La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Ambre Sauvage (2015)

立ち上がり:アンバーの香りは一番感じるかも。甘さはあまり感じない
 
昼:スパイシーな香りが強くなってきました。アンバーは背景に消えた?
 
15時位:何だろう・・・洗剤で洗いたての服みたいな香りになってきた。この香りは、これはこれで悪くないですが、香水という感じでは無いかも。
 
夕方:洗いたての服のような香りのままフェイドアウト。謎だ。
 
ポラロイドに映ったのは:草原で洗濯物干してる、洗剤コマーシャルの絵
 
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Tanu's Tip :
 
アンブル・ジェントルマン最終回は、アニック・グタール(旧)の限定プレステージライン、レザブソリュ・シリーズの中から、既に終売のアンブル・ソヴァージュをご紹介します。そもそも限定販売なので、廃番ではなく終売と言うのが良いでしょう。このレザブソリュ・シリーズというのは、現在のグタール・パリがまだアニック・グタールを名乗っていた時代の終盤戦に登場した高級ラインで、2015年にまず3種(1001ウード、ヴァニーユ・シャルネル)、追って2016年にローズウードが加わり、全4種となりました。調香師はローズウードのみブランドオーナーのカミーユ・グタールとイザベル・ドワイヤンの共同名義、他3作は不明です。巷での評価は若干微妙で、特に1001ウードは「価格の割に大したことがない」「どっちづかずで焦点が定まっていない」「ウー度☆☆☆☆☆」とあまり好意的な評価を得ていないものの、シリーズライン中最も巷で高評価だったのがこのアンブル・ソヴァージュでした。
日本でもISETANサロンドパルファンなどでの数量&限定販売扱いで登場し、サロンドパルファン2015に初登場時のキャッチコピーは「野性的なセンシュアリティを演出ー伝説や聖書などの世界に登場する謎の香り“アンバー”に魅せられた魅惑の創作。弾けるラベンダー、柔らかなベロアを思わせるイリス&バニラ、ザラリとしたパチョリ… 手触りを感じさせるような香りの表情を楽しんで。アンブル ソヴァージュ レザプソリュ オードパルファム 75mL 42,012円、11月18日(水)イセタンサロンドパルファン限定&数量限定発売」とありました。なんとも大風呂敷なコピー&国内価格ですが、早々に値崩れも発生し、実際私も国内価格の1/3程度で購入する事が出来て、差額の2/3はどこへ行ってしまったのかという喪失感すら感じました。
 
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立ち上がりはソヴァージュと名乗る位気骨のあるアニマリックなアンバーが拡がり、ウードも同時多発していそうな渋みのあるアンバーが雄々しく香ります。つけて数時間はそんな調子で中々名に恥じず確かに野性的に香るのですが、ミドルノートに進むにつれ、欧米シャリマーが築いたオリエンタルスタンダードであるバニラたっぷりのスイートなアンバーローズにシフトしていき、ラストは非常にまろやかなバニラアンバーに落ち着きます。オリエンタル系の魅力である持続の良さも満喫できる丁寧なつくりで、フェミニン寄りのユニセックスに仕上がっています。
 
さてアンブル・ソヴァージュはレギュラーラインのアンブル・フェティッシュに酷似している上、終売を確認すべくグタール・パリ広報に問い合わせたところ、当のグタール側も「当社といたしましては、皆様に新しい作品との出会いをお楽しみいただきたく、旧作の一部を製造終了する場合がございますが、処方はすべて保管してありますので、今後復刻の可能性もございます。グタールでアンバーをお探しでしたらアンブル・フェティッシュをお試しください」との回答がありました。 スパイシーな苦み成分はもっとも高配合で、シャリマーファンにも訴求力がありますが、アンブル・フェティッシュは国内販売がないのと、シャリマーの方がぶっちぎりで実売価格がアフォーダブルだし入手性も抜群なので、アンブル・ソヴァージュの代替品なら普通にシャリマー(EDP,あればオードアラヴァニーユ,予算が許せばP)をおすすめします。
 
しかしながらジェントルマンのポラロイドに映ったのは、これはどう見ても柔軟剤のCMかなんかの爽やかな一場面。たぶんミドル以降に展開する、王道のアンバーバニラがソーピーに感じたのだと思いますが、こんなにいい香りの洗濯洗剤は世の中にないし、ましてやいつまでも香りが不愉快に腐れて残る柔軟剤など出入り禁止です。先日「アロマティックウードの香り」と謳っている柔軟剤をネタで使ってみましたが、ウー度どころか何の香かわからない位ケミカルな刺激臭で、洗い直しても残るほどの破壊力に噴飯しました。ちなみにタヌ家での洗濯洗剤は、乾いた後殆ど香りが残らない、昔ながらのニュービーズ(粉末)です。今回のアンブル特集は3作ともジェントルマンと私が実装した際の香り立ちが異なり、同じ香りをつけているとは思えない展開に驚きました。今回ご紹介した3作は、どれも作品の出来栄えとしては及第点以上で、21世紀のアンバーらしく、昨今流行のアイリスを多用しているおかげでパウダリー感がアップしているのも粉物好きとしては嬉しい点ですが、結局の所、欧米人は官能だの神秘だの、元素数だの野生だの皇帝だのと言ったところで、アンバーの先にソーピーな清潔感とか家庭の安心感、お母さんが洗ってくれた洗濯物の匂い、みたいな普遍的なセーフティゾーンがハッピーエンドにあって欲しいのかもしれない、とうっすら感じた今年最後のポラロイドでした。
 
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