エキパージュは、名匠ギィ・ローベルがエルメスの為に作った最初で最後のメンズフレグランス、エルメスとしても初のメンズです。現在日本では終売なのか、エルメスの公式オンラインブティックでは、メンズフレグランスのリストにラインナップされているのはテールドエルメスだけ。確認しに行きたくても、エルメスブティックは敷居が高い(売っているものも高い)。そうやって、結構縁があるようでないようなエルメスですが、2か月前の今頃、ツイリードエルメスの内覧会に参加させていただきました。 紹介する香りはたった1種類なのに、1戸建のギャラリーを贅沢に使用し、若い人向けらしく自撮ブースや撮影ステージ、全身白をまとったイケメンがデザートや飲み物を配って、出入り自由ながら大盛況でした。通常、プレス向けの内覧会では、しっかりしたプレス資料や割と使いでのあるサンプルを配布する事が多いのですが、配布資料としては、入場の際ツイリーの香りのリボンと、帰りにサンプルアトマイザーを受け取っただけで、印刷物のようなものはなかったです。ヴィジュアル重視で、香りのコンセプトまで意識が回る層はターゲットではないのがよくわかります。
香りとしては、ゲラン(モンゲラン)もシャネル(ガブリエル)もそうですが、ツイリーもいわゆる若年層ご贔屓の最大公約数的なフローラル・ムスキー・ウッディ路線で、トップにフレッシュジンジャーを使っているそうですが、既に室内がツイリーのハートノートが充満していてよくわかりませんでしたし、率先してつけたい香りでもありませんでしたが、自分の年齢で使うなら、体温でベースが良く立ち上がる秋冬なら使えそうかな、と思いました。それにしても今年は大御所がどこも最大公約数的な大型商品を突っ込んできて、とにかく若い人しかレーダーにないのは、日本に限った話じゃないんだな、というのがわかりました。ゲランのファンコミュニティですら「もう、世の中は30過ぎたら女じゃない、って言っているのも明白同然ね」と、欧米の女性が嘆いている位なので、メインストリームは若い人にビジュアル重視でお金を使わせ、ニッチ系はロシア中東・中年富裕層に財布のひもを開かせ…というのは昨今のゆるぎない定石となり果てました。インスタグラムなどでニッチ系フレグランスのトレンドを牽引している欧米ブロガーも、見ていると若い人ではなく、殆ど40代以上の方です。むしろ作り手の調香師の方が若い感じです。会場では、腕に覚えのありそうなご年配のゲストも多かったのですが、スタッフが一生懸命「年齢に関係なくお使いいただけます」と説明していたのに少々無理を感じました。

そんな内覧会に一介の野良狸が直接招待されたわけではなく、当然えらい方の代打だったのですが、なぜあんたそこにいるの的視線を社会人らしい対応で打破すべく「代理できました」「代理です」と、広報の方をお願いしてお話を伺いました。
-物凄い盛況ですね。ここにいるのは、どういう方たちなんですか?
「まあ…色々ですね、インフルエンサーの方とか」

全身白ボーイズがスイーツをふるまう図
ちなみに、3枚目の左から3番目はブライアン・イーノですが、この数年後、ジギー・スターダストを卒業し、宇宙人から人間になったデヴィッド・ボウイとロキシーを脱退後、アンビエントな世界観を炸裂させていたイーノが合作で「ワルシャワの幻想」を作り、それにガビーンときたピュアディスタンスのヤン・エワルト・フォス社長が30余年後、いよいよ来月世界発売となる新作、ヴァルシャーヴァを作るわけです、がびがびーん。