La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Metal (1979) / A Gentleman takes Polaroids chapter two:A gentleman's best favourite ever

立ち上がり:久しぶりに付ける。名前通りメタリックな冷たい香り、夏に良い
 
着衣後:なし
 
1時間経過:なし
 
5時間経過:やや香りは弱まるが今までつけた中で一番香りが残る、香り方も朝とほぼ変わらず(ニュアンスが変化なし)
 
10時間経過:香りはかなり弱まるがまだ残ってる。最初から最後まで香りにニュアンスはほぼ変化しない。
 
ポラロイドに映ったのは:暗い路地を歩く10年前の自分
 

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オードメタル(メタルのオードトワレ版・ヴィンテージ)20ml 非売品サイズ

Tanu's tip
「久しぶりにつける」懐かしさで、着衣後も1時間経過後も頭が真っ白になってしまったジェントルマン。よほど嬉しかったのか、ポラロイドにはパコラバンヌのメタルに出会う前の自分が写ってしまいました。
香りについてはジェンダーフリーな彼はレディスフレグランスであるメタルが大好きで(音楽の話ではありません)、店主タヌが持っていたボトルを最後のワンプッシュまで使い切った程のお気にいりでしたが、2000年代にカランドル(1969)と同じシンプルなスクエアボトルで出直した後、同時に廃番となるも、カランドルだけ再登場し、メタルはそのまま幻の香りとなってしまいました。そのため、使い切ってから幾度も「メタルがないかなあ」と懐かしんでいたので、AGTPのためにヴィンテージ品を探してきました。発売当時はパルファムをメタル、オードトワレをオードメタルと表記しており、一旦廃番後にオードメタル1濃度になってからメタルという名に集約しました(カランドルも同じくパルファムはカランドル、オードトワレはオードカランドル)。
調香は、前年アナイス・アナイスを他3名の調香師と共作して名をあげたロベール・ゴノン。シランス(1978)も手掛けた、グリーンフローラルシプレの名手です。メタルは、その後フォロワーが出てこない、すぐにメタルだとわかる独特のドライな甘さがあり、そこをジェントルマンは「メタリックな冷たい香り」と表現していますが、ケミカルかというとそうでもない、体感温度が下がる冷涼な香りかというと、これも違う。ヒヤシンスとオークモスをアルデヒドがリフティングして、甘さはサンダルウッドや樹脂系といったメンズにも多用されるベースノートに集中して不思議と「メタル」という名が脳内にインプリントされるのか、どうしても金属質な何かを髣髴するのは、香りの可視化がたった1単語のネーミングだけで成功した、まれな例だと思います。メタルは、同時期に出現したラ・ニュイやマジー・ノアール、オリジナル版アルマーニなど、シックで大人っぽいアニマリック・シプレと、シャネル19番やシランスなどの知的で静かなグリーンフローラルシプレの汽水域にいる香りで、こういう香りはこのイメージの女性と共に絶滅寸前です。原料の都合で廃番になってしまったのか、ヨーロッパの免税店では今でもしっかりカランドルが、目立たない場所でも2-3列並んでいるのを見ると、1列くらいメタルだといいのになあ、と私も思います。
 
 
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