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Shalimar (1925) chapter 1 : How Shalimar was born

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Cabaret LPT vol.6 "The Time Travellers 2"の中では大物中の大物、ゲランのシャリマーをご紹介します。作者は言うまでもなくジャック・ゲランですね。LPT読者でシャリマーの名前を聞いたことがないという方はあまりいらっしゃらないと思いますが、実はLPTではこれまで取り上げたことのないビッグネームの一つでした。まあ皆さんご存知ですから別にいいかと思っていました。
 
ちなみに私は、4年前から日本調香技術普及協会通称JSPTという団体が主催する、調香や香料の勉強会に個人会員として参加しているんですが、ちょうどキャバレー開催の2週間前がたまたまオリエンタル系香料の勉強会だったんですが、なんと勉強会の柱がまさかのシャリマーだったんですよ。もう、まるで2週間後、そこの素人が情けないのでちょっと入れ知恵してやってくれ、ってジャック・ゲランが天国から耳打ちしてくれたとしか思えない内容で、本当にビックリしました。これから勉強会で見聞きした事を、覚えている範囲で皆さんに右から左へお伝えますので、よろしくお願いします。
 

まずシャリマーの香調であるオリエンタル調についておさらいしてみます。オリエンタルとは、オリエント、つまり「ヨーロッパから見て」太陽が昇る東の国を意味していて、範囲としては中東からインド、東アジア、極東までを指します。あくまでヨーロッパ目線で勝手に決めていて、とにかく東の国は異郷の地、エキゾチックなんですね。何をもってエキゾチックと感じるか?決め手は「うちにないもの」ですね。つまり、ヨーロッパにはない香辛料、樹脂、動物が混然一体となった、甘くて重い「うちにない香り」はなんでも西洋人にとってはオリエンタルというわけです。
 
一応オリエンタル系の黄金律がありまして、
1)ベルガモット、レモン、ローズウッド(南の柑橘系)
2)バニラ、アンバー(甘々系)
3)クローブ、ナツメグ、シナモン(ホットスパイス系)
4)レザー、カストリウム、シベット(動物性香料)
5)バルサム、ベンゾイン(重々系樹脂)この1から5の組み合わせが基本になります。
 
これを香料別に分類すると、
天然香料:ベルガモット、レモン、マンダリン、ローズウッド、パチュリ、ベチバー、サンダルウッド、バニラ、オリス、トンカビーン
合成香料:バニリン、エチルバニリン、クマリン、マルトール、エチルマルトール
この辺りが欠かせません。
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シャリマー パルファム 30ml 2002年ロット
 
【シャリマーとは】
 
さて、いよいよシャリマーにフォーカスしていきます。まずシャリマーの「愛の殿堂」だの「タージマハル」だのというラブラブストーリーは、有名だしLPT的にそこは大事じゃないので割愛します。
 
シャリマーは、ゲランの2代目調香師、エメ・ゲランが手掛け、1889年に発売したジッキーに、その甥で3代目調香師のジャック・ゲランが合成香料のエチルバニリンを大量投入してできたのがシャリマーの原型というのは定説ですが、当時のもうちょっと詳しい話が先ほどのJSPTで出まして、もともとジッキー自体、合成香料クマリンとバニリンを投入した事で近代香水の歴史に残る作品なんですが、バニリン自体はもともと19世紀半ばからあった天然由来の香料で、すでに利用もされていた一方で、シャリマー試作時のエチルバニリンという、天然には存在しない合成香料はできたてほやほや。ジャック・ゲランと仲の良かった香料会社の御曹司(ジュスティン・デュポンさん)から「うちの新作使ってみてよ」と持たされたのが、既存のバニリンにエチル基を追加した(デュポン社の)新商品、エチルバニリンだったんですよ。バニリンと比べたら甘さと残香性が250%アップ(当社比)した、要はバニラ界のアスパルテームですね。
 
そこで、リッチでクリーミーなエチルバニリンにビビッときたジャック・ゲランが、ジッキーにエチルバニリンの大量投入したのがシャリマーのプロトタイプというわけです。まあ実際はそんな簡単な話じゃなくて、もちろんそこから何度も微調整を重ねたわけですが、ではここで、ジッキーにエチルバニリンを重ねるとどうなるか、実際にジッキーのパルファムと5%アルコール希釈したエチルバニリンを調香コースでも気取って、2本同時に嗅いでみていただくと、プリンのようなエチルバニリンがいい感じでジッキーをシャリマーっぽく変化させています。
 
結果はオーライ、調整を重ねて1921年には完成していますが、発売は4年後の1925年。もちろんこれはパリ万博に合わせ発売を4年延期したものです。のんきな時代です。今4年発売延期したら「死」を意味しますよね。その勝算あって、めでたくパリ万博では香水部門で一等を受賞、シャリマーは瞬く間にアメリカ進出も果たしました。現在でもシャリマーはアメリカで絶大な人気がありますね。アメリカ人バニラ大好きですからね。
 
香料提供:ルズ
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