次回ご紹介するオリジナル新作、オブジェ・セレストの元となったエトワール・ドールは、ヴォルネィ復興にあたり専属調香師となったアメリ・ブルジョワ氏も「オリジナルの処方に敬意を表して再構築した」とのべている通り、これぞクラシック香水の現代版復刻、と納得のできるパウダリー・オリエンタルで、5作品中最もお奨めの香りです。立ち上がりは完全にメンズ系のクラシックなラベンダートイレタリー香で、一息つくとゲランのベチバーを彷彿する乾いた微風のようなすべすべした粉質のスエードノートに表情を変え、そして二幕目の緞帳があくかのように何ともふくよかなバニラとオリエンタルな樹脂香が絡み合うパウダリームスクに変化します。ヴォルネィの香りは大なり小なりパウダリームスクが土台にあるのですが、これがヴォルネィ香の核であるバーズ4092なのか、と共通ベースを最も謳歌できるのがこのエトワール・ドールでしょう。最近の作品では味わえないトップからラストまで幾幕もある古典的な展開を楽しめる点も、頑張って作ったなと思います。過去のアーカイブを現代調にアレンジすると、大概は商売っけが顔を出し、復刻したいのか流行りの香りにしたいのかどっち付かずで玉砕、というものが多い(ヴォルネィの他の香りもご多分に漏れず)ですが、現代的な表情も持ち合わせながら、宣材に頻出する創業者女性や店舗の写真にきちんとイメージが結び付く、数少ない成功例と言えましょう。
エトワールドール EDP 100ml