立ち上がり:これも甘い香りだなあ…なんか印象が薄くて感想がでてこない。風呂あがりの香りだ
昼:印象が変わらない。
15時位:同じ香りのまま薄くなっていく
夕方:どんどん薄くなっていく。しかし印象はつけはじめと変わらない。これはこれで今まで経験したことのない凄さだ。
ポラロイドに映ったのは:印象が薄いまま変化がない…うーむ。あれだ、学生時代から「おっさん」呼ばわりされて床屋言っても「今日は仕事お休みですか?」と言われ、中年過ぎても印象が変わらない男。あ!私か…
Tanu's Tip :
年度末で懐寒いよジェントルマン、最終日は本体価格がもともと安いアフォーダブル系作品をご紹介します。イングリッシュラベンダーで有名なロンドンの老舗化粧品メーカー、ヤードリーのメンズライン、その名も堂々「ジェントルマン」シリーズより、イギリスのWWD Japanに相当する美容健康メディア、HPCi Media主催の美容アワード・Pure Beauty Award 2018のベスト・ニュー・フレグランス賞にノミネートされたジェントルマン・アーバンをご紹介します。発売当時はEDTでしたが、2019年、既存作品と合わせてEDPへチューンナップされました。定価£19.99ですが、公式サイトで既に£15.99と2割引、Bootsなど主要薬局チェーンでの実売価格よりも公式価格が安いのは驚きです。ここまでアフォーダブルなものに調香師が誰とか、そういう話題は野暮ですし、情報もありません。
ショートリスト(ノミネート作品)を見ると、LPT5周年記念特集「英国地方都市薬局特集」でご紹介した「場外香水」が勢ぞろい。現代の一般的なイギリス人にとって、香水専門店はイギリスでもだいぶ減ってしまい、また英国を代表するデパート、ハロッズやフォートナム&メイソンは「聞いた事がある」程度の雲の上の存在で、香水は薬局(≒Chemist、日本のドラッグストアに近い)か、安売り化粧品チェーン店、せいぜいMarks&Spencerなどの庶民派デパートで買うのが普通で、薬局では余程の大型店でない限りテスターはなく、ブランド品はレジカウンターの後ろ「場内」に陳列&店員さんに頼んで棚から取ってもらい、アフォーダブル系はトイレタリー品として「場外」扱いで、カゴに入れてシャンプーや頭痛薬と一緒にレジで買うのですが、創業1770年(公称)、250年以上の歴史あるブランド、ヤードリーも、王室ご用達ながら場外扱いです。このイギリスの美容アワードでは、やたらとヤードリーが選出されているのを見ると、企業力が強いのか、美容メディアの公正な眼でチョイスしたというよりは、選考委員会の理事を務めている企業の力関係の縮図みたいなものではないか?日本の香水賞だって、毎年似たり寄ったりのブランドが受賞しているので、どうしてだろうと思ったら、主催している団体の関連企業ものばかりで、近年のレコード大賞と同じ状態です。
ただまあ、多少は売れ行きも考慮してノミネートしてくるんだと思うので、一縷の望みを抱いて、これもちょっと前についで買いしてみたのですが、これも前回のスイスアーミー・ロックと同じく、雑誌で話題になっているけど、安いから1本買ってみるか、で使い切れそうな「無難」「印象が薄い」「個性的でない」と「最大公約数の掌握」は時に同義、と250年の歴史が教える男性の香りで、かろうじてヤードリー自慢のラベンダーを存在確認できるものの、他は漠然と定番のハーバルアロマティックフジェールです。トップにレモンとハーブがあって、真ん中にラベンダーとウッディがあって、ベースにムスクがある、以上です。老若関係なく、男性ならどなたでも大丈夫ですし、何よりジェントルマンも主張する、薄いまま変化なく持続する「命かげろうトーン」は、自分を含め誰の邪魔もしません。身だしなみとして香りをつけたいけれど、安っぽいのは嫌だし、でも日用品である香水(ここが日本との大きな違い)にあまりお金はかけられない英国紳士の応援団として、渡英時もヤードリー品はよく見かけましたし、ヤードリーの看板商品であるイングリッシュラベンダー自体「偉大なる瞬間芸」の異名通り、EDT濃度ながら、つけて2分としないうちに香りが全部終わるものの、その堪らない2分が味わいたくて毎日手が伸びるうちに150年も売れたわけですから、つけた瞬間の爽快感に風呂上がりの香りがあるならば、それはヤードリー的には成功例なので、どんどん弱くなってもお構いなしです。むしろタバコと同じくらい香水が嫌いな人も多い日本において、働く男性の(もちろん女性も)、安くてバランスのいい薄い香りの日常使いがもっと進めば尚良しです。オフィスでは、汗臭いのも、タバコ臭いのも、食べ物の匂いがするのも、柔軟剤の匂いがするのも何となく許容されているのに、香水の匂いだけが指摘対象になるのは不公平ですし、一方で、香りが幽体離脱している人も多いので、最終的に一番大事なのはつけ方と経験値なのかな、とも思います。この辺はご自身の一番心地よい塩梅と、周囲の評価と、香りに対する受け止め方が三位一体となって融和する話なので、答えは一つではなく、永遠のテーマではありますが、まずはご自身のベストバランスを見極めるのが一番です。
最後に、学生時代床屋でリーマンと勘違いされたジェントルマンに負けじと、私も小学生の時「奥さん」呼ばわりされ、かつ肥満児だったので40年前と現体重がほぼ同じ。しわも白髪も増えましたが、よく言えば年齢不詳、悪く言えば子供おばさんです。せめて、中身だけはいい大人でありたいと思っていますが、そうでもないのは読者の皆さんが良く知っていると思います。失礼しました。