La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Sortilege (1936/2014)

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ル・ガリオン ヴィンテージボトル 左後ろのソルティレージュは珍しいイギリス工場での委託生産品、1960年代

ル・ガリオンといればソルティレージュ、ソルティレージュといえばル・ガリオンと、双方の名を深く刻み合う看板香水であり、戦前フローラル・アルデヒド香水の代表作としても名の上がるソルティレージュは、その知名度から戦後のスノッブ(1952)と共に二大看板と位置づけられますが、復活の切り札は何と言ってもソルティレージュでしょう。

時代は折しもジャズ全盛期、ル・ガリオン創業から6年後の1936年パリで発売と同時に大ヒット。さらに戦後はアメリカ上陸を果たし、マンハッタンで営業し、各界の富裕層や著名人が階級を超えて夜な夜な集うナイトクラブ、ストーク・ジャズ・クラブ(1929ー1965閉店)で店主シャーマン・ビリングズリー(1896ー1966)がクラブへ来る顧客へ配った豪勢な来場記念品のひとつとして利用されたのがきっかけで「ストーク・ジャズ・クラブのかおり」として、ソルティレージュの世界的大成功は当時飛ぶ鳥を落とす勢いで繁盛していたナイトクラブの存在も後押しとなりました。
 
調香は、ル・ガリオンの作品だけでなく、ミス・ディオールやディオールリングなど初期ディオールのエポックメイキング的作品も手掛けるなど、戦前戦後の40年間に数多くの名香を生み出した偉大な調香師、ポール・ヴァシェ(1902ー1975)で、オリジナル版は、きっと当時の香水ファンなら誰でも好きだったであろう古典的なフローラルアルデヒドです。80種以上の天然香料を巧みに使い、ベースに樹脂系香料やバニラ、オポポナックスといったどっしりとした甘さにパウダリックなムスクやこくのあるサンダルウッドが、生々しいジャスミンやイランイラン、フルーティなローズにふんわりとしたアイリスやバイオレットを、アルデヒドが巧妙にリフトアップして(昔の原料は香り立ちが重いので、アルデヒドを加える事で浮いてる感=フレッシュ感が加わる)重すぎない温かさのあるブーケを演出…という、この時代のきちんと作りこまれたフローラルアルデヒド系香水の能書きに何でも応用できそうな「間違いない」展開で、実のところどこがソルティレージュらしさなのかがよくわからない(勿論ヴィンテージの経年も手伝って)のですが、5番も好きだしジョイもいいけど高いし、特に戦後は巨大市場アメリカで、ナイトクラブに行けばタダでもらえるあれでいい、あれがいい、って事でじわじわ市場を席巻していった部分もあるのではないかと察します。クラブがそろそろ閉店の憂き目にあう1964年頃には、ソルティレージュは日本を含む世界97ヶ国で販売されていました。

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ソルティレージュ パルファム 1/8オンス

そんなル・ガリオンも1980年にアメリカの会社に買収された後、御多分に洩れずぞんざいに扱われた末、買収した会社も倒産し、諸行無常の共倒れで50年の歴史に幕を閉じます。ル・ガリオンが消滅した後、アメリカのイルマ・ショレルという、潰れたメーカーの処方を手に入れては著作権侵害ギリギリのネーミングで復刻させ「ロング・ロスト・パフューム」シリーズとして「あの幻の香りがここに!」的販売をする会社が、一時ソルティレージュもまんま「ソルティレージュ」名で復刻していました。安い原料で作っていたのか昔のファンにとっては不完全燃焼この上ないクオリティで、他にも色々蘇らせていたイルマ・ショレルはクラシック香水ファンにとっては「ここの再発だけは願い下げだ」と逆の意味で有名です。イルマ版ソルティレージュは試したことはありませんが、ル・ガリオンは30余年の時を経て2014年本格的にブランドごと復活します。リニューアル版ソルティレージュの復刻は、ノービレ1942のラインナップを数多く手がけ、ル・ガリオンでは他にオー・ノーブルなど全4種の復刻を担当したマリ^・デュシェーヌで「オリジナルの処方を真摯に再現」と堂々ホームページ上で謳ってはいますが、そこはやはり今使える香料の範囲内で作るわけですから、色々使用不可なものやこの世に存在しない香料を置き換えていった結果バランスが悪くなったのか、真摯に向き合ったがやはり軌道修正しました!!というのがありありとわかる、基本原料はオリジナル版と同じでも、時代の空気を表現しきれない部分を、オリジナルにはない、最新版ケルクフルールにも見られるどこかべたついた脂っぽい粉物っぽさでカバーし「おばあちゃんの鏡台」系アクセントに置き換えた、あまりリフト感を感じない(そもそも原料自体に重みがないので、浮いてる感少なめ)フローラルアルデヒドです。クラシックな雰囲気は十分感じ取れますし、大事に作られているのは伝わってきますが、持続が短く気づいたら消え失せているのが残念で、もうちょっと底力が欲しい所です。
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