La Parfumerie Tanu

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The Undead : Houbigant 3, reborn with Perris family

それでは、最後のムエット、チャプター5を出してください。ムエット15番から18番、4本です

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ボトルに名入れ中のエリサベッタ・ペリス(左)と長男のジャンルカ・ペリス(右)、ヨーロッパのデキる青年らしい、ピッカピカのセクシーユニバーサルハゲ
2005年にウビガンを買収したぺリスグループは、ロジャ・ダヴの経営コンサルタント会社、RDPRにリブランディングを依頼します。RDPRのサイトは、現在非表示ですが、当時のRDPRには、ロジャダヴにコンサルを頼んだ会社の謝辞がトップページに掲載されていて、ウビガンは筆頭で登場していました。販売路線が決まり、ウビガンはぺリス・グループ傘下のロフト・ファッション・アンド・ビューティ・ディフュージョンより販売開始、ジャンルカ・ぺリスと妹のエリサベッタが経営の中心になります。上の写真の方ですね。ご夫婦ではなく、お兄さんと妹です。イタリアって、家族経営、兄弟経営ってホント血族の絆が濃ゆいですね。日本ではあまり話題になりませんが、テチアナ・テレンチも今2代目で、あそこも兄妹でやっています。
2010年には、後半の冒頭でお試しいただいた、ロジャ・ダヴ監修のもとフジェール・ロワイヤルの復刻を果たし、2年後の2012年、ウビガンとしては約四半世紀ぶりに新作のオランジェ・アンフルールを発売します。ムエット15番ですね。ネロリ好きにはたまらない、ジューシーなオレンジフローラルですね。ウビガンはオランジェ・アンフルールを皮切りに、毎年1作くらいのペースで新作を発売、第2弾がムエット16番のイリスデシャンです。
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イリスデシャン(2014、マチュー・ナルダン作)EDP
21世紀のウビガンは、クラシックブランドらしく、また21世紀のトレンドであるパルファム復古にちなみ、レディスの新作は基本的にオードパルファムとパルファムの二濃度発売されます。15番のオランジェアンフルールも、16番のイリスデシャンも、ムエットはパルファムです。このパルファムがもう、ミドル以降本当に滑らかで奥行きがあって、とても良いんですよ。オードパルファムは、使いやすいさっぱりアイリス、という感じですが、パルファムはアイリス度は控えめで、むしろ中心になる花香料のローズ、ジャスミン、イランイランといった王道フローラルと、ベースのサンダルウッドやアンバー、ムスクがとてもクリーミーで心地よくて、オードパルファムではここまで展開しませんので、もし予算が許されるなら、イリスデシャンはパルファムをおすすめしますし、私もいつかフルボトルで欲しいです。
 
2017年、お高いウビガンから一馬身お高いライン、コレクシオン・プリヴェが登場しました。一応19世紀後半から歴史に残る作品を出してきたブランドなので、アーカイヴに事欠きません。このラインで登場したのが、最後のムエット17番と18番の、エッセンスレアです。

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エッセンスレア。左:2018年版 右:1976年版 いずれもジャン=クロード・エレナ再処方
エッセンスレアは、最初1928年、ロバート・ビエナーメが手掛けた、当時よくあるフローラル・アルデヒド系作品として登場した後、戦後再発するにあたり、巨匠、ジャンクロード・エレナが駆け出し時代の1973年、フランスからニューヨークにわたり、ウビガンとの初仕事としてアメリカ人調香師と共同調香したもので、17番は1976年発売の最初の再発ものになります。18番は2018年、同じくエレナが2度目のリメイクを手掛けたもので、76年版は時代感が色濃い、ウッディもアルデヒドも強めの硬いフローラルですが、2018年版は、ミニマリストのエレナさんの作品とは思えない位、香料過多な生々しいジャスミンフローラルに仕上がっていて、セルフカバー作品、肩に力が入りすぎ!というのが率直な感想です。路線としては、76年版エッセンスレアよりは、同じくご本人が、同じ1976年に手掛けた、ヴァンクリーフ&アーペルのファーストから、アルデヒドのキーンとした感じを抜いた感じに近いです。
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(左)アリッサアシュレィ・ムスクエクストリーム(2009)EDP、廃番 (右)ペリス・モンテカルロ ムスクエクストリーム(2012)EDP
最後に、ウビガンを手中に収めた、もとい華麗に再生させたぺリスグループは、ウビガンに続き2009年、サブブランドのアリッサ・アシュレィもリブランディング、高級ラインをドラッグストアラインとは別途立上げます。テーブルにあるのはその高級版アリッサ・アシュレイのムスク・エクストリームです。ドラッグストア版から濃度150%増し、当社比ってところで基本は同じです。また買収ビジネスと併行して2012年、自社ブランドであるペリス・モンテカルロを創立、ジャンルカ、エリサベッタをはじめ、ミケーレ・ペリスの4人の子供で経営しているので、ロゴマークはPが4つ、ぺリスのPでできています。

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(左)アリッサアシュレィムスク (右上)ぺリスモンテカルロ・ムスクエクストリーム (右下)アリッサアシュレィ・ムスクエクストリーム すべてイタリア製造
ぺリス・モンテカルロは日本でもビオトープが代理店で、ノーズショップで売っているので、お試しになった方も多いと思いますが、ぺリスの中でムスク・エクストリーム(2012)というのがあって、これ、正直、先ほどお話しした高級版アリッサ・アシュレイのムスク・エクストリーム(2009)とほぼ同じ。どちらもメイドインイタリーです。ペリス・モンテカルロのムスクエクストリームの国内価格は100ml24,200円。アリッサアシュレィ版ムスクエクストリームは日本未発売ですが、現在は廃番のようで、デッドストックのヨーロッパ実売価格は100ml30ユーロ、3500円ちょっとです、ぐえ。体感としては、まあ百歩譲って、ぺリス版ムスクエクストリームのほうが、アリッサアシュレィエクストリームより、濃度5%増し位で、7倍増しではありません。ちなみにどうでもいい話ですが、ぺリス・モンテカルロ製品は、本年2月にこのキャバレーを開催するにあたり、チェックした輸入代理店直販サイトでは「原産国:モナコ公国」となっていましたが、テコ入れがはいったのか、現在は「原産国:イタリア」と修正されています。箱にはメイドインイタリーと書いてありますしね。ドラッグストア版もメイドインイタリー。という事は、わざわざ本社機能のあるモナコ国外となるイタリアで製造させる際、工場を分けるなど不経済なことはせず、同じ工場で作っているはずで、香料の融通もあるとしたら、この価格差は何なのだ、なんか、こんな素人でもすぐ見分けがついてしまう事実の捏造は、後でお笑い草になるので、あまり好ましくないと思っていたら、8月のキャバレー本番後にはすっかり修正されていて、半年も延期になった私の猛烈な殺気をどこかで感じたのかもしれません。こうやって、直近の事項も今を生きる当事者の都合が良いように書き換えられていく。これが歴史です。誰が悪いのではなく、これが歴史だという事をお伝えしたかっただけです。
 
それでは、これで終了いたします。お聞き苦しいところがあったと思いますが、最後までお付き合い本当にありがとうございました。
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