に育まれたフレグランスの元祖なわけです。ちなみにアメリカのインディ系ブランドはもともとオイルベースが中心です。最近は、メインストリーム系でもフレグランスオイルを徐々に出してきていますよね、一方で中東メーカーも欧米のトレンドを取り込んだアルコールベースの香水を多数販売するようになってきましたので、香りの世界は東西双方の歩み寄りが急速に進んでいます。裏を返せば客の取り合いなんですけどね。

f:id:Tanu_LPT:20190224214450j:plain

人気の香りはパッケージと合わせてルースオイル(量り売り)も買える

〇香油のメリット

では、次に香油のいいところをご紹介します。

1)賦香率が高いので少量で長時間持続する

香水だと賦香率が15%以上あればパルファム濃度という事になっています。一方アラブ香油は基本的に香水でいったらすべてパルファム濃度で、低くても25%は下らず、ものによっては賦香率が40%もあります。よって柔らかい香りがまろやかに長時間持続するものが多いです。

2)オイルベースなので拡散が抑えられる

アルコールベースの香水がつけた瞬間ぱーっと香りが拡がるのはなぜだと思います?
肌に乗せた時のアルコールの揮発作用で香りが拡散するんです。香油には香料を拡散させるアルコールの代わりに香料とも肌とも馴染みのよいオイルがベースになっているため、肌の上で体温に温められた力で拡がるので、香水よりも拡散が控えめになります。まあ、つけすぎればどんな香りでも強く香ります。

3)消費期限が香水より長い

これは意外と知られていないと思いますが、香水が劣化する一番の原因はなんだと思います?水分です。香水に含まれる水が腐ってカビジュースになるんです。香油には、劣化の原因となる水分が含まれていない為、香水よりも消費期限が長く、通常2年といわれている香水に対して香油は5年は持つので、幾つもボトルを所有しても劣化による香りの変化を起こす前に使い切りやすいと言えます。

4)量り売りで少量から買えるものが多い

一般的にアラブ香油は、ルースオイルからの量り売りが基本です。業務用のスチール缶から、トーラ単位で買います。トーラとはアラブ特有の単位で、1トーラが12mlで、量り売りは1トーラが基本で高いものだと1/2トーラ、1/4トーラ、つまり3mlから購入できます。伝統的な高級メーカーほど量り売りの比重が高いですね。人気の香りだとパッケージボトルとルースオイルを両方買えるブランドもあります。同じ香りなら当然量り売りの方が安く、リピーターにとっても、お試しにも非常に親切なシステムが普及しているのは、 香りがただの鑑賞物ではなく、共に何千年も生きてきた湾岸文化の証でしょう。

f:id:Tanu_LPT:20190224214054j:plain

パッケージ製品はたいてい蓋にタッチスティックがついていて、スティックで肌に乗せる


一方で、香油ならではの注意点もあります。香油は高濃度に香料を含んでいるので、香料の色素の濃いものは衣服の染みになりやすいです。香水と違って揮発性ではないので、お肌にオイルがなじむまで、ひと呼吸おいてからお洋服を着るか、しみになっても目立たない色の下着を身に着けてから上物を着た方がよいです。

また、肌に乗せてみてかゆみや湿疹が出たら、賦香率が高すぎる、つまり香料の濃度が濃すぎるのかもしれません。その場合は無香料のキャリアオイルなどで薄め、賦香率を下げて使うか、それでも肌に刺激を感じるようなら直接肌に触れないようコットンなどに含ませて下着の間に挟むと良いでしょう。

 

★★★★★トライアルキット・展示品販売のお知らせ★★★★★

 

上記リンクより、Cabaret LPT vol.10でご紹介した香油のトライアルキットや会場での展示品を販売しています。いずれも数量・期間限定ですので、ご興味のある方はお早めにどうぞ。またトライアルキットは注文〆切後に制作し、3月下旬までのお届を予定しております。他商品への香り移りを防ぐため、アトマイザーなど一般商品とは別送させていただきます。

contact to LPT