2015年以降に発売された、再生ルガリオンの本領発揮ともいえる、新作を中心としたラインナップ6種を、前後編にてご紹介します。ルガリオンに依頼した画像提供が掲載期日までに得られなかったため、ボトル写真はLPT annex・マンプク宮殿(2017年8月29日掲載分)と連動し、すべてホヤ付バナーとさせていただきました。予めご承知おきくださいます様、よろしくお願い申し上げます。
処方:ポール・ヴァシェ
香調:アロマティックウッディフローラル
立ち上がり:ベチバー系なんでしょうが最初に香ってくるのはモス系が強い。ベチバーは背後に薄っすらと隠れてる感じ
昼:モス系の香りは背景に下がりベチバーの匂いが前面へ。かなり甘い香り
15時位:甘さがかなり残ってます。全体の香りはかなり薄らいでますがまあ季節がこの時期だけに汗で流れてますね
夕方:肌に鼻近づけてようやく感じる位まで弱ってます。夏向けではないかな・・・・というか男向けではないような・・・
ポラロイドに映ったのは:1週間髭剃り当てなくても殆どヒゲ生えない体毛も頭髪も薄い男
Tanu's Tip :
1968年、ポール・ヴァシェ在世時のオリジナル版オードベチバーを、一応オリジナルの処方に基づいて復刻したものがこちらのベチバーです。当時としては100%メンズ向けとして発売されたようですが、今回ご紹介する6種の新作のうち、最も女性らしさを感じたのがベチバーでした。これは女性の私でもすんなりつけられましたし、むしろベチバー感はかなり控えめ。立ち上がりにもわ~んとモッシーな雲がわいたかと思いきや、その雲が徐々にはれるとアロマティックシトラスの表情に、その後一転してどんどんフローラル感が増幅し、やがて「あれ、今日つけたの、何のフローラル系だったっけ?」と、とはいえどそれが何の花だかはわからず…という落としどころに、名前通りドライでシャープなベチバーを期待すると、ちょっと違ってくるでしょう。でも今回の6種ではこちらが一番おすすめで、融通の利くユニセックス・フレグランスとして使い勝手が良いと思います。しかしポラロイドに映ったのは全身薄毛のジオッサン。全身濃いめのジェントルマンとは極北ですが、ジェントルマン本人にもベチバーが一番似合っていたような気がします。
処方:ヴァニーナ・ムラッチョーレ
香調:ウッディレザー
立ち上がり:これまた独特な香りレザーと石鹸が混じったような・・・・微妙にケミカルな感じもする。
昼:甘い感じの香りになってきた。このブランドは甘く変わっていく傾向が強いような
15時位:かなり残香強い。汗にもマケズ・・・脂気にもマケズ・・・・でも香りと汗臭さ混じり微妙・・・
夕方:むー 早く家帰って汗流したい・・・夏につけるのはヘビィですわこれ。
ポラロイドに映ったのは:オーストラリアから夏に日本に観光旅行に来て、服装があわず呆然とする太鼓腹のオヤジ
Tanu's Tip :
レザー・ノートに絶妙な腕を振るい、スキャンダル(ランバン、1931)やディオールリング(ディオール、1963)で既に独自のレザーノートを確立していたポール・ヴァシェ。オーナー調香師の偉業に敬意を表し、一から作り上げたのがこのキュイールです。調香はイタリア出身、フランス在住の独立系若手女性調香師、ヴァニーナ・ムラッチョーネ(32)が担当していますが、この方はルガリオンの他にはフランスの高級香水店、ジョヴォワのオリジナルフレグランスや、同じくフランスのニッチ系ブランド、ジェロボームの全作品を手掛けている新人で、1)パリを拠点とした2)独立系の3)若手女性調香師、というと、年齢的にも同世代のセシル・ザロキアンとかぶりますが、キャリアと知名度でいったら20代前半、学生時代既にアムアージュでプロデビューしていたセシルさんに軍配が上がり、私も今回この特集を書くなかで初めて知りました。香りとしては、ジェントルマンも指摘しているように、夏にレビューするには少々厳しいヘビーなレザーの香りで、そのため「真冬のオーストラリアから真夏のニッポンに来てしまい、酷暑に右往左往する出っ腹のジオッサン」がポラロイドに映っているわけですが、それなら真冬なら心地よくつけられるかというと、まずこのレザーがちょっとケミカルで、バーチタールのような乾いた感じのレザーではないのと、ユリやアンバー、ムスク体温でムッとくる系の甘さ&時々シトラスが、脳内で真冬のオーストラリアに飛んだとしても果たしていい感じになるかどうかが未知数です。この手の香りに湿度は厳禁。ルガリオンはソリフロールやフローラルものがソフトで軽やかなのに対し、初出9種のラインナップとバランスを取って、第2弾はがっつりいったのかもしれません。
処方:ヴァニーナ・ムラッチョーネ
香調:フルーティレザーウード
立ち上がり:むむむ・・・・今まで経験したことのない香り・・・杏みたいな感じか?重い甘さがのしかかる
昼:謎めいた感じパワーアップ。嫌というわけではないが・・・私には合わないような
15時位:意外と強い、香りと汗のハーモニーが絶妙・・・腐りかけの果物?ドリアン?
夕方:ようやく消えてきた むう 辛かった・・・・
ポラロイドに映ったのは:昼食って縁側にほったらかした夏の果物を夕暮れ時に発見!
Tanu's Tip :
初出ラインナップは復刻が中心だったので、当然ホットな中東市場も視野に入れ、急いでウードものを出してきました。「審美眼を持つ人」というスノッブな名を持つエスシート、調香はキュイールと同じヴァニーナ・ムラッチョーネです。ただ、これがムエットで嗅ぐとレザーノートに支えられ、フルーティフローラルが重なり合うサフランウードをきちんと感じるのですが、ジェントルマンが肌に乗せると突如暴走、じゅくじゅくに熟れて皮が一部半透明になっているような、足許に落としでもしたらたちまち原型をとどめなくなるような完熟120%、糖度5割増しの果実感がウッディレザーと共にもりもりと溢れます。オフィシャルな香調を見ても果実系はマンダリンオレンジ位しかフィーチャーされていないんですが「まぜるな危険」という奴でしょうか。これはむしろ女性の秋冬向け、ハードになりすぎないフルーティウードフレグランスとしておすすめです。日本の男性には相当経験値を要求する香りだと思いますが、それがイコール審美眼を持ち合わせていない、というオチにはなりませんのでご安心を。世の中には「Less is more」という美学も歴然と存在しています。
ウー度 ★★☆☆☆(ムエット上)☆☆☆☆☆(肌)