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Encre Noire (2006) / Yuzu Man (2011) | AGTP4 : Gentleman's favourite, Modern Classics

 【ジェントルマンのお気に入り モダンクラシック香水編】
 
Encre Noire EDT / Lalique (2006) 
 
後半のトップは、ラリックのアンクル・ノワールです。黒インクという意味ですね。1885年創業のガラスメーカー、ラリックは、コティやニナリッチなど歴史的名香のボトルを数々作ってきて、創業者ルネ・ラリックの孫娘であるマリークロード・ラリックが1992年にラリックのフレグランスラインを立ち上げました。毎年限定品のクリスタルボトルが登場していて、コレクターズアイテムにもなっていますが、大概は「瓶は一流、中身は二流」的扱いで「瓶は重いが中身は軽い」と、あまり評価の高い香りがないのですが、その中でも異例の高評価を得て、現在もロングセラーとなっているのが、このアンクル・ノワールです。ジェントルマンも大絶賛で、レビュー終了後めでたく私物に昇格しました。
 
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調香は、メジャー系の大御所で、LPTでも特集をしたメゾン・ヴィオレの指揮も執っているナタリー・ローソンが手がけています。発売から10余年経った今でもアンクル・ノワールの極めて淡麗辛口な香りは、全く古さを感じさせず、むしろ「この香りが古臭く感じるのは、いつだろう」と思うほど時間に支配されていません。ビターなベルガモットがバーストしてベチバーとサイプレスがドカッとくる、日本人には懐かしい「硯ですった墨の香り」のシンプルな構成で、お情け程度にベースのムスクがありますが、そばで嗅いでも甘さは全く感じないですね。メンズフレグランスって、ベースが甘重さが苦手でつけられない、だから使わないという日本人男性って多いと思うんですよ。そこを巧く回避した、アンクル・ノワールのような香りで経験値を上げ、じわじわと守備範囲を拡げているジェントルマンのようなポテンシャルの高い男性は少なからずここ日本にも居ると思うので、フレグランス初心者の男性がそばにいたら、ここはひとつシトラス系なら嫌いな人いないと無難にアドバイスせず、こういうドライで脇の下に涼風の吹くような、それでいて樹木の静謐な雄々しさもある、アンクル・ノワールのような香りを「これ、いいね」と言えるくらいには、周りの方が責任を持って育ててあげて欲しいです。
 
アンクル・ノワールは国内発売がないみたいですが、並行輸入品やディスカウンターで日本でも普通に買えますし、このアンクル・ノワールも100mlで3,000円ちょいで手に入ります。余りにディープにディスカウントされるので、てっきりインターパルファンがライセンス製造しているのかと思ったら、アート&フレグランス社という、れっきとしたラリック直系の香水会社が販売元でした。
 
Yuzu Man EDT / Parfums Caron (2011) ポラロイドに映ったのは:ダダ(三面怪獣)
 
はい、次は今年親会社のアレスグループに売りに出され、LVMHもイラネー、あそこもイラネー、と誰が買うのかなかなか決まらなかったところ、ユダヤ系大富豪、ロスチャイルド家の分家のひとつ、パリ・ロチルド家のアリアンヌ・ド・ロチルド(52)が買うことになり、クラシック香水ファンはとりあえず胸をなでおろしたキャロンのユズマンです。このアリアンヌさんという方が、長年のキャロンファンだった(特にオルエノワール)事から今回の買収につながったそうですが、お荷物になったお払い箱のクラシックブランドを「好きだから」という理由で一発買える財力、持ってみたいですね!私だって、あれもこれも蘇らせてゾンビ帝国を築き上げたいものです。ま、財閥ですから当然お金にならなかったらさっさと売り飛ばすんでしょうけど。
 
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で、そのキャロンが7年前に発売した、オリジナルの新作メンズとしては最新のユズマンですが、本名は単刀直入に「ユズ」。横に小さく「マン」と書いてあって、ゴロがいいから通称ユズマンと呼ばれています。秋の味覚のユズは、中国原産ですが最大の生産・消費国はここ日本で、英語でもユズと呼ばれ、ヒーリーのノート・ド・ユズとか、新作も出ています。だから7年前いきなり「ユズ」という名前で登場したユズマンは欧米ではエキゾチックなシトラスとして斬新だったはずですね、だってユズはヨーロッパに生えていませんからね。われわれ日本人にはこの香り、非常になじみ深くて親しみを感じますね。ただユズマンは、爽やかなユズだけが主役ではなく、ユズが落ち着いた頃から顔を出す、何とも言えない優しい甘さ。イチヂクやピスタチオ、熟したプラムみたいな、おうちの果物かごからふわっと香る「家庭の寛ぎ」にも通じる美味しい甘さのフルーティ・フローラルが、バジルやレモングラスなどのハーブやちょっとだけスパイシーなウッディノートに支えられながらふんわり香ります。ジェントルマンも、試香を始めた頃から、何気ない会話の中、急に「ユズマン、いいねえ、特につけて2時間過ぎたくらいからとてもいい」と言い出したほどの高評価でした。女性にも良質なサマーフレグランスとして年齢を問わずおすすめしたく、またこれから香りをつけたいというお子様へのプレゼントにも男女問わず最適だと思います。
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しかしながらポラロイドに映ったのは、ウルトラ怪獣史上屈指の傑作、ダダ。なぜダダ?それはきっとジェントルマンはダダが大好きなのと、ユズマンが折々表情を変え、その度心地よく感じたことから「三面怪獣」であるダダを彷彿したのでしょう。いい香りを嗅いで、好きなものを思い出す。最高じゃないですか。決して香りがダダっぽい訳ではありません。
ちなみにキャロンはカネボウが代理店でしたが、倒産で一時日本撤退して、数年後の2010年、現在の輸入代理店であるフォルテが再上陸させて、オンラインのみで販売継続しています。ユズマンは125mlで税込11,880円ですが、ディスカウンターでしたら4,000円ちょっとで購入可能です。

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昭和の日本人体型が色濃く反映したダダの顔のデカさとスタイルの悪さに場内失笑
それでは、次はジェントルマンのお気に入り、レディス香水編として、過去愛用したレディス香水を二つご紹介します。
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