Annick Goutal : her own creations before passed away (1981ー1999)
1990年代の半ば、バーニーズ・ニューヨークのフレグランスコーナーにひっそりと並んでいて、手に取る人にとっては「私だけの」という特別感がたまらなかった、日本においてはニッチ・フレグランスの先駈け的存在だったアニック・グタール。個人的にはパッケージやボトルの、非の打ち所のない愛くるしさが仇となり、どうも自分には縁遠い存在と思い込んでいたのですが、今から2年前、LPTの取材でオランダにおけるアニック・グタールの代理店でもある香水店、リアンヌ・ティオ・パルファムのリアンヌさんにインタビューを行ったのがきっかけで、既に日本販売終了となっていたウール・エクスキースのオードパルファムを購入させていただき、こんなにクラシックで上質な大人の香りを作っていたブランドだったのか、と衝撃を受け、アニック自身が調香した初期作品を中心に、この二年間、ひとつひとつ大事に試してきました。これから、彼女が亡くなるまでの作品を、少しずつご紹介していきたいと思います。
日本でもニッチ・フレグランスの中では絶大な人気を誇っていたアニック・グタール(AG)ですが、2011年にそれまでの親会社であり、バカラも傘下に持つルーブル・グループ(本国ではホテル経営など)が韓国最大手化粧品会社、アモーレ・パシフィック(AP)に売却、AP社が100% AG株を取得することで完全子会社化した所から、アニック・グタールはフランスの小さな香水会社ではなく「フレンチ・テイストを丸ごと拝借した韓国の工業製品」となった、と嘆く声も聞かれます。かなり嫌韓感情が荷担している声とは思いますが、その気持ちもわからないでもありません。
AP社はAGを完全子会社化した翌年、長年社長を務めたブリジット・タッティンガー氏を解雇、あうんの呼吸で支えあっていたフランス本社と欧米の代理店という人と人との繋がりを無視したデータ管理を行うようになり、アジア受けするライトでエアリーな、香水嫌いでも好まれるものにラインナップを集中すべく、欧米で20年、30年とロングセラーであった、しっかりとしたボディのある香りを廃番および販路限定にし、日本でも初期作品の大多数は取扱終了となりました。
夢のないビジネスの話はこの辺にして、生前アニック・グタール(1946-1999年8月、53歳歿)自身が調香した主要作品を整理したいと思います。

ガルデニアパッション パルファム 10ml 廃番
Eau de Lavande (1981)
Folavril (1981) ※レディス最初の調香Eau de Camille (1983)
Tubereuse (1984)
Vetiver (1985)
Eau de Bonpoint (for children)
Tubereuse (1984)
Vetiver (1985)
Eau de Bonpoint (for children)
Eau du Fier (2000)※没直後発売、夫アラン氏の為に作ったもの
【生産中:日本販売終了または取扱なし】
Eau de Charlotte (1982)
Passion (1983)Heure Exquise (1984)
Sables (1985)
Eau du Ciel (1986) ※廃番後、2015年再発
Eau du Ciel (1986) ※廃番後、2015年再発
Gardenia Passion (1989)
Grand Amour (1996)
Eau du Sud (1996)
【生産中:日本販売あり】
Eau d'Hadrien (1981)
Grand Amour (1996)
Eau du Sud (1996)
【生産中:日本販売あり】
Rose Absolue (1984)
Petite Chérie (1998)
Petite Chérie (1998)
Ce Soir Ou Jamais (1999) ※レディス生前最後の調香
Songes (2006) ※死後、生前の調香をもとに製品化
こうしてみると、アニック自身が調香に携わった作品で、現在も日本で販売されているものは5つしかないことがわかります。
次に、アニック・グタールの本当の魅力を知るきっかけとなった、ウール・エクスキースをご紹介します。
Songes (2006) ※死後、生前の調香をもとに製品化