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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Murasaki(1980)

国際的ヒットとなった初代インウイ(1977)発売から3年後、イメージも国際的なインウイとは対照的な和の佇まいながらも、インウイと同じく資生堂インターナショナル配給の国際モデルとして大々的に売り出されたのがむらさき(1980)です。発売当時はパヒューム、オードパルファム、ファンシーパウダーの他にソープなどがセットになったコフレも多数あり、仏具を彷彿するような端整な濃い紫一色のボトルには縦書きの毛筆体で「むらさき」と印されているのが、海外のファンにはたまらなくジャポネスクだったに違いありません。1990年のボトルリニューアルではパヒューム(16ml、10,500円)、オードパルファム(60ml、3,150円、ピュアミストもあり)と縮小、2009年には他の定番と同じくパヒュームは廃番となりました。またむらさきは他の定番品と違い、国内外の熱心なファンが1990年のボトルリニューアルの際「香調が変わった」と香調自体もリニューアルしてしまった、と結構な物議となりました。ここでは透明な流線型のボトルにむらさきのキャップがつき、横文字で「Murasaki」と進化したリニューアル後のパヒュームを軸にご紹介します。

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リニューアル版むらさき パヒューム(2009年廃番)

リニューアル後のむらさきは、個性的なビターグリーンの効いたシプレフローラルで、つけた瞬間かなりハードなガルバナムの一撃で始まり、その後は徐々に青みの強い花や草に合わせパウダリーになっていきます。公式な香調ではバラ、菊、ユリとなっていますが、そのどれも突出しては感じることはなく、トップのガルバナムとアイリスがひたすら尾を引いている感じです。シャネル19番の立ち上がりにも似ていますが、19番よりもドライで終始甘みが大して出ることなくミドルノートのまま長く香っています。ここが、リニューアル前のむらさきと記憶の中で違う点で、オリジナルのむらさきはもう少し甘重みがあり、一方で素直にいい香りというよりはもう少し一筋縄ではいかない不可解な成熟性さがあったような気がしますが、全体的な印象はさほど変わらず、ふくよかさが多少減った程度で「ああ、むらさきだ、懐かしい」と普通に体感できます。ただしこれはリニューアル後のパヒュームの印象で、1990年にボトルリニューアルしたオードパルファムをつけたときは「随分造作が粗くなったなあ」というのが第一印象でしたので、皆さんはこの辺を言っているのだと思います。

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オリジナル版むらさき オードパルファム(1990年廃番)

他の定番品は充分に明快なクラシック感を保持しているのに対し、過去にも未来にも、和にも洋にも辿り着けない境界線にいるむらさきは、現行の定番品の中で、ある意味難易度の高い香りといえるかもしれません。ちなみに、19番を代表とするガルバナムやアイリス、ヘディオン等を主軸とするグリーンノートは、よく香水の本ではライトフレグランスや初心者向けの香りとして紹介されていますが、このグリーンの部分が案外肌に馴染まずいつまでも主張し、拡散性も高いので体調によっては悪酔いする事もあるため注意が必要です。

Apr. 2011

 

追記 Jun.2016

未使用品のオリジナル版むらさきが入手できたので、久しぶりにアーカイヴからサルベージしてみました。5年前に紹介した通り、確かに現行品はオリジナル版と比べ香調が変わっており、オリジナル版の、昭和の資生堂らしい華奢な女性にしか出せない、計数しがたい色香がベースにきちんとあり、生まれつき胸板の厚い海外のファンには、この願っても手の届かない胸板の薄さがことさら美しく感じられたのでしょう。

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南無〜