La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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The World of Perfumed Soaps 5. British companies

4)イギリスのトイレタリー会社

 

  • ヤードリー(日本未発売) 

1873年発売〜(ラベンダー石鹸)創業1770年の老舗パフューマリーですが、イギリス企業の行く末としてはご多分に漏れず左前、ついには2005年、インド第5位の富豪、ジャタニア家に買収されるも2012年に同じくインド系巨大IT企業、ウィプロのコンシューマーケア部門へさっさと転売されてしまいました。ただし買収先が大手IT企業らしく、現在はオンラインショップが充実しています。何と言ってもヤードリーと言えば、自社ラベンダー畑を所有している程、その胸がすくように弾けんばかりのシャープかつ奥行きのあるラベンダー香が有名かつ自慢ですが、ブランドの顔とも言うべき天然ラベンダーオイルをふんだんに使用したラベンダー石鹸は1873年発売、現在ではイギリスを始めアメリカやマレーシア、インドでも生産されています。値頃な浴用ラインから高級箱入りまで松竹梅あり、イギリス生産ラグジュアリーラインのラベンダー石鹸は、なんと天然トリーモスオイルまで配合されているこだわりの処方。香水石鹸とは思えない、ドブ板のような精油丸出しの地色をわざわざ色素を入れてまで作りあげている所に、石鹸は見た目ではないという気概を感じます。とはいえ、本国イギリスにおいて一般的にはすでに過去のブランドとなってしまったようで、いわゆるノスタルジー客しか買わないアイテムらしく、毎週木曜日に奥さんと地元スーパーや商店街で買い物をするのが何より楽しみな現地男性Wさん(81)によると、1960年代から70年代にかけて非常にポピュラーだったヤードリー、男性用化粧品も充実しておりご自身もラベンダーのアフターシェーブを愛用していたが、最近ではすっかり一般的なスーパーやドラッグストアではみかけないそうで、少なくとも若い子は名前すら知らないだろうし、中年女性がノスタルジアで使う以外は、国内でのニーズはなきに等しいのではないか?とのこと。現在W翁にローラー作戦依頼中。日本ではわかばが代理店でしたが、わかばの倒産を機に日本撤退、3個入ラベンダー香水石鹸が1500円と手頃な価格で販売されていましたが現在は国内取り扱いなし。やっぱりお土産か並行輸入品通販などで細々と入手するしか方法はないですが、もし見かけたらラベンダー好きでなくとも惚れ惚れすること間違いありませんので、一度はお試しください。 

公式HP http://www.yardleylondon.co.uk/ 

 

ラグジュアリーラインなのに開けたらヒビだらけ。インド化が進む?

 

  • ペアーズ・ジェントルケア(日本未発売)


現在登録商標のある継続ブランドとしては世界最古という驚異的な歴史を持ち、1789年の発売以来一度も廃番にならず、現在もイギリスで最も消費されている世界初の透明石鹸、ペアーズ・ソープは、イギリス人の衛生と品格を保ち続けて220余年、単に浴用石鹸という存在を超越し、もはや血となり肉とすらなっています。安い店では1個40ペンス(約60円/テスコ)、当然香水石鹸ではありませんが、ローズマリー、タイム、ロジン、秘伝の「ペアーズ香料」をブレンドしたSMNのサンダロにも通じる辛口なハーバル・ウッディノートが、フローラルやシトラスノートにはない、消毒作用すら感じる爽快感をもたらし、これがなかなか癖になり、ひとつ終わるとまたひとつ、使い続けたくなる所以でしょう。かつては日本でもバラエティショップで普通に買えましたが、数年前に日本撤退。発売当時はどの既存品よりも肌に優しいのが評判だった、グリセリン配合の透明石鹸ですが現行品は「使うと猛烈に垢が出る」(40代男性・日本)の通り、非常に汚れ落ちがよく、香りも強力なので、どこまでジェントルケア対応か不明です。
ペアーズ社は1920年、現ユニリーバ社に買収され同社の1ブランドとなりましたが、2003年より生産拠点をインドのヒンダスタン・ユニリーバ(ムンバイ工場)に移し、2009年に大々的な処方変更を行ったところ、この石鹸で親子代々生きてきた長年のユーザーから想像を絶するブーイングが起こり、不買運動まで発生したため再処方を余儀なくされ、2010年版はよりオリジナルに近い仕様に戻ったそうですが、確かに現行品は私が学生時代(昭和)洗顔用に使用していたものより「強力」な気がします。2世紀に渡るレトロな広告も楽しいペアーズ石鹸ですが、最も有名なキャラクターで、1920年代に登場したシャボン玉を見つめる少年、通称「バブルス」は、最近イギリスで「私の祖父はバブルスじゃ」「いやいや、バブルスはわしのおじいちゃんじゃ」と言い張る人が続出、未だ決着が着かないそうです。


公式HP http://pearsinternational.com/

 

習慣性すらありそうな「ペアーズ香料」癖になります

 

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