La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Lavandula (2002)

立ち上がり:これは好印象 ラベンダ-の香りがナチュラルで気分がすっきりします。CARONがデスメタルならこれはカンタベリー系だ。ムスク系の香りも微かにします
 
昼:少し粉っぽいニュアンスが出てきました。甘い感じが出てきましたが嫌な感じでは無い。今の季節、気温は高いけど湿度はそれほどでも無い時期に合う感じです。ロバートワイアットをゲストに入れた80年代英アコーステイック系になってきたか
 
15時位:大分微かな香りになってきました。石鹸ぽい香りになっています。
 
夕方:微かな甘い香りが残る、丁度良い塩梅です。JANEの「It's a fine day」思い出す(日本でも何故かCFに使われた曲)
 
ポラロイドに映ったのは:80年代の英インディペンデントレーベルCHERRY REDの所属アーティスト達、音は悪くないが地味。佇まいも見た目も。でも滋味あり。


Tanu's Tip :

これまでの日常とは明らかに違う毎日を送ってきたこの数ヶ月。毎日満員電車に押し込められ、仕事帰りに同僚と一杯やってから家に帰ってテレビ見ながらまた飲んで、ゴロッと寝たらもう朝で、今日は直行で一件取引先に寄ってから、午後は会議でその後残業、帰る頃には酔っ払いでギュウギュウの下り電車で、家に帰ってビール飲んで、ゴロッと寝たらもう朝でー

こんなに寝付きが良かった俺なのに、在宅勤務になったら眠りが浅い。明らかに通勤で消費していたエネルギーが放出できていないからだ、と起き抜けにウォーキングをしても、やっぱり目が覚める、2時、3時、4時…

そういう方が沢山いるのは容易に想像がつきます。6月に入ってからも出勤日数は増えるとはいえ、現在、週1の出勤日以外は自宅でタヌワークの私もご多分に漏れず、家にいてリラックスしている時間が増えているはずなのに、眠りの質がかなり落ちています。丑満時に目が覚め て、頭も働かないから活字を読むよりいいだろうと、iPadのKindleアプリで漫画を読み始めたら、寝落ちどころか今度は目が冴えて夜が明ける。今回のジェントルマンコーナーをラベンダー特集にしたのも、ラベンダー精油が持つ様々な効能の一つに「導眠効果」があり、起きている時間にもラベンダーの香りに寛ぎを感じて欲しい…、それは単なる後付けで、やっぱりタヌコレクションをかき集めたに過ぎませんが、それでも一時期、店主自ら世界中の生産地へ足を運び、その年収穫された最高品質の精油を買い付けている製品も多い精油会社、Air of Fragranceから、いつ買っても品質がブレないよう、各種ラベンダーをブレンドし調整している、ラベンダー精油におけるグリニッジ標準時ともいえる「ラベンダー40/42」を入手、枕元に数的垂らしたムエットを置いて寝たら、朝まで爆睡した事もあり、ラベンダーには確実に睡眠を整える力があることを実感しました。ただし人間の嗅覚は、効能が明らかな精油でも、毎日同じ香りを嗅ぎ続けるとあっという間に効かなくなるので、このラベンダー40/42はいよいよ睡眠サイクルがまずくなってきた時用の頓服として乱用しないようにしています(慣れによる効能低下には、同じく眠りの質を整えるカモミールなどと交互に使うと良いそうなので、 近日中にAOFさんに相談して、もう数種爆睡対応の精油を紹介してもらうつもりです)。そういうAOF代表の山口さんも未完の超長編「ガラスの仮面」に手を出してしまい、同じ穴のムジナと漏れ聞こえますが…。 

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ラヴァンデュラ EDP 100ml 国内未発売、英国標準販売価格£110

1870年創業、床屋出身の王室御用達ブランド、ペンハリガン。LPTではディープディスカウントかつ法外な国内販売価格のギャップで時々話題にのぼるブランドですが、床屋といえばラベンダー。ペンハリガンも創業当時から既にEsprit de Lavande (1870)というラベンダーのソリフロールがあり、その後の代表作であるハマンブーケ(1872)もラベンダーをキーノートにした、ああいい風呂入った系の作品です。床屋に殺菌作用も強いラベンダーは欠かせません。今回ご紹介するラヴァンデュラも、イギリスの公式サイトでは「(勿論)天然ラベンダーオイル使用」と胸を張っており、確かにプールアンノム・ローが、爽やかながらどこか化合物の轟音を孕んでいるのに対し、こちらは深呼吸したくなるような自然体。オードパルファム濃度でコクがあり、力強いけど、風に乗って漂う香りは胸いっぱい吸い込んでも、心地良さこそあれ、息苦しさは皆無。ただし不思議なことに、ジェントルマンが実装すると、なんともいえず「おっさん参るの〜」な、重厚なアロマティックフジェールの表情が増し、頼れる男の胸板を醸し出し、単なるラベンダーのソリフロールやラベンダー水の延長ではないことがわかります。おじさん臭くならずにラベンダー香だけを満喫したい場合は、ムエットや布などに含ませると良いでしょう。消え入り方も至って自然。このナチュラル感が、ベッドルーム・ミュージック(宅録)とも呼ばれる、シンプルで飾り気のない、心のつづれ織のような曲たちがポラロイドに映った所以かもしれません。実装中、ジェントルマンは何度も「これはいい」と曰うておりましたので、レビュー終了後私物に昇格する可能性が高いです。安眠用の寝香水にもおすすめです。かつてジッキーをゲランのカウンターでナイトキャップに勧められた、的な事を書いた気がしますが、ジッキーよりラベンダーましましなので、ナイトキャップ用ならラヴァンデュラ に軍配が上がります。


Jane - Its A Fine Day - (Official Video, 1983)
 

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ペンハリガンはあつまれどうぶつの森「ポートレイト」シリーズばかり話題になるが、老舗はやはりヘリテイジシリーズも押さえて欲しい。何より価格も手頃だし

ラヴァンデュラは国内未発売ですが、他のペンハリガン品同様、海外のディスカウンターで100ml9,000円程度で容易に見つかります。イギリスでも公式オンラインサイト(日本発送非対応)で同じく100mlが定価£110(≒14,500円)の現行商品ですが、ちょっと気になるのが、最近公式サイトを見たら£69(≒9,000円)に大幅値下げされており、草原の風ならぬ、廃番の風が吹きつつあるのか、公式にしてディープディスカウントという現実に、一抹の不安を覚えます。

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①ベン・ワット&ロバート・ワイアット ②フェルト ③ジェーン。初期チェリーレッドの薄口代表作

 2020.8.10 追記

7月に上記リンクからペンハリガン公式サイト(英)を見たら、既に削除されており、カスタマーサポートに確認すると「今夏廃番になりました」との回答でした。不安が激当たりしたわけですが、床屋出身の老舗ブランドが、ラベンダー香潰しちゃうのか!と残念以前に虚無感に包まれました。まあ、ラバンデュラも創業時からのクラシックというわけではなく、突如2002年に登場したネオクラシックだったわけですが、単なる偏見ですがイギリスのグルーミング系ブランドには、ラベンダー物はたとえ売れなくてもコンパルソリーとして持っていて欲しいな、と思います。

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