A Gentleman Takes Polaroids Chapter thirty : Vetiver Gentleman in Autumn, Reiwa 1
立ち上がり:今回の3種の中では一番付けたとき「お!ベチバー』という感じが強いです。なんとなく子供の頃、駄菓子屋だ買った袋入り10円粉ジュースを思い出します。あれは体に悪そうな色がしたジュースできたなー
昼:粉物的な印象に変わってきました。付け始めより少しムスク的な感じが出てきたりしてる。
15時位:体力不足気味か。かなり弱くなってきてる。冒頭の印象の強さからすると信じられない弱さ。
夕方:消えたー 弱いー
ポラロイドに映ったのは:アイアンキング。水分エネルギーで活動時間1分の最弱ヒーロー
Tanu’s Tip :
暑さ寒さも彼岸まで、ようやく朝晩の寒暖差を満喫できる秋がやってきました。秋と言えばベチバー。2016年7月からスタートしたジェントルマンコーナーでも度々ベチバーが主役の香りを紹介してまいりましたが、汗に流れる夏によし、肌のぬくもりを懐かしむ秋にまたよし、美しい香調を奏でる盤石なベースには勿論、時に香りの主軸にと、そのアーシーでハーバルなベチバーの香りは、決して相手に深入りすることなく心に寄り添う、主役級の名バイプレイヤーのような存在です。イネ科植物であるベチバーの和名はカスカスガヤ、今聞いたばかりの誉め言葉が台無しです。昨年の9月も「秋のベチバージェントルマン」と題し、若干名前負けのベチバー、ベチバーどこ?なベチバー、名前にないけど一番ベチバーが香るベストセラー品、とお楽しみいただきました。そこで今年も「秋のベチバージェントルマン令和元年」と名付け、ベチバーを名に持つ香りを3つご紹介します。今年のベチバーはちょっと違う。元号が違うだけではありません。LPTとしては意外なチョイスのベチバーです。
昨年3月、大々的に商品の改廃が行われたセルジュ・ルタンス。国内終売品のうち①永久廃番となったもの(ダンブロンなど)、②パレロワイヤル及びオンライン専売品となったもの(アラニュイなど)、③お高いラインで復活したもの(グラット・シエル:セルジュノワールなど)、④廃番後、値頃なラインで復活したもの(コレクション・ポリテス:グリクレールなど)など、香りによって明暗が分かれましたが、④などは、元々堅実な価格設定だったルタンス製品が改廃により商況に同調し値上がりする中、定番ラインであるコレクション・ノワールの50mlサイズと同額で100ml展開という良心的な新ラインでの復活で、改めてセルジュ・ルタンスは、手の届きやすいものから高級ラインまで網羅し、アプローチが大衆的かは別として、体制としては様々な懐事情の購買層に訴求する努力をしている、資生堂というメインストリームの1ブランドとして一歩前進したと実感します。
本日登場するヴェティヴェール・オリエンタルは、1992年の創業から10年経ち、ブランドとしても次の10年に向け脂がのってきた2002年の作品で、改廃にも負けず、定番ラインであるコレクション・ノワールに残留した1本です。調香は長らくルタンスを支えてきたクリストファー・シェルドレイクで、2005年からはシャネルの専属調香師、ジャック・ポルジュ(専属期間:1978-2013)とオリビエ・ポルジュ(同:2013~)の親子2代にわたるサポート役としても活躍し、最近ではコロマンデル(ゼクスクルジフシリーズ)のパルファムをオリビエ・ポルジュと共同調香しています。
香りとしては、名は体を表すのごとし、何の説明も要らない「オリエンタルなベチバー」この一言に尽きます。コクのあるアンバーに、カカオ分80%越えのダークチョコレートのギリギリまで甘さを足さない渋みが主軸の土臭いベチバーに溶け込み、ベチバーメインの香りにしては珍しく、マットなふっくら感を感じる味わいを醸し出しています。ベチバーだけでは硬質になりがちな香りにスムーズな柔らかさが加わり、控えめながらも深みがあって、つけ心地に緊張を伴わないバランスの良い香りですが、香り立ちが弱含みで持続も短いので、個人的にはもうちょっとパンチの効いた方が、せっかくの個性的な東洋のベチバーという魅力が引き立つかも、と感じます。つける量を増やせばいいのでしょうが、加減がいまいちわからない。最近買った密閉型ヘッドホンが、いい音なんだけど何故か出音が小さくて、耳を澄まして聞いている。ヴォリュームを上げてもいいんだけど、今度は耳に悪そうで…というジレンマに似ています。涼しい夜の寝香水に使い、6時間ほどで目覚めた時には跡形もなく消え失せていました。先日、朝からジェントルマンと出かける用があり、その時に彼がつけていたのがヴェティヴェール・オリエンタルだったのですが、つけて1時間頃の香気が「マットなふっくら感を感じる味わい深いオリエンタルベチバー」だとしたら、30分後にはその時自分がつけていたデッチマしか香らず、2時間後、ジェントルマンはただの汗臭いおっさんと化していたので、いくら日本人が持続性については評価基準の上位ではないと言っても、さすがにもうちょっと頑張れよ、と肩を叩きたくなりました。クロスレビューとしては「持続に難あり」で家族の総意に至りましたが、そこでポラロイドに映ったのがアイアンキング(1972−1973年放映)。
動力は水だけという超エコロジーなヒーローですが、変身後の活動時間がたった1分で、ここぞという時にエネルギー切れ。しかもアイアンキングの相棒役で武器は鞭1本だけという主人公の方が格段に強いという、何とも頼りないヒーローです。海外でも人気で、アメリカでは全話収録のDVDボックスセットも発売されましたが、このヒーロー物は、当時超人気アイドル俳優だった石橋正次(主人公の国家公務員)と日活スター浜田光夫(主人公の相棒でアイアンキングに変身)を子供向け特撮ヒーローものに起用した事でも有名で、ゲスト女優も当時最旬のアイドル歌手など非常に豪華でした。
今で言ったら田中圭と高橋一生がコンビで登場し、どっちかが変身する特撮もの(多分バランス的には高橋一生が変身すると思う)を、日曜の朝9時ではなく月9でやる勢いに近いのではないかと思いますが、人気俳優のギャラに相当経費を費やしたのか、敵方のロボットはほとんどバケツに手足の生えた程度、どいつもこいつもキャラクターデザインに達していない造作の粗い面々で、色々な意味で目の離せない作品でした。…って、ヴェティヴェール・オリエンタルは?はい、パウダリーな表情とコクのある、穏やかでとにかく長持ちしないベチバーをお探しの方にお勧めします。ベース香料としてはジャンル問わず使われるベチバーですから、フローラルだろうとシトラスだろうと、上になんでも重ねてOKです。そういうシチュエーションもありかもしれませんよ!