La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Risque (2012)

相次ぐ香水店の新規開店や各地でのセミナーに奔走する一方で、大手ファッションフレグランス並に新作を連発しているロジャ先生ですが、このリスクも、アンスポークンに続くレディスのシプレ系第2弾として昨夏に発売され、来月には第3のシプレ、フェティッシュが発売を控えていますので、香水バカ一代の破竹道にちょっと振り切られ気味ではあります。その上公式ウェブサイトも、ど紫のバラが花開き、ポリゴンで描かれた香水瓶のクリスタルキャップが合体回転するなど、サイトを見る度だるまさんが転んだ的にだんだん(どんどん)悪趣味になっていくのが気になります。最近ではEDPならストロベリーネットでも購入できるようになり、価格はさておき身近な存在になってきました。

リスクのプレセールイベントでは、ロンドンのマダム・ジョジョ(会員制高級クラブ)で招待客に披露、その際人気バーレスクダンサーを呼び、めくるめくリスキーな世界を演出していましたが、香りとしては非常にクラシックで、何といっても第一印象が「ケルクフルール」。ああ、ここでも元ネタの引出しが開いちゃってごめんなさい、なんですが、余り強くないベルガモットのトップから、主軸となる花香料はカモミール、ヒヤシンス、ジャスミン、ローズ、イランイラン、ベースにはシダーウッド、オークモス、パチュリ、ベチバー、シベット、ラブダナムと、香調を見るとフローラルシプレの王道ですが、シプレ感は余りなく、石膏の如く全き不透明な粘性粉質のフローラルで(ロジャ氏のシプレ系はフローラルが中心)「2012年おばあちゃんの鏡台宇宙の旅」って感じでしょうか。ケルクフルールが最新の技術と素材で100年後生まれ変わったら(ケルクフルールは1912年生)こうなるのかな、あれ、ケルクフルールって今も売ってるよね、あれ…ロジャダヴの店でも売ってるよね、店員さんに両方奨められたら違いが判るかな…

私は単品の香料に詳しくないので,何をどうしたらこんなに不透明で洗っても落ちないような脂で練った様な白粉またはぐりぐりクレヨン風の匂いになるのか、渾然一体となってしまうと、全体の印象でしかものが言えないのが歯がゆいですが、やっぱり食事時などちょっと気になってしまう粉脂くささが、日常使いには明らかにリスクとなります(笑)まあ、確かに閉じ込められた場所でギラギラライトを浴びながら踊るストリッパーの股間から匂いたつなら物凄く似合いそうな香りですが、試香前にみたプレイベントの刷り込みが強すぎて、最初にそんなプレイベントの様子なんか見るんじゃなかったな、というのが、この香りに対する敗北宣言のいい訳です。とはいえ、ケルクフルールがディタ・フォン・ティーズの愛用品だったというし、こういう窒息系パウダリーフローラルはバーレスクダンサーの十八番なのかもしれません。次のフェティッシュはもうちょっとリフト感のあるシプレだといいなあ。

…ただ、レザーシプレらしいから、よもや元ネタはバンディ、なんてのは嫌ですよ。

ダイヤモンド、ボカーン!!
first post : 17 Jan. 2013
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