La Parfumerie Tanu

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B683 (2016)

つけはじめ:レザーとスモークの香りの裏に微かに甘さがあります。この季節には良い感じです

昼:この時間でかなり薄くなってきました。
15時位:昼から薄まり方は変わらないが甘い感じが強くなってきました。
夕方:残り香がかなり甘い感じですが悪くはないです。
ポラロイドに映ったのは:木枯らしの中、年季もので襟がかなり擦り切れてるが仕立ての良いコート着てる男、髪に脂気はない。
 

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B683 マルク=アントワーヌ・バロワ初のメンズフレグランス
Tanu's Tip :
 
フランスのクチュリエ、マルク=アントワーヌ・バロワ初のメンズ・フレグランス、B683です。メンズといえばジェントルマン。ジェントルマンといえばポラロイド。というわけで、今回はジェントルマンに助太刀頂き、B683を可視化してもらいました。
 
オーナーのマルク=アントワーヌ・バロワ氏(Marc-Antoine Barrois,34)は、1903年に北フランスのリール郡マルカン=バルールに創業した名門紡績業、バロワ=トゥールモンド社の御曹司で、かつて日本でも大丸で展開していたオートクチュールデザイナー、ドミニク・シロやエルメス時代のジャンポール・ゴルチェに従事後、26歳で2009年に独立。現在はオーダーメイドのメンズウェアの他にアクセサリーやジュエリーも手掛けており、パリ9区・ビュタップ通りにある完全予約制のアトリエでは、メンズものならタキシードからジョギングスーツまで、何でも仕立ててくれるそうです。ブランドの旗艦店はパリの高級セレクトショップ・コレットですが、今年末でコレットが閉店してしまうため今後の展開が気になるものの、フレグランスに関しては公式オンラインストアを置かず対面販売を基本とし、フランス各地及び西欧各国へ地道に販売拠点を増やしています。最近メンズでも増えてきたEDP1濃度、100mlサイズ145ユーロのワンサイズです。日本へ発送対応している取扱店は現在リアンヌ・ティオ・パルファムのみです。

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B683 EDP 100ml

調香はラ・フィン・ドゥ・モンド(2013)などのエタリーブルドランジュ品やエンジェル・ミューズ(2016、エンジェルの派生品)、ヴァン・クリーフ&アーペルのコレクシオンライン他を手掛けた若手実力派、クェンティン・ビッシュ(ジボダン)で、奇しくもバロワ氏と同い年。意気投合した二人は、バロワ氏がこよなく愛する星の王子さま(サン=テグジュペリ作)の生まれ故郷、小惑星B612にちなみ、バロワ氏の生まれ年である1983年6月からB683と命名し共同制作。「とてもエレガントで洗練されているけれど、デリケートで決して出しゃばることのない、血の通った人間味溢れる香りをまじめに作りました。隅々まで僕らしさが現れていて、自分でもすごく気に入っています。B683は僕の架空の小惑星です(バロワ氏談)」と処女作の出来栄えには大変ご満悦のもよう。

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「出来たわ!」「すてきよ!!」
香りとしては、リアンヌさんのお店で試香した時はビターだが甘さもきちんと感じ、女性がつけたらスーパークールなレザーシプレに感じたのですが、帰国後つけてみると、そこは女人禁制な男の世界。男の肌、男の持ち物、男の服…サフランとパチュリがひんやりとしたレザーを彷彿し、ペッパーの辛味が主張する、立ち上がりのスモーキーなレザーバーストが、女性がつけたら借り物になってしまいそうに香り、土地の違いでここまで変わるのも驚きました。非常に男性らしさが前面に出た、しかし作者の思惑通り全く出過ぎたところのない、真摯なスモーキーウッディレザーで、ミドル以降は心地よいムスクとラブダナムの甘さが肌の上にしっとりと残ります。立ち上がりのハッとする印象から比べミドル以降は接近戦でないと感じないほど大変穏やか、かつ消え入り方が上品で、悪目立ち・悪残りが一切なく、流行り廃りのない良くできた男の香りで、先月ご紹介した「イカすジェントルマン」に登場した、俺カッコいいだろ?と自分から標榜しているような香りとは対角にあると言っても良いでしょう。肌につけた瞬間、ジェントルマンも「これは良くできてるな!」と声に出していました。ポラロイドに映った「襟の擦り切れたコート」というのも、ジェントルマン曰く「バーバリーやアクアスキュータムのような、年季はいっているが仕立ての良い古着を、きちんと自分のスタイルで着こなせている、脂っこくないスッキリしたカッコいい人」という好印象なのだそうで、自分自身古着好きでもあるジェントルマン流の賛辞です。

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パッケージにはB683の世界が凝縮されたカードセットが。このイラストが良い
当世クチュリエの作った香りといえば、マルタン・マルジェラのように派手なコンセプト推しのフレグランスが話題になりがちですが、今回のB683のように派手さや斬新なコンセプトの浴びせ倒しではなく、いたって王道をいく作品と「できるだけ手から手へ、言葉を添えて、信頼できる香水店の対面で売りたいんだ。オンラインの様に、顔の見えない売り方はしたくない」といい意味でオールドファッションで行く姿勢が共感できるバロワ氏。今秋キャンドル”No.6"(アトリエのあるビュタップ通り6番地に由来)が新たに仲間入り、フレグランスの次作はレディス物になるそうで、メンズウェア専門のクチュリエが作るレディスフレグランスに現れる女性像とはいかようか、今から楽しみです。
 

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