La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

無断転載禁止

Knize Ten (1925)

A Gentleman takes Polaroids chapter eighteen : Leather Gentleman
 
立ち上がり:あまーいフローラルな感じ。悪くないけど自分には合わないな。
昼:甘さは背景に消えていき段々男臭い感じになってきた
15時位:かなりレザー臭が強くなってきました。そして結構この時間でも強い。
夕方:レザー臭+残香の甘い感じがブレンドされて残っています。かなり持ちよし。
ポラロイドに映ったのは:ハイティーンから20代前半までは前髪長くして目隠してたのに中年になる頃には刈り上げ&上半身裸で汗まみれ!に変貌した兄ちゃん。ドイツには多そうだ!(偏見)
 
 f:id:Tanu_LPT:20180224182146j:image
総統閣下シリーズ
 
Tanu's Tip :
 
今月のジェントルマンコーナーは先月のアンバーに続き、特定の香調(ノート)にフォーカスした香りを3点選んでお届けいたします。立春なんて名ばかりでまだまだ寒い、いやホントに寒い2月は、高温多湿のここ日本では、この時期に試して相性を品定めするのがおすすめなレザーノートの香りを先手必勝でご紹介。まずは「近代香水、レザー系の頂点」の誉れ高い、クニーシェ・テンの登場です。先日のCabaret LPT vol.6 "The Time Travellers 2"でも好評でした。
 
f:id:Tanu_LPT:20180224182222j:image 
クニーシェ・テン トイレットウォーター 50ml
 
クニーシェ・テンは1858年、ヨーゼフ・クニーシェがウィーンに創業して、ハプスブルグ家の人々も常連だったオーストリアのオーダーメイド紳士服店、クニーシェが1925年に出した初のメンズフレグランスで、近代レザーフレグランスの頂点と言われていますが、オーストリアのテーラーのオリジナル香水というところが超然としていて、欧米の詳しい香水ファンからも「名前は聞いたことがあるが、試したことはない」という声の多い、近代香水の流れとは別の次元に居る感のある逸品です。調香は、ヴァンサン・ルベール(1889-1972)で、最も有名なのはコティのレーマン(1927)だと思いますが、幻の名作として名を遺すイリス・グリ(1946)、グリーン・ウォーター(1947、ともにジャック・ファット)も手掛けています。ちなみにジャック・ファットのアーカイヴは、もともとジャック・ファットのライセンスを所有し、イザベイなどの復刻系ブランドに注力しているパヌージュ社がファット・エッセンシャルズとしてシリーズ復刻、なかでも2016年にセシル・ザロキアンがリメイクした最新版グリーン・ウォーターは、オリエンタルの女王と異名を我が物にしながらもシトラス系が結構お得意なセシルさんの名を上げたヒット作で、発売から2年以上経った現在もなおヨーロッパのファッション誌を大いに賑わせています。夢の粉物香水、イリス・グリも近日復刻予定との事で、ノスタルジアの民としては楽しみが続きます。
 
話がそれましたが、クニーシェは家族経営のテーラーで、現在は7代目との事。テーラーの公式サイトがカッコ良くて「Wir sind nicht Italienisch, Wir sind nicht Englisch, Wir sind EINFACH KNIZE!」つまり「我々はイタリア人ではない。我々はイギリス人でもない。我々はクニーシェだ」とバーン!!とでてきて、スーツといえばイタリアンかブリティッシュと相場が決まっている中、まっこうゲルマン魂を披歴しています。でもボトルにはしっかり英語で「ザ・ジェントルマンズ・フレグランス」と英語表記で世界を目指していおり、しかもオードトワレと書けばいいのにトイレットウォーターと世界を意識しすぎです。価格もいたって質実剛健で、写真のボトルは50mlですが、40ユーロほどで購入できましたし、長年の愛用者が多いのか、125ml、225mlと大容量サイズやデオドラント、アフターシェーブなどのグルーミング製品も多種あります。
 
香調としては、オレンジフラワーやカーネーション、ローズなど戦前のクラシックらしいフローラルがどわっと豊かな表情をもって立ち上がり、遠くのほうに黒水仙(1911)を彷彿とします。そのためか全体的な空気がふんわりとフローラルで、そこにじわじわウッディレザーが効いて、花束を抱えた後のいい香りになった皮手袋で顔を覆ってスーハーしている感じでレザーが主張するのですが、このフローラルな部分がいかんせん、あんまり深くない。そしてレザーと材木系サンダルウッドが後に行くほど増幅してきます。いい香り、でも立ってる場所がお手洗いの前、いいぞトイレットウォーター!みたいなバランスになっており、高級感という点では物足りませんが、アロマティックフジェール系にありがちなおっさん臭い甘ったるさはないので、レザーノートがお好きな方男性の普段使いにおすすめです。日本では中々入手が容易ではないものの、対応しているオンラインストアとしてはLuckyscentやFirst in Fragrance、またはドイツの家庭用品通販サイト、Manufactumで販売しているのは見かけますので、法外な運賃にも目をつぶるという方は、一度サイトを覗いて見てはいかがでしょう。何分本体価格が安いので、一番いいのは西ヨーロッパに行くご予定のある方に現地購入をお願いする事でしょう。ポラロイドに映った男性が具体的に誰を指すのかわかりませんが、心当たりがあったらLPTまでお知らせください。ジェントルマンはたぶんこの辺(下)を言っているのだと思います。

 

Alles ist Gut

Alles ist Gut

 

 

キャバレーではこの曲(Der Mussolini, DAF)をバックにクニーシェを熱く語りました 
上のジャケ写では上半身裸ですが、ステージではポロシャツ&チノパンと至って普通な
ガビ・デルガド(Vo.)の欽ちゃん走り的アクションに注目

contact to LPT