La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Kouros (1981)

立ち上がり: 粉っぽい香り!なんかハーブティーみたいな感じに微妙にバニラ?
 
昼:スパイシーな感じに変わってきましたがかなり薄い
 
15時位: むう 消えた・・・・
 
夕方: 消滅
 
ポラロイドに映ったのは:子供の頃駄菓子屋で食べたヨーグルトなる名称の怪しい駄菓子
 
Tanu's Tip:
 
ギリシャ史上、紀元前8世紀から紀元前480年までをアルカイック期と呼びますが、アルカイック期を代表する芸術様式といえば、彫刻と壺絵。そのうち若い男性の裸体像がクーロスです。直立で正面を向き、一歩足を出しているのが特徴であるクーロスは勿論アルカイック・スマイル、全身マッパでつくものついてんど!と2500年も前からずっと立っています。写真は 気まま旅行記 より引用、匿名の旅行記ですが、リタイアした社会人男性のツアー旅行記らしく、画像豊富で見ごたえあります。

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その若き男性の肉体礼賛を意味する名を冠し、1981年に発売されたサンローランのクーロスは、当時のヴィジュアルも当然若い男性のセミヌード、まだ人前で脱げる世代の男性をターゲットにしています。YSLのメンズとしては、プールオム(1971)に続く2作目で、その間実に10年もあいている一方で、70年代のサンローランは御存じのとおりリヴゴーシュ(1971)やオピウム(1978)など、社会現象にもなった歴史的名香を2発も世に出し、パフューマリーとしても大成功を収めていた時代を経て「あれ、メンズ弱いな」と思ったのでしょう、満を持して調香も当時駆け出しの若きピエール・ブルドンに依頼し、ブルドンもメジャーデビューをクーロスで飾り、その後クールウォーター(1988)、フェミニテドゥボワ(1992)と香水史に自身の名を刻む作品を生み出すマスター・パフューマ―として成長したのは御存じのとおりです。キャップと本体が一体化し、手に取りすぐにスプレィできるボトルデザインも斬新で、クーロスも、時代に呼応しボディクーロス(2000)、クーロスシルバー(2015)と進化を遂げ、毎年サマーバージョンも出すなど、サンローランのメンズを代表する顔の1つとして君臨しています。ちなみに、同年発売された歴史的名香としてアンテウスがありますが、こちらもギリシャ神話から名を冠しています。

 
70年代の濃厚なアロマティックフジェールの面立ちと、当時としては斬新なスポーツフレグランスのフレッシュな表情を併せ持ち、超ド派手な立ち上がりで始まるクーロスですが、最大の弱点は「熱に弱い」。ジェントルマンがつけた瞬間、横で嗅いでぶふぇっ!となる割には持続が弱く、あれよあれよという間に肌に馴染み、ジェントルマンの肌から消失。今回試香したボトルは現行販売中の新品で、ムエットでは非常に根性よく、出だしのシャープなハーバルアロマティックと、次世代を予感するフレッシュネス(当時)を維持していますが、体温でどんどん拡散します。という事は、つけてから消えるまでは相当うるさいわけで、試香のためスプレィしたジェントルマンと少し先のスーパー(徒歩17分程度)まで行く間の主張の強さと言ったらすごかったです。でも、そういえば買い物終わる頃にはあれ、何つけてたっけ?ジェントルマンも、あれ、どんな香りだったっけ?とさっぱりポラロイドには映りませんでした。それでも肌とムエットを併用して、何とか映し取ったのが、駄菓子屋で売っていた謎のヨーグルト。モロッコヨーグル 60付(70入)
お若い方には判らないかもしれませんが、正確には「 モロッコヨーグル という、ショートニングと砂糖を練り合わせ、ヨーグルト香料をつけた乳製品ゼロのお菓子で、昭和36年(1961)の発売開始から50余年経った今でも現役のロングセラーです。何故あれを子供の頃ヨーグルトだと思って喜んで食べていたのか、今食べて果たしてヨーグルトだと騙されるのか、そもそも何故モロッコヨーグルがクーロスなのか、何もかもが謎ですが、両者の共通点は「どちらも率先して人に薦めたくない」そこだと思います。長らくシリーズ化している人気者にいきなりな最後通達ですが、1)立ち上がりがキツく 2)拡散しすぎて 3)長持ちしない、というダメ香水3本柱のような弱点を持つクーロスよりも良い作品は世の中に沢山ありますし、お菓子もわざわざ探してまでモロッコヨーグルを食べなくても良いと思います。
 
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クーロス 現行品 EDT 50ml ドジョウ多数
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