La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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La Belle Helene (2011)

La Belle Helene (2011)

2011年の発売後、公式ウェブサイトにおいてずいぶんの間紹介文が書きかけで進まなかったのを見た頃から「ひょっとして、このメーカー、本当に商売っ気がないのかも」と本気で心配になってきたラ・ベル・エレーヌは、調香はパチュリ・パッチ、ゾンカ、タンブクトゥなどラルチザン・パルフュムールの一連の代表作やアムアージュのジュビレィションXXV(メンズ)、オーディタリなどのニッチ系ではお馴染みのベルトランド・デュシュフュールで、19世紀半ばに初演されたジャック・オッフェンバッハのオペレッタ「美しきエレーヌ」より名前を拝借しています。

一応、この香りはキンモクセイを主軸としたダークグルマンなフローラル・シプレと評されていますが、立ち上がりから全体的な印象は「酸っぱいアイリス」で、ここ日本ではアイリスが一番強く香ります。運転手がアイリスで車掌がキンモクセイ、と言ったところでしょうか。公式ウェブサイトではデュシュフュールの十八番である’透明感’に厚みが加わり、香りの後押しとなっているシプレだ、としていますが、確かにベースのパチュリやオークモスが効いているし、肌表面ではMDCIものにしては結構まじめにミルラだのアンバーだのが香っていますので、単なる透明感には終わっておらず、冷感と温感が入交り、灰色と紫がだんだら模様になって、オレンジが点在しているような色彩を感じる、酸っぱいアイリス、はたまた渋めの果実…依頼したマーシャル氏ご本人も説明しかねる何とも複雑な香調に、ようやく何だか面白いものが出てきたかな、という感じです。MDCIの女性物の中では一番胸板が厚く、男性にもお使いいただけると思います。ちなみにMDCI製品の現物をロジャ・ダヴ・オート・パフューマリーで見かけたときの、ボトルの第一印象は「意外に小さいな」でした。そして店頭で相当いじられたらしく、彫刻型ストッパーの鼻や肩が男女ともに手垢でテカテカに黒ずんでいて、想像通りの展開に涙腺が緩くなりました。


いつかみんなのおうちで飾ってもらえるのを楽しみにしているよ!

 

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