La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Cuir Cavarier (2019)

立ち上がり:これはそんな刺激的な香りはしない、が、重い。なんだろう?あまり経験したことのない感じ、土と薔薇が一緒くたになったような

昼:レザー系に感じてきました。何にせよ重い。

15時位:少し甘い香りが出てきたか?この時間当たりでようやく自分には馴染んできたような気がする

夕方:ムスク系の微かな香りになってきました。最初からこういう感じなら使えるんだけど。

ポラロイドに映ったのは:頭に花飾りをつけた菅原文太。めちゃくちゃだな・・・すいません。

 

Tanu's Tip : 

2019年に登場したMDCIの新シリーズ、Painters and Perfumersより、続いてはキュイール・キャバリエをご紹介します。

調香は、ジボダンやシムライズで長らく腕を振るった後2014年に独立、現在は自身の調香アトリエLAB scentを率いるオーナー調香師、ナタリー・フェストエアが手がけています。一般的には、ジボダン時代に手掛けたオードメルヴェイユ(2004、エルメス)や、オナー・マン(2011、アムアージュ)、廃番後もカルト人気を誇るニュイ・アンディーヌ(1994、ジャン=ルイ・シェレル)、一連のコムデギャルソン作品が有名ですが、LPTではCabaret LPT vol.1「Vive la Poudre - 粉物ばんざい - 」でご紹介したプタンデパレ(2006、ELdO)でご存知の方も多いと思います。

ここで1点ナタリーさんの姓について、カナ表記の訂正です。Nathalie Feisthauerと、ナタリーはわかるのですが苗字がドイツ語特有の綴りに見えるため、LPTでは長らくファイストハウアー、もしくはファイスタウアーとしていましたが、彼女はフランス人のため、どうもしっくりきませんでした。わからないことはご本人に確認するのが一番です。「お名前が読めないので、申し訳ありませんが発音を教えていただけませんか」と直接メッセージを送ってナタリーさんに確認したところ「私の苗字はフランスでも難読姓だから心配しないで!読みなりに綴るとFestoeaire、つまりフェストエアよ」とすぐに回答をいただきましたので、今後はナタリー・フェストエアと表記させていただきます。なぜキチンと確認しておきたかったのか?それは、ナタリーさんがまだ紹介していないMDCI作品や、更には今後発売されるピュアディスタンスの次の次の新作(今秋発売予定であるルビコナの次)も手掛けていて、これから彼女の作品及びお名前は、LPTに頻出する事になるからです。

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キュイール・キャバリエ EDP 75ml ナタリー・フェストエア作

キュイール・キャバリエがテーマとする絵画は、19世紀前半にロマン派絵画の先駆者として活躍し、後の巨匠ドラクロワ等に多大なる影響を与えるも、32歳で病没した薄命の天才画家、テオドール・ジェリコーの代表作「突撃する近衛猟騎兵士官」。ジェリコーはこの作品をなんと21歳で描き、サロン(官展)に出品し金賞を得るなど破竹の勢いで世に出ましたが、31歳の時に落馬したのがきっかけで持病の脊髄結核が悪化し、翌1824年に亡くなりました。こんな凄い絵を残しながら、辞世の言葉は「まだ、何もやっていない」だったというから、いかに無念で亡くなったか感じ入ります。

 

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テオドール・ジェリコー「突撃する近衛猟騎兵士官」(原題:Officier de chasseurs à cheval de la garde impériale chargeant : Officer of the Chasseurs commanding a charge, 1812)

ルーブル美術館収蔵

香りとしては、今回紹介した中では唯一ユニセックスに使える香りで、女性がつけても借り物になりません。2010年代から盛んに見かけるようになった、アーシーな土臭さが特徴のシプリオール(ナガルモタとも呼ばれる。植物の根から抽出)がキーノートとして用いられており、このシプリオールがベースにあるウードの底上げになっています。全体に立ち上がる香気はスッキリしたローズウードで、ジューシーなタンジェリンと穏やかなアイリスにローズが重なり、ローズの酸味が煌きとなっていますが、肌表面にはアニマリックなウード感がなまめかしく漂います。私の眼下に浮かぶ色味はヘアライン加工を施したイエローゴールド、レザー感を出しているエレメントがサフランなので軽やかで、馬の鞍と言うよりは、良くなめしたしなやかな手袋の革を彷彿する質感です。

持続もよく、今この梅雨真っ最中や、これからの暑い季節に使っても、胸中の粗熱を鎮める爽快感と、壮麗な存在感を両立しています。ただ、このように私が実装した際にはまったく重さは出てこなかったのですが、ジェントルマンがつけると重火器級のヘヴィな香りに体感したようで、だからと言ってポラロイドに映ったのが「頭に花飾りをつけた菅原文太」というのもどうかと思いますが、文太が花飾りをしているようなスチル写真なんかないので、責任をもってジェントルマンに適切な画像を探してもらったところ、菅原文太をいやがおうにもスターダムにのし上げたヤクザ映画の金字塔「仁義なき戦い」の場面となりました。百花繚乱の紋々にさらし、ふんどし、日本刀。もう、かっこよすぎます。かといって決してキュイール・キャバリエにはヤクザ上等なイメージは微塵もありませんのでご安心を。個人的にはMDCIのメンズではかなりおすすめの作品です。

ウー度 ★★☆☆☆

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「仁義なき戦い」の文太。デカパン風のローライズさらし&ふんどしが超セクシー

 

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